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はじまりの地 “奈良”をめぐる旅へ
|食のルーツと伝統工芸のおすすめスポット【前編】

2026.3.7
はじまりの地 “奈良”をめぐる旅へ<br>|食のルーツと伝統工芸のおすすめスポット【前編】

「はじまりの地」と聞いて、どの土地を思い浮かべるだろうか。旅行にぜひおすすめしたいのは、数多くの「はじまり」にあふれる奈良。日本の歴史や文化が好きな人に勧めたい旅をまとめた。今回は、特に「はじまり」が多い奈良の食文化。身近なあの食材も、実は奈良が発祥かも?

奈良発祥の食文化とは?

奈良がさまざまなものの発祥の地であることは先述した。その代表が、食文化だ。清酒、大和茶、大和野菜、饅頭、かき氷などの発祥の地になっている。

たとえば清酒は、奈良市にある「正暦寺」が発祥とされる。室町時代の酒造記『御酒之日記』には、当時の正暦寺での清酒の製造方法の記載が。この寺で開発された製法こそが、日本の清酒の原型とされているのだ。正暦寺で造られていた清酒を現代に復活させるプロジェクトによる商品は左で紹介。

また、大和茶は弘法大師空海の高弟・堅恵が806年に奈良県宇陀市内に茶種子をまいたことが栽培のはじまりとの伝承が。その後、1738年に山城国(現・京都府)宇治田原の篤農家・永谷宗円が煎茶の製造法を発明し、江戸で販売したことで流通していく。

01|清酒

《正暦寺》
酒造技術の基礎を確立した“清酒”発祥の地

現在大規模な酒造りはしていないものの、毎年1月に酒母の仕込みを行っている。「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」に所属する7つの蔵元が酒母を持ち帰り、それぞれ酒を醸造している

992(正暦3)年、創建された寺。鎮守や天部の仏へ献上するため、荘園から上がる米を用いて酒が自家製造され、酒母の原型である「菩提酛造り」などの酒造技術が確立された。その高い技術は南都諸白なんともろはくに受け継がれ、現代の清酒製法の祖とされている。

正暦寺の技法で醸造した
清酒を愉しむなら……
《今西酒造》

1660年創業。大神神社にほど近い、酒造り発祥の地ともいわれる三輪にある。「清く、正しい、酒造り」を哲学に掲げ、「みむろ杉」を醸す。2025年には、全量菩提酛仕込みの新蔵「三輪伝承蔵」を開業。

今西酒造
住所|奈良県桜井市三輪510
Tel|0744-42-6022
営業時間|10:00~17:00
定休日|日曜
https://imanishisyuzou.com

《油長酒造》

1719年創業。挑戦的な酒造り「風の森」で知られる。2024年に始動した「葛城山麓醸造所/S風の森」も話題。「水端」では古典技法を探究しながら、日々酒造りを学び続ける。

油長酒造
住所|奈良県御所市1160
Tel|0745-62-2047
営業時間|9:00~17:00
定休日|土・日曜
https://yucho-sake.jp

02|大和茶

《佛隆寺》
香り高い“大和茶”の栽培を開始

本殿の背後には堅恵の墓とされる五輪塔が立つ石室が。平安前期の宝形造で、国の重要文化財。訪れるとお茶の歴史を想像しやすくなるかもしれない
写真提供=宇陀市観光課

茶樹の栽培でのお茶のはじまりは、806年に弘法大師が唐から持ち帰った茶の種子を、高弟である堅恵大徳に与え、現在の宇陀市榛原地区赤埴にまいたことだと伝えられる。ここからお茶が広まったのだ。その後の850年、堅恵大徳がその地に創建したといわれる寺。

佛隆寺
住所|奈良県宇陀市榛原赤埴1684
Tel|0745-82-2714
営業時間|9:00~16:30

大和の茶を愉しむなら……

《ティーファーム井ノ倉》

甘い新芽の香りと上品でまろやかな旨みのある、濃厚な味わいが特徴の「かぶせ煎茶 玉響」。柔らかい一芯二葉の部分を摘採しているため、極上の旨みを堪能できる。また、水出しや氷出しでも濃厚な旨みを楽しめる。

ティーファーム井ノ倉(SHOP粋翠)
住所|奈良県奈良市月ヶ瀬桃香野4877-2
Tel|0743-92-0733
営業時間|13:00~17:00
定休日|月~土曜
www.inokura.co.jp

《嘉兵衛本舗》

吉野の山里で育てた茶葉を、山の広場一面に敷き詰める天日干しで仕上げる「天日干し番茶」。手作業による手間をかけた製法が、まろやかさややさしい味わいにつながる。渋みやカフェインが少ないので子どもやお年寄りも安心して飲める。

嘉兵衛本舗
住所|奈良県吉野郡大淀町中増1561
Tel|0746-32-2147
営業時間|9:00~17:00
定休日|土・日曜、祝日
https://kaheehonpo.com

03|大和野菜
奈良の風土・文化を映す

戦前から県内での生産が確認され、地域の歴史や文化を受け継いだ栽培方法によって独特の味・香り・形態・来歴をもつ「大和の伝統野菜」20品目と、独自の栽培や収穫方法、美味しさが際立った「大和のこだわり野菜」5種類の総称。現在も奈良の各地で栽培されている。

大和野菜を生かした料理を愉しむなら……
清澄の里 粟

清澄の里で育まれた大和野菜の料理を味わえるレストラン。「大和の伝統野菜」や穀物を中心に、素材の味を丁寧に引き出した滋味深いコース料理が、奈良盆地を見晴らせる絶景とともに楽しめる。奈良市内に姉妹店「粟 ならまち店」もある。

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清澄の里 粟
住所|奈良県奈良市高樋町861
Tel|0742-50-1055(完全予約制)
営業時間|11:45~16:00(L.O.15:30)
定休日|月~木曜
www.kiyosumi.jp/kiyosuminosato

 


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text= Yoshino Kokubo
2025年12月号「京都/冬こそ訪れたいあの旅先へ」

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