《わが心の歌舞伎座》
東銀座を130年以上見守ってきた、伝統芸能の殿堂の歴史をひも解く
歌舞伎の舞台を映画館で楽しめる「シネマ歌舞伎」。毎月、バラエティに富んだラインナップで全国34の映画館で上映。2023年度は歌舞伎座の休場に迫ったドキュメンタリー『わが心の歌舞伎座』からスタートする。4月7日(金)~13日(木)の上映の前に歌舞伎座の歴史を振り返ろう。
5代目となる現在の歌舞伎座が新開場してから、今年で10周年を迎える。これを機に歌舞伎座の歩みをたどってみよう。
第1期歌舞伎座
第1期歌舞伎座は1889(明治22)年11月に開場した。外観は洋風、内部は日本風の3階建て檜造り、客席定員1824人、間口十三間(23.63m)の舞台を持つ大劇場で、今も歌舞伎座の座紋である「鳳凰丸」は、この時から用いられている。「鳳凰丸」の原形となったのは法隆寺の宝物「鳳凰円文螺鈿唐櫃(ほうおうえんもんらでんからひつ)」に使われた紋様である。1911(明治44)年7月に施設の老朽化のため改造される。
第2期歌舞伎座
第2期歌舞伎座は1911(明治44)年11月改築開場。第一期の建物の土台、骨組を残し、純日本式の宮殿風に大改築が施された。正面車寄せは唐破風(からはふ)造りで、銅葺きの釣庇(つりひさし)に左右の平家も破風造り、また、内部の正面大玄関は格の鏡天井、観客席は高欄付きの総檜(ひのき)造りで、二重折上げの金張り格天井。1921(大正10)年10月、漏電により焼失。
第3期歌舞伎座
1925(大正14)年1月新築開場した第3期歌舞伎座は奈良朝の典雅壮麗に桃山時代の豪宕妍爛の様式を伴わせた意匠で、鉄筋コンクリートを使用した耐震耐火の日本式大建築であった。正面大屋根の高さは100尺(約30m)に達し、全椅子席に冷暖房完備、舞台間口は15間で、内容外形ともに日本一を誇る大劇場だったが、1945(昭和20)年5月に空襲を受け、外郭を残して焼失した。
第4期歌舞伎座
1951(昭和26)年1月、第4期歌舞伎座開場。戦禍を受けた第3期の建物の基礎や側壁の一部を利用して改修。外観は戦前の歌舞伎座を踏襲し、奈良及び桃山の優雅な趣はほぼ再現され、同時に近代的な設備が取り入れられた。客席数は、桟敷、一幕見を含めて約2000席、舞台間口15間(約27.6m)、廻り舞台の直径60尺(約18m)、大小合わせて4ヵ所のセリがあった。2010(平成22)年4月、建替えの為に閉場。
第五期歌舞伎座
2013(平成25)年4月に新開場した現在の第五期歌舞伎座は、第4期歌舞伎座の瓦屋根、唐破風、欄干等の特徴的な意匠を踏襲、従来通りの和風意匠の趣を残し、歴史と景観の継承を図っている。背景には、日本建築の捻子連子格子(ねりこれんじこうし)をモチーフとしたデザインのオフィスビル、歌舞伎座タワーが建ち、銀座の街並みと調和し伝統と創造が融合した、新しい時代に相応しい劇場となっている。
歌舞伎座の歴史はもちろん、その建物だけではない。この度、歌舞伎座新開場10周年にちなんで、第四期歌舞伎座の閉場までに追ったドキュメンタリー映画『わが心の歌舞伎座』が再上映される。歌舞伎座の中で生まれ、継承されてきた名優たちの芸と心を映画で堪能しよう。
ドキュメンタリー『わが心の歌舞伎座』
2009年、歌舞伎座の建替えによる休場が決まり、歌舞伎座さよなら公演が始まった。刻一刻と休場へと向かう中、数々の名舞台が生まれ続けた。その舞台に出演した名優たちが歌舞伎座への想いを語る。役への一念、受け継がれてきた名跡と芸、初舞台や思い出の舞台、先達の言葉、さらなる目標へと向かう志…。
稽古風景や楽屋の日常、美術・音曲・衣裳・かつら・床山・小道具など舞台の制作現場を捉え、さらには歌舞伎座の歴史を彩る物故俳優の思い出も交えながら歌舞伎の真髄に迫る。
16か月に及ぶさよなら公演も千穐楽を迎え、その翌日に一般非公開で修祓式が行われ、遂に2010年4月30日の閉場式が始まる。「都風流」「京鹿子娘道成寺」が演じられた後、総勢300名の俳優と、溢れんばかりの客席の全員が想いを込めた手締式で歌舞伎座は幕を閉じる。そして俳優たちは、また次の舞台へと向かう…。
14年前の映像とあって、今は亡き名優の姿も。だが、彼らの思いは、彼ら自身が受け継いできたように、歌舞伎座の舞台を通して次の世代にしっかりと刻み込まれていることを感じさせる作品だ。
読了ライン
『わが心の歌舞伎座』
上映期間|2023年4月7日(金)~13日(木)
上映館|全国の映画館にて ※東劇のみ4月20日(木)まで上映(詳しくはこちら)
出演(50音順)|十二世市川團十郎、尾上菊五郎、片岡仁左衛門、坂田藤十郎、中村勘三郎、中村吉右衛門、七世中村芝翫、中村富十郎、中村梅玉、坂東玉三郎、松本白鸚ほか
監督|十河壯吉 ナレーター|倍賞千恵子
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