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「常陸野ネストビール」茨城の日本酒蔵、木内酒造がオール地元産のビールで世界に挑戦|第4回

2020.8.15
「常陸野ネストビール」茨城の日本酒蔵、木内酒造がオール地元産のビールで世界に挑戦|第4回

日本のブルワーの中でも独自の世界観を確立し、海外でも幅広く高い評価を受けている「常陸野ネストビール」。《世界が注目、常陸野ネストビール》では、全4回にわたってその人気の秘密を解き明かしていきます。第4回はすべて地元産の原料を使用したビールづくりを目指す“メイド・イン・ジャパン”への想いを伺いました。

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常陸野でしかつくれない
オール地元産を目指す

大麦も育てています
酒蔵から少し離れたところにある畑で金子ゴールデンを育てている。11月頃に植えはじめて6月に収穫を迎える

日本のビールは、海外から輸入した原料を使ってつくったものが大半である。特に主原料の大麦は、寒冷地での栽培が難しく、収量が安定しない問題を抱えているからだ。ホップもしかり。病気に弱く、栽培はとても難しい。

しかし、常陸野ネストビールでは地元産を使用したいと自社畑を所有し、約10年前から大麦(小麦)を栽培し、続けて昨今はホップづくりにも挑戦している。麦はもともと休耕地だった畑を開墾して利用。絶滅品種だった金子ゴールデンの栽培に成功した。

麦の収穫後は蕎麦を植える二毛作を行うことで、着実に収量を上げている。ホップは「まだ実験段階」というが、すでにナゲットやカスケードなどの作付けに成功し、今後、量産を目指している。

自家畑でホップ栽培にも挑戦中
中央の一番育っているホップがナゲット品種。ほかにもカスケードやノースダンなど約6数種類を実験的に栽培している

だが、それを使ったビールづくりも実は難しく、麦を麦芽にしたり、痛みやすい採れたてのホップを扱うのは技術がいるため容易ではない。品質が安定した海外の原料を購入したほうが、リスクは低いはずである。

しかし、「世界に出て勝負するには“メイド・イン・ジャパン”じゃないと意味がない」という強い想いがある。すべて地元産の原料で醸した、常陸野ネストビールを世界に発信する。その挑戦はまだはじまったばかりだ。

新たなレシピに挑戦
マイ・ビールがつくれます!

飲むだけではなくビールをもっと知りたい。そんなあなたにおすすめなのが、好みのスタイルや原料を自由に組み合せ、世界でひとつのオリジナルビールをつくることができる手づくりビール工房(完全予約制)。茨城県の鯖をエスカベッシュにした「常陸さばサンドランチ」は利用者しか味わえない逸品で、ビールのお供にも最高だ。

①麦芽を選ぶ
ホワイトエールやペールエール、スタウトまで、好みのタイプに合った麦芽をまずはチョイス

②ホップを選ぶ
ビールに苦みや香り、風味をつけるホップは約10種類の中からタイプに合わせて組み合わせる。

③副原料を選ぶ
アクセントになるコリアンダーやオレンジピールなどのほか、好みの副原料を持ち込むのも可。

④ラベルもお好みで
自社で用意しているラベルだけではなく、自分で撮影した写真やイラストなどもラベルにできる。

東京でもビールづくりができます

常陸野ブルーイング・ラボ
オリジナルのビールをつくれる体験型パブが神田に誕生。工場直送の約10種類の生ビールとビールに合うおつまみが豊富。

住所|東京都千代田区神田須田町1-25-4マーチエキュート神田万世橋N1区画
Tel|03-3254-3434
営業時間|11:00〜23:00(L.O.22:30)、日曜、祝日〜21:00(L.O.20:30)
定休日|なし
http://hitachino.cc/brewing-lab/

茨城でも飲める場所あります

true brew
常陸野ネストはもちろんのこと、木内酒造の日本酒やワイン、梅酒、焼酎なども味わえる。名物の特製バーガーはぜひ!

住所|茨城県水戸市宮町1-7-31水戸駅ビル エクセルみなみ4F
Tel|029-306-7575
営業時間|11:00〜22:00(L.O.21:30)
定休日|なし

蔵+蕎麦 な嘉屋
自家栽培の蕎麦を、水を使わずに酒だけで打った十割蕎麦が名物。地元の野菜を具に使った蕎麦や肴を酒とともに味わいたい。

住所|茨城県那珂市鴻巣1257
Tel|029-298-0105
営業時間|11:30〜14:30、17:30〜20:00(L.O.19:30)、月〜木曜11:30〜14:30
定休日|なし
http://nakaya.cc/shop/kurasoba.html

ブルワリー・データ

日本酒蔵の風情を生かした本社
木内酒造の創業は1823年。常陸野ネストのほか、創業よりつくり続けている日本酒「菊盛」をはじめ、焼酎やワインの製造も行う酒蔵

木内酒造(常陸野ネストビール)
住所|茨城県那珂市鴻巣1257
Tel|029-298-0105
https://kodawari.cc/

創業年|1823年
従業員数|50人
タンク数|25本(6500ℓ)、4本(1万2000ℓ)
ビールラインナップ数|定番15、限定ビールあり
海外への出荷量|年間約1100ℓ

年表
1823年頃 木内儀兵衛により「木内酒造」創業。
1996年 「常陸野ネストビール」の製造事業に参入。
1997年 「インターナショナルビアサミット」ダークエール部門金賞(アンバーエール)
1998年 「インターナショナルビアサミット」、「ジャパンビアカップ」ルーツ部門でそれぞれ金賞(ホワイトエール)、世界最大のコンテスト「ワールド・ビア・カップ」ベルギー風褐色ビール部門銀賞(エキストラ・ハイ)、小麦ビール部門銅賞(バイツェン)
1999年 海外での受賞を機に輸出販売開始。
2000年 「ワールド・ビア・カップ」ハーブ&スパイスビール部門金賞(ホワイトエール)
2004年 再び「ワールド・ビア・カップ」ハーブ&スパイスビール部門金賞(ホワイトエール)
2005年 「な嘉屋」開業飲食事業への参入。
2007年 「インターナショナルビアコンペティション」ベルジャンホワイト部門金賞(ホワイトエール)。ビールの量産体制確立のため、額田醸造所新設。
2010年 地域貢献事業「里美の古民家」開業。
2011年 地域貢献事業「おいしいさとやま学校」開業。
2012年 地域貢献事業「Yasato de トレタ」開業。「インターナショナルビアコンペティション」金賞(エスプレッソ・スタウト、ニッポニア)
2014年 常陸野ネストビール韓国工場開業。神田に「常陸野ブルーイング・ラボ」開業。「アジアビアカップ」フレーバービール部門金賞(だいだいエール)
2015年 常陸野ネストビール香港工場開業。
2016年 HITACHINOレストランサンフランシスコ開業予定。
※受賞歴は抜粋で掲載

《世界が注目、常陸野ネストビール》
1|世界を魅了する5つの秘密
2|個性豊かな定番ビール
3|世界中どこで飲んでも美味しいビールを
4|オール地元産のビールで世界に挑戦

text : Kiyoko Yamauchi photo : Atsushi Yamahira
2016年別冊 「美味しいクラフトビールの本」


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