「パラダイス・ビア・ファクトリー」自然栽培で生まれたクラフトビールに世界も感嘆!
美味しさを追求した結果、麦の自然栽培からビールの醸造まで、すべてを手掛けることにした唐澤さん。彼が立ち上げた「パラダイスビアファクトリー」の、世界でも珍しい挑戦に迫った全2回の後編では、唐澤さんの次なる夢に迫った。
唐澤さんが自然栽培をはじめたときからの夢のひとつが「百薬の長」をつくること。2000年前の中国の歴史書『漢書』に、酒は「百薬の長」と記された。唐澤さんは言う。「お酒を飲むって罪悪感ありますよね。けれど、『漢書』が書かれた時代には農薬や肥料はそれほど使われていなかったはず。当時の環境に近い自然栽培の畑で育てた素材で造ったなら、現代の百薬の長ができるんじゃないかと思ったんです」。
唐澤さんはそんな風に考える中で千葉県神崎町の酒蔵、寺田本家に出会う。そこでは無農薬米だけを使い、水、米、麹で酵母を起こす昔ながら生酛造りで日本酒を醸していた。唐澤さんは自らの自然栽培天日干し米での日本酒造りを当主・寺田さんに依頼。出来上がったのが無ろ過生原酒「酒宴楽園パラダイ酒」で、パラダイス・ビアのホワイトエール「5DAUGHTERS」、「弥栄楽園」はパラダイ酒由来の天然酵母で醸したもの。
はじめ、ビール造りも寺田さんにお願いしたが、「自分で造ったらいい」と逆提案される。それから、4年間のビール修業の日々がはじまった。
醸造免許を無事に取得し、自然栽培の麦で醸造をはじめてわずか2年。世界五大ビール審査会のひとつ「インターナショナル・ビアカップ」で2018年に見事銀賞を受賞した。それがパラダイス・ビアのシグネチャー、セゾン「弥栄楽園」だ。
原料は自然栽培ビール麦100%、仕込水には近くの神社の御神水を用いる。硬度95という値は市内でも飛び抜けて高く、エールビールの醸造に最適だそうだ。ホップは気候的に最も栽培に適した、北米・西海岸バンクーバーの農家と共同で栽培したオーガニック。ハーブには自然栽培の山椒を使って風味をプラスした。まろやかな味わいのビールは食事によく合う。
「何かを取るために、ほかの何かを我慢したくない」と唐澤さん。美味しくて、環境にもよく、ハッピーに! すべてを詰め込んだ「パラダイス」は鹿嶋にあった。
住所:茨城県鹿嶋市宮中1-5-1
Tel:0299-77-8745
営業時間:ランチ11:30〜14:00、
カフェ14:00〜16:00、
ディナー18:00〜21:00
定休日:月・火・水曜(祝日の場合ランチタイムのみ営業、翌日休。その他、農作業のため臨時休業あり)
https://paradisebeer.jp
文=森 聖加 写真=山平敦史
2019年7月号 特集「うまいビールはどこにある?」
《世界が注目、常陸野ネストビール》
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