FOOD

農家が造った、奇跡のドメーヌビール。
世界が驚く『パラダイス・ビア・ファクトリー』の挑戦

2019.8.8
<b>農家が造った、奇跡のドメーヌビール。</b><br>世界が驚く『パラダイス・ビア・ファクトリー』の挑戦
パラダイス・ビアのシグネチャーエール「セゾン/弥栄楽園(いやさかパラダイス)」
自然栽培ビール麦100%。「いやさか」は日本古来の祝詞。醸造所のある地域では乾杯の代わりに、「いやさか!」と言って杯を掲げる。縁起のいいその名をつけた

自家製ブドウでワインをつくるドメーヌのように、自ら麦を栽培して、ビール造りを手掛けている唐澤秀さん。ただただ「美味しいものが食べたい、飲みたい!」の一心から、健やかな畑をつくるのに欠かせない麦を育て、世界中探してもほとんどない、農家が造るビールを誕生させた。その歩みを追った全2回の連載の前編。

唐澤 秀さん
「奇跡のリンゴ」で知られるリンゴ農家・木村秋則さんに出会い、自然栽培に開眼。昼間は農作業、木〜土曜の夜はレストランでも働く。現在、畑では約70種類の野菜を栽培している

「ポートランドでも麦を自ら栽培して、ビールを造る奴なんていないぜ!」。米・オレゴン州ポートランドはブリュワリー数が70を超える世界一のビール都市。彼の地のブルワーでさえ驚嘆するビール造りを農業集団鹿嶋パラダイスの醸造部門、「パラダイス・ビア・ファクトリー」で唐澤秀さんは手掛けている。冒頭の言葉には尊敬の念も込めてこんな言葉が続くはず。「おまえ、クレイジーだな!」。麦の栽培から醸造までを手掛けるのは、極めてまれなことなのだ。

時は5月中旬。収穫まであと1週間の頃、案内された畑には黄金色に熟した麦の穂が風に吹かれてそよぐ、美しい景色があった。麦秋という季語がぴたりとはまる季節は短い

「ビール造りは麦づくり、そんなビールを身近な存在に」と唐澤さんがクラフトビールの新たなるステージを目指して、挑戦をはじめたのは12年前。縁あって移住した茨城県鹿嶋市で自然栽培農業をはじめたときにさかのぼる。自然栽培は畑に肥料も堆肥も、農薬も除草剤も一切与えない栽培法だ。

ブルワリーは畑と醸造所が離れ、生産者と醸造家がイコールではなく、原料の麦芽は仕入れるのが一般的。麦は大型農機による大量生産が可能で、安価に生産ができる。日本では購入すると1㎏あたり150円の麦芽が、唐澤さんのところでは、加工賃だけで㎏300円。つまり、自分でつくるより買ったほうが安いのだ。

自然に任せる畑づくり
自然栽培を続けた畑は、一見無秩序で雑草だらけと思われがちだが、実はその逆。「肥料や農薬を与え過ぎてバランスの崩れた土壌にこそ必要以上の虫や菌が寄ってくるんです」と唐澤さん

「加工賃に加え、麦自体のコストも入れると原価は5倍にもなります。よく考えればほかのブルワーが手を出さない理由がわかるのだけど……」

それでも唐澤さんが麦づくりからこだわるのには、理由があった。「鹿嶋パラダイスでは手間やコストがかかろうとも常に『美味しい』を優先します。麦はビール原料の約97%を占める。しかし日本では麦のほとんどを輸入に頼り、国産ビール麦の流通はわずか7%です。

風味づけのハーブ類も自然栽培
左の白い花はコリアンダー。醸造に使用する量はわずかながら、自然栽培し、昔ながらの足踏み脱穀機で実を脱穀。右は山椒。柑橘系の山椒はビールと相性抜群だそうで、青いうちに収穫した実を使う

僕は農業法人に勤めていたときに、世界一の称号をもつ農家を訪ねて世界を旅しました。出会った生産者に共通していたのは、原料の生産から製造、販売までを一貫して行い、そこで働くどのポジションのスタッフもが、目をキラキラさせながら自らの商品を自慢していたこと。また、究極に美味しいものをつくる現場は環境にも負荷がかかっていないことに気づきました」。

唐澤さんの麦は健康な畑をつくるためのものでもある。1年目は大豆を植え、根に共生する根粒菌の数を増やして土中の菌のバランスを本来あるべき姿へと近づける。次の年に同じ畑で麦を育てることで、地中深く張った麦の根が畑を耕し、水はけがよく、ふかふかな畑へと変えるのだ。

文=森 聖加 写真=山平敦史
2019年7月号 特集「うまいビールはどこにある?」

パラダイス・ビア・ファクトリー
住所:茨城県鹿嶋市宮中1-5-1
Tel:0299-77-8745
営業時間:ランチ11:30〜14:00、
カフェ14:00〜16:00、
ディナー18:00〜21:00
定休日:月・火・水曜(祝日の場合ランチタイムのみ営業、翌日休。その他、農作業のため臨時休業あり)
https://paradisebeer.jp
《世界が驚くパラダイス・ビア・ファクトリーの挑戦》
前編|農家が造った、奇跡のドメーヌビール
後編|自然栽培でインターナショナル・ビアカップ銀賞!

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