「種子島」鉄砲とロケット、時代時代の最先端が生まれる島!
16世紀に鉄砲が伝来し、国内初の銃を製造、そして現在ではJAXAで宇宙開発に取り組むという、それぞれの時代で“最先端”の研究を行う種子島。他にも実に多くの表情を有している。バイヤーの山田遊さんとこの島が内包する魅力を探る《ロケットと鉄砲、時代の最先端をゆく種子島》の前編。
山田 遊(やまだ・ゆう)
1976年東京都生まれ。IDEE SHOPのバイヤーを経て、2007年methodを設立。フリーランスのバイヤーとして、数多くの話題スポットで“モノ”のセレクトやディレクションを手掛け、領域を越えて活動中。
鹿児島県本土の南方約40㎞に位置する種子島。年間平均気温は19・3度と暖かく、標高の最高点は282mという平らな島である。西之表市、中種子町、南種子町から構成された島の人口は、有人離島の中でも比較的多い約2万9000人。だが各市町の中心部から少し離れると、やはり特有の“島時間”が流れている。
種子島と聞くと、「JAXA種子島宇宙センター」や「鉄砲伝来」のイメージを抱く人がほとんどであろう。確かにロケット打ち上げ時には各地から観光客が押し寄せ、海上輸送できないロケットを乗せたトレーラーが通れるよう、公道の信号や標識は通常より高い場所に設定されている。
さらに鉄砲伝来の地をいまに伝える碑や像は島内に点在し、その歴史を学ぼうと思ったら「種子島開発総合センター 鉄砲館」へ足を運べばよい。夏が来ると「ロケット祭」や「鉄砲まつり」と名を冠した祭りが開催されるなど、これらは人々の暮らしと密接にかかわっている。
だが、種子島の魅力はそれだけにとどまらない。知る人ぞ知る魅力的なコンテンツが数多く存在しているのだ。旅人となった山田遊さんが種子島を訪れるのは、今回がはじめて。島内各所をめぐり、豊富な可能性に驚いたという。
「僕も皆さんと同じように、鉄砲やロケットの印象が強かったんです。だけど実際にさまざまな場所を訪問し、種子島は伸び代が抜群だなと感じましたね。
鉄砲伝来という“歴史”と、種子島宇宙センターという“最先端”の要素がある一方、インギー鶏や芋焼酎といった“昔からあるもの”や、ショウガやバナナなど“日常にあるもの”を、新たに価値化させようと懸命に取り組んでいる方々もいる。加えて、ずっと興味があった種子鋏は想像以上に素晴らしいものでした。どれも個で成立できるポテンシャルにあふれています」。
Tel:0997-23-3215
開館時間:8:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎月25日(7月・8月は除く)、年末年始
入場:一般420円、高校生270円、小中学生130円
余談だが、種子島は映画『君の名は。』を手掛けた新海誠監督の『秒速5センチメートル』の聖地にもなっており、映画のシーンを見つけて歩くファンも多い。美しい海と数々のサーフポイントに魅了され移住するサーファーも少なくなく、海の幸に恵まれ、温泉だってある。種子島はあらゆる好奇心を満たしてくれる場所なのだ。
文=大森菜央 写真=吉田素子 画像提供=JAXA
2017年7月号 特集「この夏、島へ行きたい理由。」