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路地奥に潜む京料理、串揚げとワイン、立ち飲み..
京都人がお忍びで行く、夜のご飯屋さん。

2021.10.30
<small>路地奥に潜む京料理、串揚げとワイン、立ち飲み..</small><br>京都人がお忍びで行く、夜のご飯屋さん。

京都の街を知り尽くした京都人は、どんな店に通っているのか? ガイドブックでは発見できないなじみの店をこっそり教えてもらいました。今回は、できれば秘密にしておきたい、京都の夕食におすすめのお店をご案内します。

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御所南の路地奥に潜むカウンター京料理
12.つろく

ぐじの松笠焼に焼き万願寺添え(1760円)

増田アラカルトで頼めるのがうれしいですね。純米酒、純米吟醸酒と合わせてぜひ。発泡感が爽快なにごり酒もおすすめです

路地奥に誘われるまま奥に進んでガラス扉を開けると、開放的な10席ほどのカウンターが迎えてくれる。つろくとは「調和する、釣り合いを取る」という京言葉。自然と人間、食材と技、空間と酒肴との調和を目指して店名に用いたという。「身体が喜ぶご飯をゆっくり楽しんでほしい」という店主・上田健登さんの料理はひと手間の妙味を忘れない。生の状態からすり下ろしたジャガイモを揚げ、新食感と風味を求めたポテトサラダ、揚げ湯葉真丈は玉子の素でふっくら仕上げると、細かくつぶしたゆでトウモロコシで葛あんがけに。一方でグジの松笠焼や釜炊きの鮎ごはんなどの素材勝負の一品もおすすめだ。

揚げ湯葉真丈のとうもろこしあんかけ(1430円)
鮎ごはん(2600円/2合)
右から「月の桂 にごり酒」「月の桂 純米酒」「月の桂 純米吟醸」
日本酒は常備6種、隠し酒が2〜3種ほど。中には「月の桂」の新作も顔をのぞかせる。米本来の旨みをのせた料理を引き立たせる味わいの純米酒、青リンゴやイチゴを思わせる香りと 米の旨みが楽しい純米吟醸酒のほか、にごり酒なども用意

つろく
住所|京都市中京区二条通高倉西入ル松屋町51
Tel|075-275-3926
営業時間|17:00〜22:00(L.O.)
定休日|日曜
https://japanese-izakaya-restaurant-23341.business.site/?utm_source=gmb&utm_medium=referral

風情ある空間と季節の機微に魅せられる料理
13.即今 藤本

陶器は世界でも評価の高い辻村史朗氏の作品、竹のうつわに小分けされたトロ、シマアジ、カマスの焼き霜造りが、細やかに盛りつけられる

松山「粟田山荘」の料理長を務めた後、藤本さんが開業された店。カウンターで楽しむ料理とスタッフの気遣いにいつも感動

店名の「即今」とは禅語で「すなわちいまこの瞬間が大切」の意。藤本店主いわく、いまここにある仕事に一意専心で取り組めば、その心配りは必ずやお客一人ひとりの心にも通じ、それが顕著に料理に表れるのだと。またお客との会話は、何ものにも代え難い喜びだという。中国は明の時代の古染付で御凌ぎの鮎寿司が呈されると、洗朱塗でうずらの闇蒔絵が描かれた椀ものにはマツタケとハモ、豪快なイモの葉形の大皿には繊細に盛られたお造りと、箸を運ぶたびに一品一品に胸躍らされ、移ろいゆく季節の機微をもいただけるとなれば、昼7700円、夜2万2000円のコースは、これぞ心の贅沢に違いない。

椀ものは蓋を開け、香りと絵柄を楽しむのも機微。洗朱塗の闇(黒)蒔絵にはうずらと萩が描かれている
海苔そして芳ばしい鮎と花山椒が包まれた鮎寿司。うつわは、江戸時代に渡ってきた明の古染付

即今 藤本
住所|京都市中京区二条通寺町東入ル榎木町92-12
Tel|075-708-2851
営業時間|12:00〜13:00(L.O.)、
18:00〜19:00(L.O.)
定休日|水曜
https://sokkon-fujimoto.gorp.jp/

宇治茶を織り込む京料理こそ研鑽の証し
14.平等院表参道 竹林

特別京懐石の八寸の一例。小蕪のほろふき、海老芋、鴨ロースの京番茶、子持ち鮎のほうじ茶煮、栗の渋皮煮など全8種(1万6500円〜)

松林宇治のお茶を生かした懐石料理にいつも感服します。お連れしたお客さまにも喜んでいただけるのでうれしい限りです

店主・下口英樹さんが大切にするのは、地の名産を料理に取り入れること。茶産地の特性を生かし、緑茶、番茶、ほうじ茶と種類によって香りも風味も異なる茶葉を懐石に取り入れたらという発想の下、切磋琢磨する。八寸の子持ち鮎煮にはほうじ茶を合わせ、煮物のタコは番茶で軟らかくなるまで炊くなど、労を惜しまない。また焼き物料理には、時節に即した朝日焼のうつわを合わせるなど細やかな演出も。機知に富んだ品々が楽しめる京懐石を通して宇治茶の魅力にも触れてほしい。

平等院表参道 竹林
住所|宇治市宇治蓮華21(平等院北門前)
Tel|0774-21-7039
営業時間|11:30〜14:
00(最終入店)、16:30〜19:00(最終入店)
定休日|水曜、火曜不定休
https://chikurin-kyoto.com/

米を美味しく味わうための逸品揃い
15.祇園ろはん

美しく立ち上がったウロコがカリッと香ばしいグジの焼き物(2700円)。口の中で広がる香りに、杯を重ねてしまいそう

小川「割烹料理を気軽にいただけます。新古交えたうつわ使いも美しく、仲のよい友人とゆっくり食事を楽しみたいお店です」

祇園界隈には珍しく定食メニューも並ぶ店だったが、今春からアラカルトへとスタイル替え。実家が米屋を営むオーナーの想いを受け、オーダーごとに釜で炊き上げるほど、ご飯へのこだわりは強い。腕を振るうのは、料亭「菊乃井」で10年修業を重ねた大村料理長。小川さんもお気に入りだというお造り盛り合わせ(3000円)、グジの焼き物など、米の味わいを楽しめる日本酒とともにいただきたい。

しめ鯖、大葉、たくあんを、トーストした食パンで挟んだ「名物 鯖サンド」(1700円)。絶妙なハーモニーをぜひ

祇園ろはん
住所|京都市東山区大和大路通四条上ル廿一軒町232 1F
Tel|075-533-7665
営業時間|17:
00〜22:30
定休日|日曜

路地奥に秘めた一本、ひと皿への情熱
16.串揚げとワイン おりじん

この日は鶏の手羽・豚ロース・海老を盛り合わせに。このまま食べても、ウスターやカレー塩で味を変えるのもおすすめ

渡部店主の食や酒に対する旺盛な探求心は訪れるたびに楽しみを与えてくれます。料理に合わせるうつわも楽しみのひとつです

八坂神社南側、見逃しそうな路地奥にあるカウンター8席の店は、フレンチやイタリアンを経た店主・田井順也さんが、幼馴染の自宅を改装してオープン。メニューはコース6000円〜のみで、からりと揚げた串揚げと、マリネやカルパッチョなど一人ひとりの好みと箸の進みを見極めつつ供される。赤と白各3種を用意するワインは揚げ物に負けない骨格をもつものをセレクト。〆のひと口ハヤシライスまで、ゆったり杯を傾けながら過ごして。

まだ残暑の残る日はすっきりとした白を。ワインはフランスやイタリアなどの産地を、バンクーバーのクラフトビールなども揃える

串揚げとワイン おりじん
住所|京都市東山区下河原通八坂鳥居前下ル上弁天町435-2
Tel|075-551-5577
営業時間|15:00〜21:00(L.O.)※完全予約制
定休日|水曜、不定休

生地が命!クラシックなナポリピッツァ専門店
17.Pizzeria da Ciro

230gの水牛モッツァレラチーズを使用したマルゲリータ(2055円)。店近くにテイクアウト専門店もオープン

SHOWKO美味しい本格ピッツァが、手軽に食べられます。特にはちみつを添えたクアトロフォル マッジもおすすめです

店主の中野剣司さんがナポリに惚れ込み、現地で2年近く修業後、銀閣寺近くに店をオープン。メニューは25種のピッツァのみ。「クラシカルなナポリピッツァは生地の重要度が100%。よく『モチモチ』といわれますが、僕が見てきたピッツァは『でかい! 薄い! 軟らかい!』ですね(笑)」と話す現地直送のレシピで仕込む生地は、日本屈指のピッツァ窯職人の薪窯500℃で55秒焼く。もちろんすべてのメニューはテイクアウトもOKだ。

Pizzeria da Ciro
住所|京都市左京区浄土寺西田町75
Tel|075-744-1228
営業時間|11:00〜15:00、17:00〜21:00
定休日|月曜、第4火曜

のんびり昼から楽しめる、”シェア“立ち飲み
18.京都 柳小路TAKA

上からささみワサビ、ねぎま、砂ずり。裏メニューのゴマ油風味が利いたレバー(塩)もぜひ!

村山正直教えたくないですが、京都イチ美味しい焼き鳥だと思います。マスターのTAKAさんがすてきな方で通い続けています

ミラノの名店で活躍した店主・TAKAさんが、生まれ故郷の京都で立ち上げたのは、時間も空間も料理も楽しくシェアできる立ち飲み! レバーをはじめ、驚くサイズの焼き鳥(1本250円〜)も、シェアできることを念頭に置いたとか。万願寺唐がらしを生でいただく「もろみ万願寺」(450円)、「牛肉のたたき」(1380円)など素材を生かしたメニューも多彩。精米歩合40〜100%を飲み比べる日本酒テイスティング(1200円)も試したい。

酒はすべて滋賀の岡村本家の「金亀」。度数や製造方法もほぼ同等で精米歩合のみ異なる

京都 柳小路TAKA
住所|京都市中京区中之町577 柳小路 はちべえ長屋
Tel|07
5-708-5791
営業時間|13:00〜23:00
定休日|火曜
https://taka-kyoto-japan.net/

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text: Kazuhiro Motohashi, Satoshi Takenaka, Keiko Segawa, Maya Suzuki photo: Seiichi Suzuki, Takahiro Takami, Satoshi Takenaka, Taiga Tamura, Kosaku Yamashita
coordinate: Tiki Script
Discover Japan 2021年10月号「秘密の京都?日本の新定番?」


 

《京都人が通うなじみの店​ 25》
1|KYOTO GOURMET MORNING
2|KYOTO GOURMET LUNCH
3|KYOTO GOURMET DINNER
4|KYOTO GOURMET SOUVENIR

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