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日本民藝館「棟方志功と東北の民藝」
民藝の宝庫で生まれた棟方志功の祈り。

2021.10.7
<small>日本民藝館「棟方志功と東北の民藝」</small><br>民藝の宝庫で生まれた棟方志功の祈り。
板画「雪しんしんの柵」棟方志功 1958年 41.0×32.0㎝

暮らしの中の美や柳宗悦の世界観に触れられる東京・日本民藝館。2021年10月1日(金)から11月23日(火・祝)にかけて、企画展「棟方志功と東北の民藝」が行われる。東北出身の版画家・棟方志功が東北の地への願いを込めた作品が並ぶ本展をご紹介。

海鼠釉片口 秋田県楢岡 1920年代 24.5×31.0cm

東京都駒場の住宅街に建つ堂々たる佇まいの日本家屋。民芸運動の創始者である柳宗悦が仲間とともに1936年に創設し、現在はプロダクトデザイナー・深澤直人氏が館長を務める日本民藝館

今回行われる「棟方志功と東北の民藝」は、柳宗悦が30~40代頃に東北地方で集めた民芸品と、東北出身の棟方志功が故郷を想い作り上げた作品を同時に鑑賞することで、未だ災禍が癒えない東北の地を想うきっかけとなる企画展だ。

東北の手仕事文化と
自然風土の美から生まれた版画


蓑(伊達げら)青森県津軽地方 胡桃・科皮・紙縒 1930年代 134.0×42.0cm ※写真は部分図

厳しくも豊かな自然環境をもつ東北の地。ここは昔から変わらぬ民芸の宝庫であり、日本の手仕事を考える上では実に大切な場所だ。柳宗悦は1920年代後半から1940年代の初めにかけて精力的に東北各地を巡り、民芸品の調査と蒐集を実施。そして、東北の手仕事文化の豊かさに感嘆し、日本民藝館において東北の民芸を紹介する展覧会を度々開催していった。今回展示されるのは、柳宗悦らが東北各地で蒐集した民窯の陶器や蓑・けら・背中当てなどの編組品、こぎん・菱刺し・被衣(かつぎ)などの染織品、樺細工や漆工品など。東北が豊かな文化的創造力を育む地であることを改めて学ぶことができる。


東北経鬼門譜 真黒童女 棟方志功 紙本墨摺 1937年 119.0×111.0cm

さて、青森県に生まれた棟方志功は、東北の豊かな自然風土から”美の滋養”を汲み取り、生命感にあふれる作品の数々を世に送りだした。中でも東北への想いが込められた作品といえば、「東北経鬼門譜」(1937年)が挙げられる。これは版木120枚を使って制作されたもので、6曲1双の屏風を広げると、実にその長さは10ⅿにもなる戦前期最大の版画作品だ。棟方志功はこの作品に、東北という日本の「鬼門」にあたる貧寒の故郷を想い、仏の力を借りてこの地を幸あらしめたい、との切なる願いが込められたのだ。


善知鳥版画巻 夜訪の柵 棟方志功 紙本墨摺 1938年 22.5×31.0cm

また、郷里青森への願いを込めた作品に「善知鳥版画巻」(1938年)がある。これは謡曲「善知鳥」を題材にしたもので、愛情深い善知鳥という海鳥の親子の別離の悲しさや、生活のための殺生とはいえ、その罪の報いで亡者となった猟師の苦しみを、故郷への思いと重ね合わせながら板に彫り込んでいったのだった。

棟方志功にとっては、これらの作品そのものが東北への「祈り」でもあった。東日本大震災から10年となった2021年。未だその爪痕を残す東北の地に、棟方志功が作品に託した鎮魂への祈りと再生への想いが届くよう、願いながら作品群を鑑賞してみてはいかがだろうか。

漆絵鶴丸文椀 浄法寺 江戸時代 18世紀 9.1×13.8㎝


蔵戸錠前 秋田県大館 1934年頃 41.0×37.5㎝

こぎん衣裳(部分)青森県津軽地方 19世紀後半 丈140.0㎝

「棟方志功と東北の民藝」
会期|2021年10月1日(金)~11月23日(火・祝)
開催場所|日本民藝館
住所|東京都目黒区駒場4-3-33
時間|10:00~17:00(最終入館は閉館30分前まで)
休館日|月曜(祝日の場合は翌日)
料金|一般1200円、大高生700円、中小生200円
交通|京王井の頭線駒場東大前駅西口より徒歩7分
Tel|03-3467-4527
https://www.mingeikan.or.jp/

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