民藝の聖地・光原社の「もの選びの眼」とは【第三回】
北欧の名作家具やアジアの民芸品が、日本の民藝の品と同じように並ぶ店内。違和感なくなじむ秘密は、やはり選ぶ「眼」にありました。
受け継がれる確かな眼で、つくり手の感性を見つめる
南部鉄器と漆器の製造販売からはじまり、柳宗悦ら時代の先駆者たちとの交流で感性を養い、民藝の眼で選んだ品々を扱うようになった光原社。民藝店となった当初から民窯のうつわをはじめ、松本民藝家具やホームスパンを揃えるなどラインナップの幅は広く、昭和40年代半ばになると、世界の工芸品のコレクターでもあった芹沢銈介の影響で、アジアやヨーロッパなどの海外の品も扱いはじめました。とりわけ、東京に修行に出ていた及川四郎の孫、隆二さんが妻の倭香さんと帰郷し、経営に携わるようになったことで新たな眼が加わり、さらなる進化を遂げていきました。
光原社で出会える「ロングセラーの民藝」
オリジナル 樺細工コーヒー豆入れ
樺桜の表皮を取った後、7~8年後に取れる二度皮を張ったネジ式のコーヒー豆キャニスターは25年以上のロングセラー。
ホームスパン マフラー 8枚綜絖 格子柄
優しいあて心地とデンマークで培った色彩と配色の感性が素晴らしい植田紀子さんの作品。光原社の冬支度に欠かせません
南部鉄器 鉄瓶
南部鉄瓶を代表する、ぷっくり丸みを帯びた鉄鉢型。内側には本漆を手塗りして焼き入れをする、伝統的な錆止めが施されています。
諸国焼き物
民藝運動で見出された焼き物は、古くから扱う大定番。おおらかで味わい深く、いまの暮らしにも溶け込む美しさを併せ持っています。
光原社が、単なる「民藝店」に留まらない理由
象徴的だったのは、民藝店で見かけることが少ない柳宗理のデザインシリーズのうつわやカトラリーをいち早く扱ったことです。さらに海外の品はインドやアフリカにも広がりました。近年においては、安藤雅信氏のピューター皿からフォグリネンワークのリネンアイテムまでもセレクトされ、芹沢も愛した東京の古道具店「古道具坂田」の展示会をコンスタントに続けていることも、光原社ならではです。
瞬間の判断で美しいものを見出す。四郎がもの選びで行っていたのは民藝だけにこだわらず、国やジャンルも取り払い、ただまっすぐにものを見て、つくり手の感性や人間性を確かめることでした。その核となる部分さえしっかりしていれば、選ぶ眼が増えてもブレることはないのです。
現代の暮らしにマッチする、新しい民藝
浅野奈生さんの漆器椀
浄法寺の次代を担う若きつくり手。塗りの美しさに定評があり、現代の暮らしにもマッチするモダンなかたちも魅力。
大塚誠一さんの益子焼 平皿
益子の大誠窯7代目。登り窯が持つ迫力と益子焼らしいやさしさを併せ持ちます。及川隆二さんが惚れ込み初の企画展を開催したばかり。
小田中耕一さんの型染め風呂敷
芹沢銈介の下で学び、光原社のくるみのクッキーのパッケージをデザイン。こちらは愛らしいくしモチーフが印象的。
廣田美津夫さんのクルミのバッグ
隆二氏の勧めで、本格的に編組に取り組むようになったという人気作家。表皮の風合いと表情を生かした美しい作品。
Shop data
光原社
住所:岩手県盛岡市材木町2-18
Tel:019-622-2894
営業時間:10:00~18:00
定休日:毎月15日
http://morioka-kogensha.sakura.ne.jp