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山口県の“うまい”を堪能する旅。
第3回|フルーツと野菜

2020.11.16
山口県の“うまい”を堪能する旅。<br>第3回|フルーツと野菜

山口県長門市、長門湯本の街づくりに端を発し、県全体の魅力のとりこになった編集部。全4回連載で掘り下げるテーマは、旅の醍醐味「食」。第3回は、産物に向き合うそのこだわり抜いた姿勢から、地元のみならず、幅広いファンに価値を認められている果樹園と農園を取り上げます。

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ミカン、イチゴ、ユズ…
山口県の果物

「長門ゆずきち」は、長門市・萩市・下関市を中心に流通している柑橘。スーパーなどでも手に入る、地元ではポピュラーな果物だ

日本海と瀬戸内海に面し、中央に中国山地が走る山口県は、同じ県内といえどもエリアによって気候が異なる。主に分けられるのは、日本海沿岸地域、内陸山間地域、瀬戸内海沿岸地域の3つ。日本海側から内陸部にかけては冬場に曇天が多く、雪が降ることもあるが、瀬戸内海側は1年を通じて雨量が少なく、比較的温暖な気候である。ゆえに主に栽培される果物の品目も地域ごとで違いがあり、長門市をはじめとした日本海沿岸地域では夏みかん、内陸山間地域では梨やりんご、瀬戸内海沿岸地域では温州みかんやいちごなど、少量多品目であることがひとつの特徴となっている。

また全国的に高い評価を得ている山口県のブランド柑橘にも注目したい。「清見」と「吉浦ポンカン」を交配させた「ゆめほっぺ(品種名:せとみ)」は食感に弾力があり、柑橘類の中でもトップクラスの甘さをもつ。とりわけ長門市に関連するといえば「長門ゆずきち」。「カボス」や「スダチ」の仲間であり、酸味が比較的まろやかなことから、さまざまな料理や加工品に使用され、甘めの刺し身醤油に絞り入れる地元の人も多いという。

山口県ではこだわりをもって栽培に取り組む生産者が多いため、それぞれで生み出される果物の味わいを楽しみたい。

伝統野菜も栽培!
山口県の野菜

白オクラは、関東で手に入る一般的なオクラよりもねばりが強く、また味が濃厚といわれる

長州藩の毛利氏は、荒地の開発や沿岸の低地の開拓、水路の治水工事などを進め、農業を奨励した。このため、長門にしかないユニークな特徴をもった野菜や果樹も数多い。昭和初期に田屋地区を中心に栽培されていた「田屋ナス」や、戦後、三隅地域で栽培されるようになった「白オクラ」は伝統野菜の代表格といえる。

果実のおいしさにこだわり、その真価を伝えていく

ピオーネを収穫する津田民幸さんと浩利さん。「お客さまの『おいしい』という口コミで、たくさんのご縁をいただきました」と民幸さん

「昭和初期、私の父が津田農園を開きました。長門市俵山の山林を手作業で開墾し、900坪の土地に梨を植えたのがはじまりです」

2代目の津田民幸さんはそう津田農園の歴史を振り返る。現在の総面積は約2万5000㎡。民幸さん夫妻と息子の浩利さん夫妻の4人で、梨、ぶどう、栗、ブルーベリーなどを栽培し、栗飯弁当やスパークリングワインといった加工品の製造にも力を入れている。

初代から受け継ぐ信念は「旨くないものは売らない」。安心安全な果物を提供するために除草剤は使わず、本来あるべき植物の種を取り除いた「種無しブドウ」のような品種も栽培しない。「自分たちは自信をもって“人間の食べ物”がつくれているか」と絶えず自問しているという。

土地の環境を受け入れ、課題の発見と改良を繰り返し、自然に即して栽培された津田農園の果物は、実に風味豊かだ。ぶどうは優しい余韻とコクが舌に残り、梨はキメが細かくみずみずしく、甘味と酸味のバランスが絶妙である。

「毎年食べてくれるお客さまと一緒に歩んできた感覚がありますね。あとは1968年に進学した農林水産省農業者大学校時代の仲間の存在も大きい。みんな前衛的な考えをもち、新たな試みも意欲的に取り組んでいますから、さまざまな引き出しをもらいました。果物の価値とともに、自分自身も成長していかなければなりません」

民幸さんの言葉に3代目を継いだ浩利さんが続ける。

「栽培技術の向上はもちろん大切ですが、その前提として父が重んじてきた人とのつながりをこれからも大事にしていきたい。そして僕は新しいことに挑戦したい思いが根底にあるので、日本の農業や社会の発展にも貢献したいんです」

農学博士の学位をもつ浩利さんは研究者としての一面ももち、ベリー類を中心に繁殖や栽培などの研究を行なっている。近年はフィンガーライムという柑橘類の苗木生産をスタートした。

次の世代へバトンを渡しながら、常に果実のおいしさを追求し、津田農園は歩を進めていく。

 

樹齢90年の二十世紀梨の樹。いまも現役でおいしい果実をみのらせる。二十世紀梨は袋かけを2回行うなど栽培に手間と時間がかかるため、年々生産者が減っているという
津田農園の二十世紀梨は上品な甘さで果汁も豊富、飲み込んだ後にとろけるような余韻が残る
津田農園のある長門市俵山地区は朝と夜の寒暖差が大きいため、栗の栽培に適しているという。台風などによる被害のリスクを避けるため、栗畑は北と南の2箇所にある
苗木販売を行なっているフィンガーライムの果実。キャビアのようなプチプチの果肉と爽やかな酸味が特長。果皮は緑、ピンク、茶色などさまざまで、果肉も同様に色調が異なる
津田農園で栽培した果実を贅沢に使った「ブラックベリーのスパークリングワイン」(5,500円/750ml)や「二十世紀梨のスパークリングワイン」(4,800円/750ml)。どちらも果実の風味がしっかりと感じられる

津田農園
住所|山口県長門市俵山1569(直売所|山口県長門市俵山1581-5
Tel|090-7126-4477
営業時間|9:00〜17:00(直売所)
定休日|直売所の営業は8月中旬〜9月下旬までは無休、それ以外の期間は不定休
※営業時間など最新情報は津田農園のFacebookなどで要確認。ブドウ・梨狩り、栗拾い、ブルーベリー・ブラックベリー摘みなども要問い合わせ

夫婦二人三脚でIターン就農
色とりどりの野菜で心も身体も元気に

ダンスを通じて出会ったという徳万隆良さん・絢香さん夫婦。「農家はスローライフ? いやいや根性の世界です」と隆良さんの笑顔が弾ける

「トラクターに乗って畑仕事をしながら、山里の風景を眺めるのが好きです。食べることは生きる基本。それに携わる仕事ができて幸せです」。光り輝く青空に目を細めながらこう話す“彼”の日焼けした顔にはモジャモジャの髭、白いTシャツにデニムのオーバーオール、そして長靴姿。なんとも雰囲気のある“彼”は、山口市で農業を営む徳万隆良さんだ。

妻の絢香さんとともに横浜出身で、2006年に祖父母の家のある山口市に移住。木工会社や農業法人での勤めを経て2016年に農家として独立した。さらに翌17年には農園や自宅のある敷地の一角に、週末限定で朝採れの野菜を使ったサラダや自家製のヴィーガンカレーをイートインで提供するショップを開いた。

「20代の時、格闘技とダンスを組み合わせたブラジルの伝統スポーツ“カポエイラ”を学びに、数カ月間ブラジルに住みました。この時、生きることに必死なスラム街の人々を目の当たりにし『人間らしい生活とは何か?』と考えたんです。この経験が農業という選択肢につながりました」と隆良さんは移住のきっかけを振り返る。

現在は隆良さんの実家が代々受け継いできた農地のうち約1haで野菜や米を作り、烏骨鶏を育てる。できる限り自然と人に負担をかけないようにと、農薬や化学肥料は使わない。隆良さんは「畑の表情は毎日変わります。水菜が1日で虫に食べられてズタズタになるなど失敗もたくさんあります」と苦笑しながらも、「妻と小学生の2人の娘を守り、足を運んでくれるお客様を大切にする。自分たちで選んだこの生き方に毎日ワクワクしています」と言いきる。

リピーター続出という、農園の野菜だけをふんだんに使ったカラフルなサラダは、ズラリと並んだ自家製ドレッシングが目にも楽しい。絢香さんがミニトマトと玉ねぎをじっくりと炒めて作った「ラディッシュリーフのカレー」を食べると、ピリッとした刺激を複雑な野菜の甘味がじんわりと追いかけ、すっと胃に落ちていく。隆良さんと絢香さんの優しさと元気を分けてもらった気がした。

農園には数多くの野菜の種をまき、育ってきたものを栽培するスタイル。日本では珍しい世界の野菜にもトライする
その日にとれた野菜を使ったサラダは、色彩にもこだわって盛り付ける。ずらりと並んだドレッシングもすべて自家製だ
「ランチプレート」(1580円)はサラダ、ヴィーガンカレー、ごはん、コーヒー、デザート付き
「ヴィーガンドレッシング」(1580円)、「ヴィーガンカレー(スイスチャード/ビーツ&パープルキャロット)」(※ふるさと納税の返礼品)

Yorozu Farm
住所|山口県山口市宮野上486-1
Tel|0839-81-5149
営業時間|ショップ=金、土曜11:00~15:00(土曜は~14:00)/モクテル(ノンアルコール)バー=土曜16:00~19:00、日曜13:00~17:00
https://www.yorozufarm.com

山口県は夏みかん栽培発祥の地!

日本ではじめて夏みかんが栽培されたのはおよそ300年前。西本チョウさんが長門市青梅島の海岸に流れ着いた種子を蒔き、育てたのがはじまりとされる。その原樹は1927年に「大日比ナツミカン原樹」として国の史跡および天然記念物に指定。現在は10代目にあたる西本ヒサエさんとご家族が果実を摘果することにより、原樹を守り続けている。

夏みかん原樹
住所|山口県長門市仙崎大日比
Tel|0837-26-0708(長門市観光案内所「YUKUTE」)
※個人宅のため、見学する際は観覧時間などに注意

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山口県の“うまい”を堪能する旅
1|海の幸
2|焼きとり
3|フルーツと野菜
4|語り尽くせない美食 日本酒・パン

text=Tomoko Honma、Nao Oomori photo=Ryusuke Honda


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