“木”の新たな価値の創造へ
《進化する中高層木造建築》
いま木造建築が注目を浴びている。時代の変化に伴い、これまで鉄とコンクリートでつくられていた中高層ビルにも木材が使われはじめている。確実に増えつつある「都市木造」は今後、社会に何をもたらすのか。
いまや200m級の高層建築物をすべて木材で建てることも夢ではない。そんな時代の中、都市木造が目指していく未来の姿とは。
“木でもできる”から“木だからできる”へ
2018年に発表した「Timberize 200」は、東京都千代田区にある「霞が関ビルディング」の構造を踏襲しつつ、それを最先端の木造技術で実現したもの。アイデアは、①主屋=メインフレーム②室礼=サブフレーム ③建具=スクリーンの3要素で構成。2000㎜角スケールの木材を使った高さ10mのメインフレーム20層は、社寺建築の木割から導き出された。そこに400㎜角スケールの木材を使った2〜3層のサブフレームとスクリーンを組み込む。天井高が必要な空間ならそのまま活用できるほか、メインフレームの内部に2階建ての建築物を用途に応じて建てることも可能。サブフレーム、スクリーンの構成は時代に応じて変えられる。
「木造建築物のメリットは、リサイクルが可能であること。木造で建てた高層建築物を時間が経って壊したとき、柱や梁に使った材料は細い柱や梁に製材し、住宅などにリユースできます。その後、さらにそれを粉砕し、パネルにして家具にしたり、チップにしてバイオマス燃料にもできる。ひとつの建築は30年程度しかもたなくても、木材は30年×数倍の年月にわたって活用できるのです。ただしすべての木材を長持ちさせる必要はなく、メインテナンスして長くもたせるものと適切なサイクルで消費するもの、そして消耗品もあっていいと考えています」
かつて植林した樹木が育ち、日本の森林はいま、伐採期にある。森林資源の活用を考えるのであれば、都市部における木材の消費拡大は欠かせない。いまある樹木を積極的に伐採し、都市の木造建築に活用することは「都市における貯木」という選択肢につながる。
「都市に多くの木造建築物ができれば、それ自体が巨大な貯木場になるということ。日本は豊富な森林資源をまだまだ十分に活用できていない。都市木造がその手助けになればうれしく思います」
「木でも建てられる」から「木だからこそ」の新たな価値の創造へ。大きなポテンシャルをもつ都市木造の今後に注目したい。
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未来で目指したい都市木造の姿
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text: Naruhiko Maeda
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」