TRADITION

おうち時間を豊かに過ごすモノ選び
くつろぎの時間に「彩」を添える
薩摩切子

2020.6.3 PR
おうち時間を豊かに過ごすモノ選び</br><b>くつろぎの時間に「彩」を添える</br>薩摩切子</b>
(写真:bird and insect)


家で過ごす時間が増えたいま、身の周りにあるモノで、そんな日々の暮らしを豊かにできたらうれしいですよね。たとえば、日本ならではの伝統工芸品で、家時間に彩りを添えてみませんか? Discover Japanが今回ご紹介するのは、鹿児島県の薩摩切子。100年間途絶えていた伝統を復興させた立役者であるだけでなく、イタリアの自動車メーカーFIAT(フィアット)とコラボレーションを果たした、島津興業・中根櫻龜(おうき)さんにお話をうかがいました。

―薩摩切子は、いつどのようにして誕生したのですか?

江戸時代末期、薩摩藩藩主の島津斉彬が、外国に輸出するために開発した工芸品です。ガラス工芸の本場であるヨーロッパへ輸出するにあたって、日本独自の美が追求されたようですね。透明なガラスに色ガラスをかぶせて作られた生地に模様を彫るとき、模様のきわの部分に生まれる“ぼかし”と呼ばれるグラデーションが最大の魅力です。

―江戸切子とはどのように違うのですか?

江戸切子は無色透明、または透明ガラスに薄い色ガラスを被せて彫るので、模様がシャープです。薩摩切子は色ガラスが分厚いので、グラデーションで表現できる幅が広いのが大きな特徴ですね。

―斉彬の急死や薩英戦争などによって薩摩切子は衰退してしまいました。
35年前に復興の話が持ち上がったとき、なぜ中根さんに白羽の矢が立ったのですか?

当時、私は美大を卒業して神奈川県にあるガラス工芸の専門学校に通っていました。鹿児島で薩摩切子を復興させるという話が出たとき、推進役を担っていた博物館・尚古集成館の館長さんが、私の通っていた学校に人材の相談をしたのです。その時に、びっくりするほど条件が揃っていたのが私でした。

 

中根櫻龜(おうき)さん。「櫻龜」という雅号は復元25周年を機に、現在の島津家当主から賜ったもの。江戸時代の切子職人・四本亀次郎から「亀」の字を受け継いだ

―大きなプレッシャーを感じられたのでは?

私には無理だと思ったので最初は断るつもりだったのですが、決意を固める間もなく鹿児島に行くことになって。尚古集成館で初めて見る現物を前に、館長さんから「これをきみの手で復元してほしい」と言われて途方に暮れました(笑)。でも「いつか自分の手で作れるようになりたい」という明確な目標をもらったような前向きな気持ち湧いてきました。

―どのような手順で復興されたのですか?

100年も途絶えていたので、いきなり新しいものをデザインすることはできません。まず当時のものを復元をして、「ここからどんなものが生まれたのだろう」と想像して次をつくり、そこからまた次を想像し……という繰り返し。現存するわずかな資料を通して、当時の職人さんに教わっているような感覚でしたね。10年かけて100年間の空白を埋めて、15年目に「二色被せ」という新しい技術を用いた作品を発表したのが、ターニングポイントになりました。

色ガラスと透明ガラスの境目にいかに美しいグラデーションをつくるのか、という点に細心の注意を払う

―薩摩切子を生活に取り入れる魅力は何でしょう?

人に見せることで自尊心が満たされるものより、身近に置くことで心を満たすものに人々の関心が向き始めています。薩摩切子は、まさに精神的な豊かさを感じさせてくれるものだと思います。

―薩摩切子の未来について、どのような思いがありますか?

日本を代表する輪島塗や有田焼のように、世界の方から「日本に薩摩切子あり」と言っていただくことが私の夢。そういう意味でも、FIATとのコラボレーションは貴重な経験でした。

―FIATとのコラボレーションで発表された作品も、とても素敵でした。

海外に暮らす現代人の生活になじむもの、ということでタンブラーをつくらせていただきました。とはいえ、柄などはあまり現代の雰囲気にかたより過ぎず、昔の薩摩切子の風合いを残して郷愁を誘うようなものをご提案したつもりです。私たちは薩摩切子の美しさだけではなく、文化的、歴史的な背景も発信し続けてきました。そうしたことが、同じように歴史や文化を大切にするFIATに見い出していただくきっかけになったのかな、と思うとうれしいですね。

現在は20代から50代まで28人のガラス職人が腕を磨いている。薩摩切子の最大の魅力である“ぼかし”の技術を習得するには10年ほどかかるという

直営のギャラリーショップは鹿児島市内に2店舗。自分だけの一品を求める若い世代から、ゆくゆくは我が子に遺したいというシニア世代まで、老若男女で賑わう

FIATとのコラボレーションについてはこちら

FIAT×MADE IN JAPAN PROJECT

職人を意味する「アルチザン」という言葉に代表されるように、イタリアでは古くからクラフトマンシップが尊敬されてきました。そんなイタリアで生まれた自動車メーカー、FIATがイタリア同様に「職人」が根付く日本文化と、さらに心を通わせるために立ち上げたのがFIAT×MADE IN JAPAN PROJECT。イタリア同様に「職人」が根付く日本文化と、さらに心を通わせることができそう。同プロジェクトによって、NPO法人「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」とともに日本の伝統工芸に光をあて、さまざまなオリジナルプロダクトを生み出しています。

https://www.fiat-auto.co.jp/mijp/

文:棚澤明子

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