TRADITION

ファッション視点で紐解く着物の魅力(前編)
東京国立博物館 特別展「きもの KIMONO」

2020.7.8
<b>ファッション視点で紐解く着物の魅力(前編)</b> <br>東京国立博物館 特別展「きもの KIMONO」
重要文化財 振袖 白縮緬地衝立梅樹鷹模様 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵
鷹と梅を配した模様は勇壮かつ華やか。中性的なデザインから、男色の相手をする若衆と呼ばれた少年が着用したと考えられている。美しい振袖で着飾り、男性を魅了した。模様のデザインや染織、刺繡の完成度は高い。同性愛が文化として根づいていた時代の象徴だ

世界最大の着物コレクションを誇る東京国立博物館が、6月30日から特別展「きもの KIMONO」を開催。ファッションを切り口として、鎌倉時代から現代までの着物の展示を通してファッション史を通覧する。特別展開催に先がけ、今回は東京国立博物館をはじめとして、日本が世界に誇る着物コレクションを時代ごとにご紹介。

安土桃山
陣羽織 黒鳥毛揚羽蝶模様 織田信長所用

ワイルドな印象の蝶の紋は山鳥の羽毛でできている。その衿に南蛮人のようなひだ飾りを付けた突飛な発想はいかにも信長らしい。「これが格好いい!」という思いを強烈に放ち、ロック歌手のステージ衣装のようなパワーが炸裂。目の前で信長の伝説がよみがえる。

時代|安土桃山・16世紀
材質・技法|麻、山鳥羽毛、錦
所蔵|東京国立博物館
展示|通期

重要文化財
縫箔 白練緯地四季草花四替模様

全身を4つに区切った大胆な構成は安土桃山時代の流行のひとつ。題材は四季の植物で梅模様が春、藤の花房が夏、紅葉が秋、雪持笹が冬を表す。盛り上がった刺繡糸が植物の立体感をリアルな表情で見せている。

時代|安土桃山・16世紀
材質・技法|練緯(絹製)、刺繡・摺箔
所蔵|京都国立博物館
展示|前期

江戸
振袖 白絖地若紫紅葉竹矢来模様

当時流行した『源氏物語』のモチーフ『若紫』の巻をイメージして「若」と「紫」の漢字を大胆に配した。海外で人気の漢字Tシャツに見るような、クールなグラフィック感が漂う。

時代|江戸・17〜18世紀
材質・技法|絖(絹)、刺繡
所蔵|東京国立博物館
展示|通期

重要文化財
振袖 紅紋縮緬地束熨斗模様

富裕層の間で袖丈や身丈は長いほうが優雅だという美意識が流行。裾は中綿を入れ、きれいに引きずる姿にこだわった。ダイナミックな柄は友禅染めの技術を駆使して贅を尽くす。

時代|江戸・18世紀
材質・技法|紋縮緬(絹)、友禅染・絞り・刺繡・摺箔
所蔵|京都・友禅史会
展示|前期

重要文化財
小袖 白綾地秋草模様 尾形光琳筆

裕福な商家の女性の間で着物の模様を著名な絵師に描かせることが流行した。尾形光琳は上京したとき、世話になった材木問屋の夫人のために秋野に咲く草花の模様を描いた。

時代|江戸・18世紀
材質・技法|綾(絹)、描絵
所蔵|東京国立博物館
展示|通期

振袖 縹羽二重地茶摘風景模様

男性の流行を婦人物に取り入れたデザイン。グレーの無地の裾に茶摘みをする人々の模様が描かれている。贅を尽くしながら裾を引きずって着るとほとんど見えない。その美学が粋とされた。

時代|江戸・18〜19世紀
材質・技法|羽二重(絹)、友禅染
所蔵|東京国立博物館
展示|前期

昭和
着物 菊模様銘仙

殖産興業の大量生産でできた安価な絹を使い、化学染料で染めた銘仙は、手頃な価格で庶民に親しまれ、ハイカラな柄を気軽に楽しむファスト・ファッションとして流行した。

時代|昭和・20世紀
材質・技法|ほぐし織(絹)、絣
所蔵|埼玉県立歴史と民俗の博物館
撮影|堤勝雄
展示|通期

TAROきもの 岡本太郎原案

斬新な作風が印象的な岡本太郎は、日本の伝統文化を研究しながら作風に生かしていた。着物に、絵画を身につけるような魅力を見出すと、自ら手掛ける着物の創作に生かした。

時代|1974(昭和49)年頃
材質・技法|綸子(絹)、友禅染
所蔵|東京・岡本太郎記念館
撮影|堤勝雄
展示|通期

平成
友禅訪問着 白地位相割付文「実り」 森口邦彦作

三越のショッピングバッグのデザインで知られる模様は友禅染の人間国宝・森口邦彦氏が手掛けたもの。フランスへの留学経験を生かしたグラフィック・アートを取り入れた。

時代|2013(平成25)年
材質・技法|絹、友禅染・蒔糊
所蔵|東京・株式会社三越伊勢丹
展示|前期

特別展「きもの KIMONO」では、歴史上の著名人の衣装も含め、鎌倉時代から現代まで200件以上が出展される。ぜひこの機会に足を運んで自分の目で確かめてほしい。

特別展「きもの KIMONO」
会期|6月30日(火)〜8月23日(日)
※前期展示:6月30日(火)〜7月26日(日)、後期展示:7月28日(火)〜8月23日(日)
会場|東京国立博物館 平成館
住所|東京都台東区上野公園13-9
開館時間|9:30〜18:00 ※最終入場は17:00。夜間開館なし。
休館日|月曜・8月11日(火)、ただし8月10日(月曜・祝日)は開館
観覧料|一般1700円、大学生1200円、高校生900円
Tel|03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://kimonoten2020.exhibit.jp

※観覧にはオンラインによる事前予約(日時指定券)が必要です。

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文=織田城司 協力=東京国立博物館
2020年4月号 特集「いまあらためて知りたいニッポンの美」


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