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アートによる魅力づくり&環境づくり。

2020.1.10
アートによる魅力づくり&環境づくり。
日本在住のクロアチア出身アーティスト、ジョージア・ ボーシックさんが、日本古来の太鼓や琴の音色からインスピレーションを得て屏風に描いた抽象絵画。 AFT2019会期に先駆けて羽田空港第2旅客ターミナル2F出発ロビーで展示した

羽田未来総合研究所とともに羽田空港の可能性を探る連載《HANEDAの未来》。第2回は羽田空港×アートをテーマに、アートフェア東京の來住尚彦さんと語り合う。

アートフェア東京
代表理事  來住尚彦さん

東京放送(TBS HD)にて、赤坂BLITZや赤坂サカスの立ち上げや運営に携わる。退社後の2015年より、「アートフェア東京」のエグゼクティブ・プロデューサー。

羽田未来総合研究所
ディレクター  石黒浩也さん

百貨店でのマネージャー・バイヤー職を経て、2018年より現職。羽田空港のさらなる価値向上のため、日本の地方風土や文化芸術を羽田から発信すべく活動中。

——2019年3月5日~10日、羽田空港国内線第2旅客ターミナルにてアートフェア東京2019サテライトイベント「AFTサテライト World Art Tokyo 羽田空港」が開催された。アートフェア東京は、日本最大級の国際的なアート見本市。「World Art Tokyo」は、アートフェア東京2019の会場内で開催された国際展で、31カ国の駐日大使の推薦を受けた各国を代表するアーティスト31名の作品が集まった。会期に先駆け、羽田空港には、クロアチアのジョージア・ボーシックさんの作品が展示された。

石黒 2020年、そしてさらにその先を見据え、羽田空港はいま、変革の時を迎えています。そのキーワードのひとつとして掲げているのがアートです。そうした中で今回、羽田空港で開催されたサテライトイベントは、大きな一歩だと考えています。來住さんから見て、アートの魅力を発信する場として、羽田空港にはどんな可能性があるでしょうか。

來住 羽田空港には、海外に向けての日本の玄関というインターナショナルな顔と、国内の空港の中心的存在であるというドメスティックな顔があります。そこにアートがあることで、多くの人の目を引くというのももちろんありますが、それだけでなく国内外の人に対してさまざまなメッセージを発信できる場であると感じています。

たとえば、今回のサテライトイベントのように海外のアーティストの作品を展示することが、その国を知るきっかけを生んだり、日本の異文化への理解の深さ示すことにもつながったりする。また、アートフェア東京2019の会場では、全国の芸術系大学の学生の作品を展示する「Future Artists Tokyo」展も開催しましたが、そうした若者の作品が空港にあったら、地元が同じ人はうれしいでしょうし、その作品が生まれた背景に興味を覚える人もいるでしょう。

石黒 おっしゃる通りで、羽田空港を入り口として、そこから東京を、そして日本をどう楽しんでもらうかを提案する切り口のひとつとして、アートがあると考えています。羽田未来総合研究所(以下、羽田未来総研)では、地方創生への寄与というテーマを掲げています。

今回のサテライトイベントで海外とつながることができたとすれば、次はたとえば地方在住の若手アーティストや地方の美術館の所蔵作品を展示することで、地方へ足を運ぶきっかけを生み出すことができたらと思っています。

來住 アートは、いろいろなことを可能にする共通言語なんですよね。海外とのコミュニケーションツールであり、若者の教育ツールであり、地方を活性化するといったタウンマネジメントやエリアディベロップメントのツールでもある。さらに、空港から発信することで、空港が目的地にもなります。

羽田空港にはいろいろな魅力がありますが、そこにアートが加わることで、インパクトがより大きくなるでしょう。その結果、エア〝ポート〟じゃなくて、エア〝パーク〟といえるような場になる可能性が羽田空港にはあると思うんです。というより、それこそが、羽田空港がやらなきゃいけないことなんじゃないかなと感じています。

石黒 そういう意味では、普段、アートの世界におられる方だけでなく、不特定多数の方が利用される場であることもポジティブに作用するのかなと思います。さまざまな背景をもった方々が、それぞれの視点でアートを楽しむ。その延長線上で空港を楽しむ、そして街を楽しむことがあるような場づくりをしていきたいですね。

來住 それが街をどうつくるかということにつながるんだと思います。羽田空港が魅力的な場になれば、周りの街も引っ張られるようにして変わっていくでしょう。

石黒 來住さんとお話させていただき、アートがもつ力をあらためて実感しました。羽田未来総研では、今後も羽田空港の魅力づくり、そして空港を含めた一帯の環境づくりにあたり、アートをひとつの切り口として取り組んでいきたいと思います。


文=成田美友 写真=工藤裕之
2019年4月号 特集「ニッポンの新たな時代、どうつくる?」

 

《HANEDAの未来》
1|羽田空港の「場」を活用し、日本の魅力を発信
2|アートによる魅力づくり&環境づくり
3|職人の複製技術を活用し、文化財の魅力を世界へ
4|日本の豊かなものづくりを空港で魅せる
5|地域が誇れる酒を安定して供給する使命
6|瀬戸内国際芸術祭でアートの本質を再発見
7|伝統工芸の技法をファッションの世界へ
8|丹後本来の魅力は人々の暮らしの中に
9|発酵なくしてラーメンなし!
10|デザインとしての家紋が新しい価値をつくる

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