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日本の豊かなものづくりを空港で魅せる。
-KOMA-

2020.1.10
日本の豊かなものづくりを空港で魅せる。<br>-KOMA-
使用する繰り小刀(右)は新潟県の職人に依頼した特注品。木目に逆らわないよう見極めながら削っていく

羽田未来総合研究所と羽田空港の未来を考える連載《HANEDAの未来》。第4回は家具職人集団KOMAの松岡茂樹さんを迎え、木製家具の本質に迫る。

KOMA
代表 松岡茂樹さん

2003年にKOMAを設立。全製品のデザイン・設計、試作品の製作を担い、技術力とクリエイションの要となっている。荻窪駅近くに直営店「KOMA shop」がある。
http://koma-shop.jp/

羽田未来総合研究所
ディレクター 石黒浩也さん

百貨店でのマネー ジャー・バイヤー 職を経て、2018 年より現職。羽田空港のさらなる価値向上のため、日本の地方風土や文化芸術を羽田から発信すべく活動中。

石黒 「令和」の幕開けとともに、上皇陛下から今上天皇陛下へお代替わりされました。5月1日には剣璽等承継の儀が執り行われ、今上天皇陛下は三種の神器を継承。三種の神器は天孫降臨神話に由来する剣と鏡と勾玉を指します。剣は武具のひとつですが、私は日本のアイデンティティであり、平和の象徴であると考えているんですよ。

羽田空港では2019年5月7日~11日の間、家具の職人集団KOMAさんの椅子の展示を行いました。KOMAさんの家具は刀を使ってつくられており、もちろん同じものではありませんが、三種の神器に数えられる刀を用いて生み出す家具もまた、平和のシンボルといえるはず。だからこそいま、KOMAさんの家具をより多くの方々にご覧いただきたいと思ったんです。

松岡 使用しているのは特注の繰り小刀です。刃渡りは通常の倍以上の長さがありますね。KOMAの椅子は無垢材の削り出し。曲げ木や成形合板ではないからこそ複雑な三次曲面が具現化でき、座り心地のよさ、体重や身体の動きに耐える強度、心地よい美しさを生み出します。

僕たちは職人。家具は人が使う道具です。道具をつくる人間だから職人を名乗り、道具としての機能やそれに付随する美しさを追求していく。仕上げに刀やカンナを用いるのですが、手道具を扱う技術に加え、木目を読む技術が必要とされるんですよ。

代表作「cocoda chair 298」
なめらかな曲線美が特徴。KOMAでは基本的に同じモデルをつくらない。このチェアも2011年の発表以来、アップデートを続ける

石黒 同じモデルでも、木目の表情によって個性がありますよね。KOMAさんの家具には人の心に訴えかける何かがある。

松岡 だからかな。KOMAの家具を「うちの子」って意識で接してくださるお客さまが多いんです。

石黒 “本物”の家具には、人の生活や気持ちを変える力があるんだなと思います。

松岡 うれしいですね。木って、使えば使い込むほど、“経年優化”していくんです。それが天然素材の一番の特徴なんですよ。

石黒 KOMAさんの家具からは、木の本質が感じられます。伊勢神宮の式年遷宮で解体された木材が全国の神社で再利用されているように、木で紡がれていくといいますか。価値発信のポテンシャルがある羽田空港で、伝統を紡いできたものづくりを通して、日本の精神性を感じていただければと思います。


文=大森菜央 写真=山平敦史
2019年6月号 特集「天皇と元号から日本再入門」

 

《HANEDAの未来》
1|羽田空港の「場」を活用し、日本の魅力を発信
2|アートによる魅力づくり&環境づくり
3|職人の複製技術を活用し、文化財の魅力を世界へ
4|日本の豊かなものづくりを空港で魅せる
5|地域が誇れる酒を安定して供給する使命
6|瀬戸内国際芸術祭でアートの本質を再発見
7|伝統工芸の技法をファッションの世界へ
8|丹後本来の魅力は人々の暮らしの中に
9|発酵なくしてラーメンなし!
10|デザインとしての家紋が新しい価値をつくる

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