FOOD

発酵なくしてラーメンなし!
『らーめんせたが屋』
HANEDAの未来

2020.1.10
発酵なくしてラーメンなし!<br>『らーめんせたが屋』 <br>HANEDAの未来
濃厚な魚介スープと黄金色の自家製麺が一体となった「せたが屋ラーメン」(1030円)

羽田未来総合研究所とともに羽田空港の未来を考える連載《HANEDAの未来》。第9回は羽田空港にも店舗を構える「せたが屋」代表の前島さんにお話をうかがう。

らーめんせたが屋
代表取締役社長 前島 司さん
2000年に「せたが屋」創業。魚介ラーメンブームを巻き起こし、斬新なラーメンを創り続ける“ミスター・ラーメン”。国内外に20店舗展開。

羽田未来総合研究所
アート&カルチャー事業推進部
ディレクター 石黒浩也さん
羽田空港のさらなる価値向上のため、日本の地域風土や文化藝術を羽田から発信すべく活動中。「日本ラーメン検定」による「ラーメニスト」認定者でもある。

 

石黒 いまラーメンは日本を代表する食文化のひとつになっていますが、前島さんは19年前、当時「とんこつ街道」と呼ばれていた環七で、どうして魚介系のラーメンを打ち出したのですか?

前島 もともと好きだった喜多方ラーメンの淡麗醤油に、より魚介と平打ち麺のインパクトをもたせて、とんこつに挑みたかったんです。最初の店はうまくいかず、いったん閉めて独学で勉強し直して、地元の人に愛されるように「せたが屋」という名前にしました。

石黒 それが瞬く間にヒットし、“ミスター・ラーメン”として時代の寵児になったのは誰もが知る通り。前島さんは高知出身ですが、スープに使用する鰹節に思い入れはありますか?

前島 そうですね。地元の食材を使いたいので、高知の宗田鰹にこだわりました。

石黒 タレに使用する醤油も含めスープは発酵食材でできています。

前島 それだけでなく、小麦を練って発酵させて仕立てる麺、竹の子を乳酸菌で発酵させるメンマ等、ラーメンは発酵の塊なんです。

石黒 あらためて考えると本当にそうですね。

前島 特にスープは、寝かせると微生物の働きでアミノ酸が増幅し、旨みや香りがでる。以前、とんこつラーメンをつくったときに「菌が生きている」ことを実感したことがあるんです。毎日炊いていて週に一度の休みで腐ることがあったのですが、あるときから腐らなくなりました。これは、いい菌が店にすみついたからだと思います。

石黒 それは興味深い。日本酒蔵の「蔵付き酵母」のようですね。

前島 そう。だから同じ材料・レシピでつくっても、同じ味にならない。まさに発酵食ならでは。

石黒 日本の食文化は発酵があったからこそここまで進化しました。

前島 “発酵なくしてラーメンなし”です。

環七沿いの本店には現在も全国からファンが集まる

石黒 前島さんは、その食文化をNYをはじめとした海外にも発信されていますが、外国の方の嗜好性はどうなんでしょうか?

前島 欧米では、最初に世界に進出したとんこつ味がラーメンのスタンダードになっていますね。一方で、いま訪日外国人の方々もラーメンの多様性に気づいているので、今後は潮目が変わると思います。以前、魚介系でうまくいかなかった経験がありますが、次は魚介を抑えた魚介系とんこつで再チャレンジしようと思っています。

石黒 それは楽しみです。海外出店は、その土地の食文化に合わせているのですか?

前島 そうですね。たとえばNYはベジタリアンも多く、テイクアウト文化があるので、次の新店では自分でカスタマイズするまぜそばを打ち出します。ほかにも、麺文化がなく牛や豚を食べないインドでは、手食できる温度でスパイスを利かせた鶏のラーメンなら喜んでもらえるんじゃないかとか、アイデアはいろいろあります。

石黒 地域に寄り添い、いままでなかった新しいラーメンをつくるという創業時からの姿勢を貫いているんですね。その思いが国境を越えて多くの人を魅了しているのは、羽田国際空港店の行列に表れていると思います。

前島 空港は、日本の食文化を世界に向けて発信するのに最適な場所なのは間違いないです。

石黒 確かに全国の空港にその土地のラーメンがあったらいいですよね。時間がなくても地の料理が手軽に食べられて、満足度も高い。

前島 空港とラーメンは、親和性が非常に高いです。これからも、誰もやっていないラーメンを追究していくので期待してください。


文=藤谷良介 写真=林 和也
2019年11月号 特集「すごいぜ!発酵」

《HANEDAの未来》
1|羽田空港の「場」を活用し、日本の魅力を発信
2|アートによる魅力づくり&環境づくり
3|職人の複製技術を活用し、文化財の魅力を世界へ
4|日本の豊かなものづくりを空港で魅せる
5|地域が誇れる酒を安定して供給する使命
6|瀬戸内国際芸術祭でアートの本質を再発見
7|伝統工芸の技法をファッションの世界へ
8|丹後本来の魅力は人々の暮らしの中に
9|発酵なくしてラーメンなし!
10|デザインとしての家紋が新しい価値をつくる

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