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女優や起業家、有名店シェフを虜にした
「発酵食」の魅力とは?

2019.12.5
女優や起業家、有名店シェフを虜にした<br class=“none” /><b>「発酵食」の魅力とは?</b><br class=“none” />

星のや 東京の料理長 浜田統之さんや、タレントの加藤紀子さん、ぬか床ロボットを開発した企業家のドミニク・チェンさん、そして植物性乳酸菌を研究する農学博士 岡田早苗さんが、発酵食への愛についてそれぞれの視点から語ってくれた。健康に良くて面白い、発酵食の魅力とは。

発酵なくして日本食は語れない!
日本旅館 星のや東京 料理長 浜田統之さん

日本旅館 星のや東京 料理長 浜田統之さん
2013年、世界最高峰の料理コンクール『ボキューズ・ドール』で日本人初世界3位、魚部門で世界1位受賞。「星のや東京」で打ち出す“NIPPONキュイジーヌ”で食文化の新境地を切り開いている

私が「星のや東京」で打ち出している〝NIPPONキュイジーヌ〟は、食のルーツを縄文時代までさかのぼり「日本の天然食材だけで料理をつくる」というコンセプト。その時代に山ブドウを発酵させたワインの原型のような飲みものが造られていた記録があったり、そもそも日本の料理は、醤油や味噌に代表されるように発酵食材を使わないと成り立たない。それが我々の強みでもあります。海外を見ても、美食家たちの間では無農薬は当たり前で、次に行き着くのは自然に発酵食になる。パリの3つ星レストランのシェフも味噌を取り入れていたり、街でも普通に売られているので、日本が世界一の長寿の国という事実も含めて、今後、日本の発酵食はさらに注目を集めると思います。

美の秘訣以上に“発酵沼”にハマっています
タレント 加藤紀子さん

タレント 加藤紀子さん
三重県鈴鹿市出身。NHK FM『トーキング ウィズ 松尾堂』、TOKYO FM『Renault Sunday voyage』などのレギュラー番組やウェブ『OurAge』内の連載「畑からこんにちは」など多方面で活躍中

美を意識し出したのは7年前。テレビ番組で1年間畑をやらせていただいて、ものづくりの楽しさを知って以来、畑で野菜をつくるようになりました。発酵食品を作り始めたのは、年を重ねて家族ができて、いつまでも健康を維持したいのと、畑で採れた野菜を美味しく食べたいのとで自然に取り入れはじめました。青唐辛子が採れたら麹と醤油で漬ける東北の郷土料理「三升漬け」をつくったり、そら豆で豆板醤を仕込んだり、2年漬けたキムチとか、どんどん夢中になって、スーパーで「糀」の文字を見たら、無意識に買っていたり(笑)。日々、発酵食品を食べていると、わかりやすく変わるというより、内側から浄化されているような感覚で、身体もお肌も調子がいいですね。

ぬか床はロマンティシズム
情報学研究者・起業家 ドミニク・チェンさん

情報学研究者・起業家 ドミニク・チェンさん
早稲田大学文学学術院 准教授。株式会社ディヴィデュユアル共同創業者、NPO法人コモンスフィア/クリエイティブ・コモンズ設立理事。『インターネットを生命化する』(青土社)など、著書多数

10年前に会社を立ち上げるとき、共同創業者に50年物のぬか床を分けてもらって、はじめてぬか床に触れました。その不思議さや奥深さに惹かれ、夢中になりましたが、夏に腐らせてしまい〝ぬかロス〟に陥ったことが、ぬか床ロボット「NukaBot」を着想したきっかけです。これは、発酵の進み具合や菌の活動を測定するセンサーでぬか漬けの状態をチェックし、混ぜるタイミングや数値を電子音声でお知らせしてくれるのですが、全自動で混ぜる機能は入れませんでした。なぜなら、菌という生き物同士の交感にロマンティシズムを感じるからです。人間の中にも細胞より多い数の微生物が生きていて、混ぜる時に皮膚からぬか床の微生物と混ざり合い、共生するからこそ独自の深い味にたどり着く。その達成感が発酵食の一番の魅力だと思いますね。

発酵が生活を豊かにする
農学博士 岡田早苗さん

農学博士 岡田早苗さん
高崎健康福祉大学農学部教授。東京農業大学名誉教授。専門は応用微生物学。1988年に論文で「植物性乳酸菌」という言葉をはじめて発表。植物性乳酸菌研究の第一人者として現在も研究に勤しむ

古来、農耕民族だった日本では冬に備える保存食として、野菜を塩で乳酸発酵させた漬物や味噌をつくってきました。その中で働く乳酸菌が「植物性乳酸菌」です。どちらも整腸作用や抗菌作用、免疫活性作用など、人の健康維持に貢献することは同じですが、完全栄養食であるミルクの中で穏やかに育つ動物性乳酸菌に対し、植物質は栄養が乏しく、抗菌物質が多く含まれているので、植物性乳酸菌は過酷な環境を生き抜かなければならない。ですので、人体に入ったときでも機能のパワーは失われず、動物性乳酸菌より5〜6倍は活性が高いものがいることが実験データで証明されています。

微生物がもたらす自然からの恵み「発酵食」は、健康にいいだけでなく、知れば知るほどハマってしまうほど、奥深くて面白い。あなたもこの機会に、“発酵沼”へ足を踏み入れてみてはいかが?

2019年11月号特集「すごいぜ!発酵」

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