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老舗氷業店《クラモト氷業》
世界のトップバーテンダーも注目する
金沢の氷ができるまで

2026.8.7
老舗氷業店《クラモト氷業》<br>世界のトップバーテンダーも注目する<br>金沢の氷ができるまで

グラスの中で静かに光る透明な氷。ことにバーにおいて、それは脇役ではない。温度を整え、香りを引き出し、味わいの輪郭を決める最後の素材だ。いま、その氷を求めて、世界のトップバーが日本へ視線を向けている。世界への送り主は、石川県は金沢の「クラモト氷業」。一軒の老舗氷業店が、いま世界のバーカルチャーの最前線で存在感を放っている。

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クラモト氷業の氷づくりとは?

純氷は2日以上かけて凍らせる。白山の伏流水が含まれる水道水を、特殊なコーティングをした鉄製の容器に注ぎ、不凍液(塩化カルシウム溶液)のプールで冷やし固める

完成した新工場で、クラモト氷業は新しい価値を生み出していく。その象徴が、カクテル用に特化して加工した氷。従来、バーで使う氷はバーテンダーが削り、磨き、成形するものだった。しかしクラモト氷業は、その工程自体を商品化する。バーテンダーにとっては、人手不足の解消やカクテルづくりのクリエイティブに集中する時間を捻出できるメリットがある。球体、キューブ、スティック型。長さや厚み、角度まで細かく調整して、バーごとの要望に応えるようになった。現在、展開する氷は55種類にも上る。

「届けて終わりじゃないんです。グラスに入り、カクテルとして完成するところまでを考えています」

原料水を撹拌しながら凍らせる。凍らせていく過程で水から不純物(ミネラル)を分離させて除く
出来たての純氷。整温室で寝かせて加工される

クラモト氷業の氷は、驚くほど透明だ。72時間以上かけて攪拌させながら凍らせることで、不純物や気泡を取り除き、純粋な水分子だけが凍った雑味のない美しい氷が生まれる。だが、本当に重要なのは「溶け方」だと蔵本さんは言う。氷は溶けることで液体を薄める。つまり、溶け方次第でカクテルの香りの立ち方も、口当たりも変わる。ゆっくり溶ける氷は、カクテルの輪郭を崩さず、味わいを長く保つ。「氷は脇役ではなく、完成させる存在」という価値に、いち早く反応したのが海外のバーだった。

「目」と呼ばれる割れやすい方向を見極めながら、切削する。冷凍マグロ用を改良したバンドソー(帯ノコ盤)を採用し、美しい断面に

物流体制を徹底し、
街の氷業店から世界のブランドへ。

転機は2017年。アメリカへの輸出話が持ち込まれた。当時、国内でネット販売に挑戦したもののほとんど売れなかった頃で「氷は通販に向かない」といわれていた。それでも蔵本さんは、海外市場に可能性を感じていた。
「日本は、お店と地元の氷業店との関係が強く、品質以上に、安定供給が重視される。でも海外ではそんな先入観は皆無です」

右)丸
オンザロックにぴったり。液体に接する表面積が最小で溶けにくい。グラス口径に合わせた3種類のサイズを展開
真ん中)カチワリ
自然なかたちゆえ、さまざまなグラスにマッチ。液体の通り道が多く、しっかり冷却できる。サイズは3種類
左)スティック
複数の氷を入れるより炭酸の抜けが少なく、ハイボールをはじめとするロングカクテルに向く。サイズは8種類

最初は小さな取引だった。コンテナに相乗りさせてもらい、少量をアメリカへ送る。転機となったのはラスベガスだった。ロックダウン後の2020年6月頃からいち早くビジネスが再開し、バーでの採用が決まった。バーテンダーの口コミとこれまでの地道な営業が功を奏し、販路が拡大。現在はアメリカ全土に加え、メルボルンでも高いシェアをもち、今後はバンクーバーやメキシコ、香港への進出も視野に入れている。

右)キューブ
角が立ったかたちが美しく、ロックスタイルをはじめ、万能で汎用性・機能性に優れる。サイズは18種類
左)コーナーカット
包丁で手切りする特注にも対応。高い品質に加え、カクテル制作の効率化などの理由から需要が高まっている

さらに驚くべきは、物流体制だ。当然、氷は溶ける。しかしクラモト氷業は、温度管理や梱包方法を徹底的に研究し、溶かさず届ける仕組みを築き上げた。現在、売上の約40%が海外となり、将来的には8割に達すると見込んでいる。
「使われるところまでを設計しているところが、日本のものづくりならではの特徴です」

その言葉には、金沢という土地の気質も重なる。かつて「金を洗った沢」に由来するといわれ、豊かな水と、災害の少ない環境の中で、工芸や食文化が発展してきた。
「細かい仕事を突き詰める文化は絶対に継がれていると思います」 蔵本さんは言い切る。
「3年以内に世界のトップブランドになります」

視線の先には新たな工場の建設、その先に海外工場の建設がある。街の氷業店から世界のブランドへ。氷をフックに、金沢に人を呼び込める可能性だってある。クラモト氷業は、いま確実に、日本の氷の価値を塗り換えている。

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国内外に発送される完成形の氷。プロのみならず、自宅で酒を楽しむ人からの需要も高い。世界発の氷のサブスク「ICECLE」も実施している

クラモト氷業
住所|石川県金沢市湊1-55-27
Tel|076-238-0055
https://ice-kuramoto.jp

 

クラモト氷業の氷を金沢で味わう
かき氷専門店《つちのこ舎》

 
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世界が求めるクラモト氷業の氷
01|金沢から世界への挑戦
02|世界も注目する金沢の氷ができるまで
03|かき氷専門店《つちのこ舎》で氷を味わう
04|バー《茶寧庭》で氷を味わう

text: Yumiko Numa photo: Sadaho Naito

2026年7月号「納涼、しましょ。」

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