しずおか遺産をめぐる2日間の旅
〈1日目〉偉人が愛した変わらぬ絶景と進化する食を堪能
日本一高い富士山から日本一深い駿河湾、ユネスコ世界ジオパークの伊豆半島など豊かな自然とともに、さまざまな歴史遺産の宝庫としても知られる静岡県。歴史文化を紡ぐ“しずおか遺産”をめぐる旅へと出掛けてみよう。今回は、清水港側にある日本平や静岡市を愉しむ1日目のプランをご紹介!
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《1日目》
偉人が愛した絶景から往時の歴史を垣間見る
朝日に映える富士山から駿河湾、市街地に広がる夜景など、静岡ならではの格別な景色が広がる日本平。県のほぼ中央に位置するこの地は、標高約300mの有度山の山頂及び一帯の呼び名だそう。
この眺望を有名にしたのは、明治から昭和にかけて活躍したジャーナリスト・徳富蘇峰だ。大正期に日本平を訪れた彼は、紀行文で眺望を絶賛。それがきっかけで富士山を望む“観富”の名所として全国に知られることになった。

一方、令和時代の観富の新名所といえば、「日本平夢テラス」だ。「眺望とともに、隈研吾建築都市設計事務所による建築や、庭園デザイナーの石原和幸氏による庭園も見どころ」と話すのは、同施設のマネージャー・慶野明子さん。
日本平とともにめぐりたいのが、歌川広重が描いた「薩埵峠」や明治の文豪が訪れた「観富山 龍華寺」。ともに富士を望む景勝地だ。
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〈日本平夢テラス〉
徳川家ゆかりの地から富士山を眺望

隈研吾建築都市設計事務所が手掛けた、法隆寺の夢殿をイメージした展望施設。一周約200ⅿもの展望回廊とともに、日本平の歴史や文化の展示コーナーや日本平の茶畑で摘んだ静岡茶を味わえる茶房もぜひ。
日本平夢テラス
住所|静岡県静岡市清水区草薙600-1
Tel|054-340-1172
開館時間|9:00~17:00、土曜~21:00
休館日|第2火曜(祝日の場合は翌平日休)
料金|無料
https://nihondaira-yume-terrace.jp
〈薩埵峠〉
歌川広重も描いた東海道の絶景

江戸の絵師・歌川広重が『東海道五十三次』の由井宿に描いた薩埵峠。絶壁から望む駿河湾と富士山は多くの人を魅了してきた。峠道は1655年、朝鮮通信使のために整備されたそう。
薩埵峠
住所|静岡県静岡市清水区由比西倉澤
問|静岡市スポーツ振興課
Tel|054-221-1071
https://hellonavi.jp/detail/page/detail/1574
〈観富山 龍華寺〉
文豪も愛した東海の名刹

1670年に創建。徳川家康の側室である養珠院お万の方が開山を厚く援助したため紀州徳川家との縁も深い。観富の眺望でも知られ、夏目漱石や芥川龍之介が訪問し、境内には文豪・高山樗牛の墓所も。
観富山 龍華寺
住所|静岡県静岡市清水区村松2085
Tel|054-334-2858
拝観時間|8:30~16:30
定休日|なし
拝観料|400円
www.ryugeji.jp
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夜は進化を続ける
食文化に舌鼓を打つ
そして変わらぬ景色とともに、いまの静岡も愉しみたい。注目株のエリアを訪ねて、まずは静岡駅からほど近い人宿町へ。江戸の宿場町として賑わった町は、昔からの店舗をリノベーションし、新たな魅力を発信中だ。

「魅力ある個人店をたくさんつくっています」
和モダンな和食処「巧」、待ち合わせから締めまで使える「O’BAR」など、人情が宿る店が集っている。町の再生を手掛けるのは、130軒以上の物件をよみがえらせてきた「創造舎」の代表・山梨洋靖さん。
「店舗設計はもちろん、町にふさわしい店を呼び込むことにも意欲的に取り組んできました。個性のある魅力的な店が多い、県内外の人が集う町になっています」

さらに静岡駅から2駅ほど離れた用宗も話題のエリアだ。シラス漁で知られる港町には、商業施設や飲食店が続々誕生。中でもクラフトビール醸造所が営むホテル兼レストラン「The Villa & Barrel Lounge」は、注目の存在。部屋にはサーバーがあり、出来たてビールを一日中愉しめる。目の前に浜辺や温泉があるのもうれしい。
変わらぬ絶景と魅力的に変わる町を堪能し、静岡の夜は更けていく。
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〈巧〉
地酒を片手に駿河湾の恵みをいただく

焼津の小川港から届く駿河湾の魚介や静岡産黒毛和牛を使った和食と鉄板料理の店。アラカルトからコースまで幅広く対応する。実家が蕎麦店という巧の蕎麦も人気。静岡の日本酒からワインまで幅広く取り揃えている。

静岡で最も古い1636年創業の「初亀醸造」。ドライな口当たりと上品な甘さで人気の「からからべっぴん」
原材料|米(日本産)、米麹(日本産米)
精米歩合|55%
アルコール度数|15度
純米吟醸 磯自慢
焼津の「磯自慢酒造」が手掛ける純米吟醸「磯自慢」。爽やかな吟醸香と柔らかな甘み、ほどよい酸味が持ち味
原材料|米(日本産)、米麹(日本産米)
精米歩合|麹50%、掛55%
アルコール度数|15~16度未満
巧
住所| 静岡県静岡市七間町16-7 omachibld. 2F
Tel|054-293-4151
営業時間|12:00〜13:30
(L.O.)、17:30〜22:00(L.O.)
定休日|月曜、第3火曜
www.taku-omachibld.com
〈O’BAR〉
静岡の新しい夜をつくる

2025年3月にオープンした、カジュアルな雰囲気ながらも本格的な一杯を愉しめるバー。スタンダードなレシピから季節のフルーツを使ったカクテルなどを提供。静岡産のウイスキーなども味わいたい。
O’BAR
住所|静岡県静岡市葵区駿河町4-2
営業時間|19:00~翌2:00
定休日|不定休
Instagram|@o___bar
〈The Villa & Barrel Lounge〉
世界も注目するクラフトビールを堪能する

静岡在住のアメリカ人オーナーが立ち上げたブルワリー「West Coast Brewing」の直営ホテル。ホップの香りを利かせた多彩な味を展開し、ポップなデザインの缶ビールをコレクションするファンも多い。
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The Villa & Barrel Lounge
住所|静岡県静岡市駿河区用宗2-26-1
Tel|054-270-3083
料金|1泊ビール飲み放題付1万9800円~(税・サ込)
営業時間|タップルーム8:00~22:00(L.O.21:00)
定休日|タップルーム/不定休
www.westcoastbrewing.jp

名建築を堪能し、
西伊豆の景観と文化に触れる
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text: Yukiko Mori photo: Atsushi Yamahira
2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」



































