木の香りで免疫力がアップ!?
木の空間が生む健康効果とは
木の空間やインテリアから感じられる、温かさや寛ぎ、癒し……。その感覚についての科学的な検証が進んでいる。環境負荷の軽減や森林保護にもつながる“木のある暮らし”は、自然だけでなく人間にも優しい生活をもたらしてくれる。心地よいだけじゃない!木の空間が心身を健やかに。今回は、木の空間がもたらす人間の体への作用について、森林総合研究所の杉山真樹さん解説のもとご紹介する。
杉山真樹(すぎやま まさき)
森林総合研究所 木材研究部門 木材加工・特性研究領域チーム長。三重大学大学院生物資源学研究科連携准教授も兼務。木材と木質空間の快適性や、国産早生樹の利用に関する研究を行う。
心地よいだけじゃない!
木の空間が心身を健やかに
〈木の空間で疲れにくくなる!?〉

※ 『建物の内装木質化のすすめ』(日本住宅・木材技術センター)より転載
出典:齊藤ほか「木材学会誌」(2009)
木の内装が疲労感を和らげる効果についても研究データがある。木質空間での短時間の精神的労作後の緊張や抑鬱、怒り、疲労、混乱などの心理検査のネガティブな指標は、ビニル空間と比べて入室後により小さくなり、活気は少し高くなることが示されている(上図)。また、別の研究では、内装が無垢材だと認識すると、木目シートや突板の場合よりも作業の誤りが減少し疲労を抑えるという結果が。木の空間だと疲れにくいのかもしれない。
〈木の香りで免疫力もアップ!〉

※『建物の内装木質化のすすめ』(日本住宅・木材技術センター) より転載
出典:Liほか「International Journal of Immunopathology and Pharmacology」(2009)
檜などの木の香りで免疫力が高まることも明らかに。都内で働く男性を対象とした実験では、檜精油を揮発させた部屋に3日間宿泊した後で、免疫細胞であるナチュラルキラー(NK)細胞が活性化(上図)。ストレスによって高まる尿中ノルアドレナリン濃度も下がっていたことから、木の香りがストレスを和らげ、間接的に免疫機能を向上させたと考えられる。
〈やる気出ないそんなときにも〉

※『建物の内装木質化のすすめ』(日本住宅・木材技術センター)より転載
出典:西本ほか「日本建築学会計画系論文集」(2019)
幼児を対象とした保育室での調査によると、木質化された部屋のほうがそうでない部屋よりも子どもたちの眠気とだるさ、注意集中の困難、不快感などの身体的違和感が少ない結果に(上図)。大人においても、金融機関の職員を対象とした調査では木質化空間の店舗で接客時のストレス度が低下する傾向が見られた。木の空間は、子どもにも大人にもいい効果がありそうだ。
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text: Miyo Yoshinaga illustration: Teppei Nakao
2025年9月号「木と生きる2025」



































