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都市緑化を目指す、
“まちづくり”最新事例集!②
|「地域のコミュニティの創出」、「働く環境の緑化」

2025.4.29
都市緑化を目指す、<br>“まちづくり”最新事例集!②<br><small>|「地域のコミュニティの創出」、「働く環境の緑化」</small>

日本のまちをみどり豊かな空間にするため、各地でさまざまな取り組みが進行中。人に、環境にやさしいまちづくりは、人と自然とが共存する持続可能な社会へとつながっていく。

今回、地域のコミュニティの創出を行う「玉川上水旧水路緑道再整備」と働く環境にみどりを取り入れる「CITIZENの森」をご紹介!

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《地域のコミュニティの創出》

まちの歴史・文化を取り入れ、人のつながりを生む緑道に
玉川上水旧水路緑道再整備/東京都渋谷区

370年以上前、江戸の町に飲料水を供給するライフラインとして整備された玉川上水。全長は約43㎞で、一部を除いて昭和の時代に暗渠化あんきょされた。その上部を整備した玉川上水旧水路緑道の再整備が渋谷区内で進められている。コンセプトは「FARM(育てる・育む)」。

約2.6㎞の緑道を段階的に整備
笹塚から代々木まで約2.6㎞続く緑道を、区間ごとに順次整備を進め、2026年度末までの全区間着工を目指す。2024年夏から笹塚緑道の一部と大山緑道の一部で工事がはじまっている
©Atelier Tsuyoshi Tane Architects

ランドスケープデザインの設計などを担当する建築家・田根剛たね つよしさんは、「玉川上水の歴史や地域の文化を取り入れ、いまあるものを生かして豊かな未来を生み出す参加・活動型の緑道を整備します。住民の皆さんが食をテーマに協働することで会話や出会いが生まれ、未来のための世代を超えたコミュニティを育む場となることを目指しています」と語る。

区民の声から生まれた農園が新たなコミュニティを育む
再整備後の農園の在り方を探るため、初台と西原の2カ所で「仮設FARM」を実施中。公募で選ばれた住民が作物栽培や日常の手入れなどの協働を通して、コミュニティを育んでいる
©Atelier Tsuyoshi Tane Architects
トレーラーハウスを利用した情報発信施設を設置
代々木緑道内に情報発信施設を設置。パネルや模型の展示、動画放映などを通して、これまでの経緯や再整備のコンセプト、ワークショップの記録などを紹介している
写真提供=渋谷区

再整備地区|東京都渋谷区内 玉川上水旧水路緑道
問|渋谷区土木部緑道・道路構造物課
Tel|03-3463-2979
www.city.shibuya.tokyo.jp

情報発信施設
住所|東京都渋谷区代々木3-28付近 代々木緑道内(西参道公衆便所東側)
営業時間|8:00~18:00
定休日|なし

※パースについてはイメージのため、最新の計画内容とは異なります。

《働く環境の緑化》

自然に囲まれて働く場を創出
CITIZENの森/東京都西東京市

「シチズン時計」が本社を置く東京事業所では、「屋内でも屋外でも働ける」をコンセプトに、従業員の心身の健康に配慮した場づくりを推進。約4000㎡の広さを誇る工場と駐車場の跡地を緑地へと転換した「CITIZENの森」は、働く場所づくりで生まれた豊かなランドスケープである。

住宅地に囲まれた場所に位置するため、近隣の緑地との連携を深める目的から、森には武蔵野の雑木を植樹。緑化率29.4%となった東京事業所には地域に生息する鳥や虫が飛来するようになり、生物多様性の保全やCO₂削減にも貢献している。

※一般の方の見学は不可
問|シチズン時計
Tel|042-466-1231
www.citizen.co.jp

《生態系に配慮した家庭の庭づくり》

地域の在来樹種を使った家庭の庭づくりを通して豊かなまちをつくる
「5本の樹」計画/積水ハウス

まちの連続性を生む地域の在来樹種の植栽
出発点は1軒家の庭に過ぎないものの、地域の自然を点と点でつなぐこの取り組みが日本全域の都市に大きな生態系ネットワークを築くことにつながる

里山を手本とする生態系に配慮した庭づくり「5本の樹」計画を実践する「積水ハウス」。日本を5つの気候区分に分け、地域に適した原種や在来樹種を中心に植栽することで生物多様性の保全に効果の高い庭を提案する。2001年にはじまったこの計画は、戸建て住宅のみならず、集合住宅やまちづくりの緑地でも採用。

これまで全国で植樹した木は2000万本に到達した。今後数十年で約100万種もの生物が絶滅するといわれる中、在来樹種を平均50種に増やしたことで、庭に呼び込める鳥の種類は平均で2倍、チョウ類も平均1.3種から平均6.9種まで増える可能性がある。多彩な生き物と触れ合う暮らしは、ウェルビーイングの向上にもひと役買っている。

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庭木の3本は鳥のために2本はチョウのためにがコンセプト
本州・四国・九州の山間部エリアでは、たとえばキタキチョウ、アカタテハといったチョウを呼ぶ落葉低木・ノリウツギをはじめ、メジロ、シジュウカラなどの鳥を呼ぶエゴノキなどを「5本の樹」にセレクトする

問|積水ハウス
www.sekisuihouse.co.jp

 

都市緑化を目指す
“まちづくり”最新事例集!③

 
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text: Miyu Narita, Natsu Arai
2025年3月号「ニッポンのまちづくり最前線」

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