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《矢田久美子》のうつわ
優美なティータイムを演出

2024.6.24
《矢田久美子》のうつわ<br>優美なティータイムを演出

カラフルな草花が描かれた陶芸家・矢田久美子さんのうつわ。その景色はまるで花畑のよう。
東京・渋谷パルコのDiscover Japan Lab.では、2024年6月29日(土)〜7月7日(日)にかけて、うつわ謙心×DisoverJapan 矢田久美子ミニ個展「喫茶を愉しむ」を開催。ロマンティックな世界観に浸りながら、至福の一杯を味わおう。

Discover Japan公式オンラインショップでは、本展の一部作品を7月2日(火) 20時より順次販売予定です。(店頭の販売状況により日程・内容が変更になる場合があります)

矢田久美子(やだ くみこ)
京都市立芸術大学美術学部卒業。企業の広報やデザイン専門学校の講師を経て、昔から好きだったものづくりの道に進む。2008年、佐賀県立有田窯業大学校に入学。卒業後、有田で独立し、アトリエを開業。ろくろや鋳込みによるうつわの造形から絵付けまで、一貫して行っている。

ギリギリのかたちを狙って削り出し
優しいタッチで草花を描く

ピンク、黄色、水色…。うつわを埋める、色とりどりの草花。その香りに誘われて飛んできたのか、ひらひらと舞う蝶も描かれている。矢田久美子さんのうつわは、まるで絵画のよう。そこに言葉はないが、繊細で幻想的な描写を眺めていると、不思議とストーリーが頭に浮かんでくる。見る人の心をつかんで離さない。

矢田さんが陶芸家としてデビューしたのは8年前のこと。

「それまではデザイン専門学校の講師をしていました。ただ、昔から創作するのが好きで、いつかはものづくり一本でやっていきたいという気持ちもあって。そこで一念発起。以前から興味のあった陶芸の道を歩むことに決めたんです」

絵付けに目が行きがちだが、ベースとなるフォルムにも注目してほしい。磁器の特徴である硬質でなめらかな質感を生かし、エッジのきいたかたちに仕上げている

現在、矢田さんは有田のアトリエで、日々作陶に励んでいる。
「特に気を遣うのは、ろくろでの成形後、カンナを使って削り出していく作業です。磁器ならではのシャープな感じを引き出すために、ギリギリのかたちを狙っていきます。たとえば、うつわの表面をできるだけ薄く削ったり、ミニゴブレットの脚の部分に彫刻刀で装飾をつけたり。テクニックが要る分、理想通りのフォルムに仕上がると、気分が高揚します」

続いて待っているのが、矢田さんの代名詞ともいえる草花の絵付け作業。驚くことに、下絵なしで頭の中で大まかにイメージした景色を、フリーハンドで直接うつわの表面に描き出していく。
「芸大時代、一応絵画も習いました。ただ、キャンバスに描くのとなめらかな磁器の表面に描くのでは次元が違います。そのため独学で絵付けの技法を身につけました」

キキョウを模したフラットプレートに茶杯を並べておもてなし。ちょっとしたアイデアを加えると、よりいっそう、空間が華やぐ。テーブルコーディネートも喫茶の醍醐味

透明感を残しつつ、色を重ね、奥行きを出していく。まるで水彩画のような絵柄はハッとするほど美しい。色彩にも強いこだわりがあり、パステル彩の彩度を微妙に落とすことで落ち着いた、大人かわいい印象になる。
「私はじっくりつくり込んでいくのが好き。どうしても小ぶりの作品が多くなるため、料理よりもティータイム向きです。そこで当初から、茶器をメインに展開してきました。最近は紅茶も楽しんでいただけるように、ティーカップや紅茶用のポットもはじめました」

ティータイム専用のうつわでお茶を味わう。贅沢なひとときは、心をもゆるめてくれるだろう。

読了ライン

華麗なうつわはこうしてつくられる!

①磁器土をろくろで成形していく
ろくろで均等に成形。作品によっては排泥鋳込(石膏型を使用)やろくろ型打ち(ろくろで挽いた素地を型に被せてたたく)を採用
②一つひとつ削り出し
低温で素焼き 成形したうつわを乾燥させた後、細かな部分を削り出し、なめらかでエッジのきいたフォルムへと仕上げていく。その後、素焼きする
③フリーハンドで絵付けを施す
釉薬をかけ1300℃前後で本焼きした後、うつわの表面に絵付けを施していく(上絵付け)。その後、さらに約800℃で焼き付けて完成

 


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text: Misa Hasebe photo: Shimpei Fukazawa
2024年7月号「沖縄」

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