絶景温泉旅館《界 霧島》
「1人前食堂」Maiさんが行く
霧島の焼酎を味わい尽くす旅|前編
旅先でふらりとBARに入ってみたり、奥深い焼酎の世界に触れてみたり……。少し背伸びをした大人な旅に憧れる、YouTube「1人前食堂」主宰・松本舞さんが、「界 霧島」で九州の酒文化に出合う。
天上界から下界をのぞくと、高千穂峰の山頂部分が霧海の中に浮かぶ島のように見えたことが、名前の由来とされる鹿児島県・霧島。「王道なのに、あたらしい。」をテーマに、全国22施設を展開する星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」において、神話や伝説に彩られた高千穂峰の中腹に佇む宿が、もうひとつの旅の拠点「界 霧島」だ。
過去に界ブランドの2施設を訪れたことがあると話す舞さんは、滞在や体験を通して土地の魅力を発見するといったコンセプトに深く共感したという。
「温泉はもちろん、建築やアート、カルチャーなどが総合的に体感できる界は、いつか全施設を回ってみたいと思っていました。たとえ土産を買わずとも、思い出だけでも持ち帰るものが多いんです」。到着前から期待が膨らむが、客室に足を踏み入れた瞬間「夢を見ているみたい」と、窓の外の景色同様に舞さんの顔は晴れやかになった。
霧島での滞在の核となるのは焼酎。焼酎を嗜む姿に憧れはあったものの、これまでなかなか踏み出せなかった舞さんにとって、ほかの酒と比べると焼酎は少しハードルが高め。だからこそ今回の滞在では、米・芋・水のシンプルな素材が織りなす芋焼酎の奥深さを存分に体感してほしいものだ。食に造詣の深い舞さんは、果たして焼酎から何を感じ取るのだろうか。
焼酎沼への入り口がここにも、あそこにも
「米麹×サツマイモ×蒸留」の組み合わせにより、無限に広がる芋焼酎の世界。鹿児島には110を超える数の焼酎蔵があり、2000以上の銘柄が製造されているが、元をたどれば家族や友人らと楽しむ自家醸造が起源だった。そんな“家庭の味”が枝分かれした焼酎の魅力が発見できるよう、界 霧島には至るところに仕掛けが施されている。
中でも、グレープフルーツや塩を合わせたカクテル・ソルティドッグに倣った「湯上がり焼酎」は、自宅でもまねしたくなる味わいに驚かされる。絶滅状態にあった幻のサツマイモを復活させるところから手掛けた蔵の銘柄を使用し、温泉で失われた塩分やビタミンも補給できる“酒飲みの言い訳”が詰まった一杯。飲みにくいとされる芋焼酎の概念は、これだけでも激変する。
湯上がり後、大和桜酒造「大和桜 紅芋」とのスイーツペアリングを楽しむ場所として舞さんが選んだのは、そよ風が心地よいビューテラス。割り材なしの生の状態で焼酎を口に含むと渋い顔を見せたが、不思議なことにスイーツと掛け合わせると杯を重ねてしまう。「焼酎のキレがアイスクリームの甘さを引き締めてくれます」と舞さん。
焼酎の魅力をもっと伝えたいと、郷土愛あふれるスタッフは日々新しい楽しみ方を思案。その真骨頂こそ、蒸留酒としては珍しい会席ペアリングだ。紅茶に似た華やかな香りに、ミントのような爽やかな香りと、界 霧島で出合う焼酎は、どれも玄人好みの非凡な一本。だからこそ芋焼酎のイメージを大きく変えてくれるのかもしれない。界 霧島には、赴任と同時に焼酎にどっぷりハマったという名物スタッフが在籍するが、その理由にも合点がいく。
<夕景とスイーツが焼酎をさらに美味しくする>
<焼酎のポテンシャルを知る会席ペアリング>
<湯上がりの焼酎が実は身体にいい!?>
<神話が題材の演舞で酔い覚まし>
<食後にもう一杯……をかなえるサービスも!>
<“二日酔いになりにくい”から翌朝も界を満喫>
line
≫続きを読む
text: Natsu Arai photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。/九州」