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《東華菜館》
装飾と光が融け合う北京料理の館
京都の美味しいレトロ建築⑦

2023.12.21
《東華菜館》<br>装飾と光が融け合う北京料理の館<br><small>京都の美味しいレトロ建築⑦</small>

古都・京都は、実は明治・大正・昭和初期にかけて生み出された、近代建築の宝庫である。この秋は、懐かしい空気に包まれたレトロな空間と美味しいものに心ときめく旅をぜひ。
 
今回は本場の味で人気の北京料理レストラン「東華菜館」を紹介。部屋ごとに変わる装飾や家具の意匠にも注目したい。

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天井・腰板・扉など
すべて異なるしつらいが楽しい

デコラティブな多葉アーチが目を引く個室入り口。教会や学校を数多く手掛けたヴォーリズらしく、自然光がふんだんに取り込まれ室内は思いのほか明るい

鴨川に架かる四条大橋の西詰に、屋上にモザイク貼りの塔をのせた洋館が建つ。コースから一品料理まで本場中国の味を提供するレストランとして京都の人々に親しまれてきた「東華菜館」だ。元は、大正末期にフランス料理店「矢尾政」が、ビアレストランを開くために建てたという。戦後1945(昭和20年)に中国・山東省出身の于永善による北京料理店となり、補修を重ねながらいまに引き継がれている。

イスラム文様が多彩に取り込まれた3階宴会場。高い腰板を配した格式ある部屋の梁には、凸形が連なる精巧な彫りに彩色が施されている

設計は米国出身のウィリアム・メレル・ヴォーリズ。スパニッシュ・バロックを基調とした5階建で、個室入り口に配された木製多葉アーチや、八芒星と四つ葉、唐草文様をモチーフとした天井や壁の意匠など、あちこちにエキゾチックな装飾が凝らされた室内を窓からの光が優しく照らし、寛ぎと特別感のある空間をつくり出している。

八芒星をかたどった照明が華やかな3階個室

十数ある部屋ごとに装飾や家具の意匠が変わるため、訪れるたびに印象が変わるのも魅力。その中で宮廷料理として発展した気品漂う北京料理がゆったり味わえる。「鶏肉から取る、すっきりした透明感あるスープをベースに、基本に忠実に料理をつくっています」と3代目の于修忠さん。どこか京都らしさを感じる品のよい味と居心地のよさに、ついつい時を忘れてしまう。

鴨川の対岸からもひと際目を引くドーム形の塔屋。内部は現役として日本最古というエレベーターの機械室
羊・魚・貝・果物などをモチーフとした正面のテラコッタ装飾

◎1926年竣工
◎設計|ウィリアム・メレル・ ヴォーリズ
◎スパニッシュ・バロック様式
◎鉄筋コンクリート造5階建(地下1階)

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タケノコ・豚肉・ネギと至ってシンプルな具材でつくられる炸春捲1800円はほっとする優しい味わい。皮に薄焼き卵を使うのは北京料理の伝統
キクラゲ・ニンジン・豚バラ肉など、それぞれほどよい歯応えに仕上げられた糖醋肉(スブタ)1800円。後口がよく思わず箸が進む

東華菜館
住所|京都市下京区四条大橋西詰
Tel|075-221-1147
営業時間|11:30〜21:30(L.O.21:00)
※月〜金曜15:00〜17:00はクローズ
定休日|不定休

《京都の美味しいレトロ建築》
1|salon de 1904
2|フランソア喫茶室
3|喫茶 静香
4|築地
5|レストラン菊水
6|INDÉPENDANTS
7|東華菜館

text: Kaori Nagano, Makiko Shiraki, Minami Mizobuchi(Arika Inc.) photo: Mariko Taya
Discover Japan 2023年11月号「京都 今年の秋は、ちょっと”奥”がおもしろい」

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