沖縄・牧志〜壺屋やちむん通りを《まち歩きツアー》
沖縄の歴史や文化に出合える隠れた名所へ
賑やかな牧志公設市場に隣接する壺屋エリアを、おきなわスローツアーの高野純一さんの案内で散策。歩いてわかるまちの魅力とは?
ガイド 高野純一さん
おきなわスローツアーガイド、イラストレーター。沖縄出身の母親の影響で沖縄に魅せられ、大学卒業後に沖縄移住。現在は壺屋や第一牧志公設市場周辺などの街歩きやエコツアーを行う
http://okinawaslow.ti-da.net
「ここは沖縄の原風景を
想像しながら歩ける場所なんです」
沖縄に移住後は、工芸品の販売や仕入れにかかわり、多くのやちむん(沖縄の焼物)を目にして、国際通りに隣接する焼物の街、壺屋をはじめて歩いたときにその美しさに震えました。
戦火を逃れたガジュマルやフクギ、アカギが見守るスージぐゎ(筋道)に残る古い石垣には、魔よけの石敢當があり、赤瓦屋根に鎮座するシーサーは、風水にのっとって火事から屋敷を守るために南の方角を向いている。その屋敷に根を張る月桃の蜜に誘われたオオゴマダラがハラハラと舞って、うつわや絵画に描かれる沖縄の原風景が当たり前のように残る壺屋。古くは琉球王府直轄の工芸品の街からはじまり、戦後は庶民が使う民芸品の街として発展した素晴らしい地域だと思いました。
また、地域の至るところに残る御嶽(拝所)や貴重な水源となったカー(井戸)では、地元の人たちが毎月旧暦の1日と15日に、きれいに掃除をして手を合わせる風習が残っています。これは2週間ごとに変化する風や植物の息吹を通して季節の移ろいを感じ、自然に人間が合わせて生きる大切さを先祖が教えてくれているのだと思っています。実は沖縄のこのシンプルな昔からの風習こそが、観光客を呼んでいるのではないでしょうか?
壺屋には、人間も自然の一部である、人間は自然の中で生かされていることに気づかせてくれる魅力的なスポットがたくさんあります。大通りを歩くだけでは見えない本当の壺屋を一緒にお散歩しませんか?(高野)
沖縄の季節に気づかせてくれる自然美
自然と調和する壺屋のスージぐゎには、写真映えするスポットがたくさん。それは民芸や工芸の目線で街が考えられている証し、と高野さん。表通りを歩いているだけでは決して気づくことができない壺屋の魅力
ほっとひと息つける伝統グルメ&スイーツ
やちむん通りから一本入ったセレクトショップ&喫茶の「nan*ne」では、金・土曜限定の沖縄そばを。「うちなー茶屋 ぶくぶく」では、琉球王朝時代から愛されるぶくぶく茶はいかが?
nan*ne
住所|沖縄県那覇市壺屋1-22-37
Tel|098-866-1635
うちなー茶屋 ぶくぶく
住所|沖縄県那覇市壺屋1-22-35
Tel|098-943-4811
琉球王朝時代の暮らしがわかる
神さまの場所と井戸
海外からの観光客を点在する水源に案内すると「自分の国にも同じような場所がある」と感動する人もいる。拝みだけでなく、昔の風習は全世界共通。自然崇拝はどんな人にとっても生きる原点なのではと高野さんは考えている
今回歩いたコース&主要スポット
公設市場周辺を散策
第一牧志公設市場からは土産物店が建ち並ぶ市場本通りや平和通り、むつみ橋通りが延び、互いをつなぐ路地が入り組んで、まるで迷路のようになっている
てんぷら坂からやちむん通りに入る
戦前、この崖には壺屋の人たちが隠れていた防空壕があり、戦後は崖に沿っててんぷら店が建ち並んでいたことからこの名前がついた。再開発によりさま変わりしたエリア
「壺屋」の守り神がいる
那覇市立壺屋焼物博物館を見学
博物館の上にある拝所「ニシヌメー(北ヌ宮)」にはもともとは登り窯の神さまが祀られ、現在は、中国の焼物の神さまトーティークン(土帝君)も祀られている
琉球王朝時代からの荒焼(※1)の登り窯
壺屋焼は各地にあった焼物(湧田、首里宝口、知花)の地を1682年に琉球王府が壺屋に統合したのがはじまり。その後、戦後の人口増加とともに読谷のやちむんの里や郊外へ移った
※1 荒焼(あらやち)/釉薬をかけない焼物のこと
国指定重要文化財「新垣家住宅」
壺屋のシンボル的なスポット。王朝時代から続く陶工の住宅。同じ敷地内に東ヌ窯(あがりぬかま・上焼 ※2)の登り窯がある。金・土・日曜は見学が可能
※2 上焼(じょうやち)/釉薬をかけた焼物のこと
最後は仁王窯の工房見学
やちむん体験も受け付けている工房。壺屋独特の古典焼きや赤絵の技法が魅力的。工房の隣には売店も併設している。本格的な壺屋焼を見たい人におすすめ
読了ライン
text: Kiyomi Gon illustration: Junichi Takano photo: G-KEN
Discover Japan 2023年7月号「感性を刺激するホテル/ローカルが愛する沖縄」