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瀬戸焼の聖地・愛知県瀬戸市
陶都千年のものづくりをめぐる旅へ
中編|型の技術から生まれる瀬戸焼

2026.3.24
<small>瀬戸焼の聖地・愛知県瀬戸市</small><br>陶都千年のものづくりをめぐる旅へ<br><small>中編|型の技術から生まれる瀬戸焼</small>

「せともの」という言葉のルーツ、愛知県瀬戸市はその名の通り、焼物の都。1000年余り、陶器や磁器を生む窯が栄えてきた街を体感しに出掛けよう。中編では、瀬戸焼の型の技術が格別な窯元や陶芸家を紹介する。

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陶都の多様性を育んだのは、
「型」でした。

海外でも高く評価されたノベルティに欠かせなかった「型」の技法。「型で量産」というと、工場での機械生産のような印象を受けるかもしれないが、実際の型を使った焼物づくりは、手仕事の連続だ。瀬戸の豊かな土と環境、ものづくりに携わる人々の思いが、多様な瀬戸焼の世界を切り開いている。

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01|かしわ窯
北欧デザイン×瀬戸焼の融合

「LISA LARSON にわとり エッグホルダー(2万2000円)」。リサ・ラーソンの原画を元に型を製作

1965年創業。初代で陶芸家の岩附壽之ひろゆきさんがフィンランドのデザイナー、カイ・フランクの影響を受けて北欧調の作品を発表し、欧米への輸出をスタート。現在は2代目の寿人さんが工房を率いる。酸化鉄を加えた赤土に独自の釉薬を使った動物モチーフの置物類は、なんとも温かい表情。

2代目 岩附寿人さん

「かしわ窯」の2代目・岩附寿人さんが初代の父とともに確立した、北欧調の動物や植物モチーフのノベルティは、国内にとどまらず欧州にもファンを多くもつシリーズだ。かしわ窯では、石膏の型に、粘土を水に溶かした泥漿でいしょうを注ぎ込んで固める「ガバ鋳込み」の技法で置物や花瓶などをつくっている。

「石膏が水を吸うことで、中が空洞の素地じきができます。ただ、酸化鉄を配合しているうちの土は乾きにくく、ひとつの型を使えるのは1日4回までです」と岩附さん。数が増やせなくとも、大切にする肌合いのために、初代から土のブレンドは変えないという。

かしわ窯
住所|愛知県瀬戸市東洞町32
Tel|0561-82-8887
www.kashiwacraft.com

02|セラミック・ジャパン
MoMAに認められたアートな瀬戸焼

「ニュークリンクルスーパーバッグ #1 ホワイト(1万3200円)」。紙袋のしわを驚異的な精度で再現

型を活用し、デザイン性の高いアイテムをつくっているのが、「セラミック・ジャパン」だ。社内外のデザイナーとコラボしデザイン性の高い品を続々と発表。中でも有名なのが、紙袋のテクスチャーを写し取った小松誠氏デザインのクリンクルシリーズだ。同シリーズの花器はニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに選定され、その製品は世界中で販売されている。

取締役 中沢郁子さん

今まで、プロダクト・デザイナーの荻野克彦氏をはじめ十数人のデザイナーと協業し、モダンな食器やオブジェをつくってきた。「デザイナーの気持ちに寄り添い、こだわりのかたちを実現するため、アイテムごとに土と釉薬の組み合わせや製法・工程を変えています」と取締役の中沢郁子さんは話す。代表作のクリンクルシリーズは、口がぼってりしないよう、型から外した後に手削りを施すなど細かな調整が欠かせないそうだ。

セラミック・ジャパン
住所|愛知県瀬戸市中品野町60-4
Tel|0561-42-0182
営業時間|9:00~17:00(ショールーム見学は要予約)
定休日|土・日曜、祝日
https://ceramic-japan.co.jp

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03|M.M.Yoshihashi
型屋が挑戦する“型破り”な焼物

「彫付網模様ペンダントランプ 小(1万4300円)」。染付などでお馴染みの伝統文様が立体的に

窯元からの依頼に応じ石膏型をつくる「型屋」だが、「自分のつくりたいものにも挑戦したい」と3代目・吉橋賢一さんがオリジナルの商品も手掛けるように。伝統的な吉祥文様を彫りで表す「彫付 HORITSUKE」をはじめ、オリジナルブランド3種がインテリアショップなどでも大人気だ。

代表取締役 吉橋賢一さん

オリジナル商品では、型の元となる原型づくりから担い、細かな彫刻を自ら施す。焼成は商品の特性に応じた窯元に依頼。「型をうまく使えば、クオリティもスピードも上がる。それをもっと知ってほしくて、ワークショップ『カタノガッコウ』も時折開催しています」。縁の下で支える型屋から表舞台に立った同社の挑戦は、まだはじまったばかりだ。

M.M.Yoshihashi
住所|愛知県瀬戸市品野町4-22
Tel|0561-41-0471
営業時間|5・11月の第2土・日曜の「窯めぐり」開催時のみ9:00~16:00に工房公開w
www.mmyoshihashi.com

04|S U I Y O
夫婦協業で描く彫刻のようなうつわ

「陽刻 クリムト M 青磁(7700円)」。アール・ヌーヴォーを想起させる柄。縁は欧州の古書をイメージ

中国・宋代に美しい青磁で高く評価された耀州ようしゅう窯をリスペクトする、陶芸家の穴山大輔さん・文香さん夫妻。その理想に近づくべく、大輔さんが原型をつくり、文香さんが模様を彫った石膏型で、精緻な柄を見事に浮き出させる。芸術作品のようにいつまでも眺めていたくなる。

S U I Y O 穴山大輔・文香さん

中でも、精密画のように繊細なレリーフが魅力の「陽刻」シリーズが評判だ。「食器は料理がのることが前提ですが、それ自体でも鑑賞に耐えるモノを目指したい」と夫の穴山大輔さん。妻の文香さんは古今の名画や芸術作品から着想を得て、オリジナルの文様を考案。石膏型に緻密に彫刻し、奥行きのある焼物に昇華する。

「つくり手はもちろん、粘土屋さん、型屋さん、陶芸道具屋さんなど全部揃っていて、ものづくりにベストな環境だと思ったんです」。大輔さんは大学で陶芸を学んだ後全国の焼物産地をめぐり、瀬戸への移住を決めたという。

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S U I Y O
住所|愛知県瀬戸市小空町74-2
Tel|070-8328-0684
営業時間|5・11月の第2土・日曜の「窯めぐり」開催時のみ9:00~16:00に工房公開
www.suiyo-works.com

 

伝統を体感する
おすすめスポット5選

 
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瀬戸焼の聖地をめぐる旅へ
前編|瀬戸焼の歴史と発展のカギとは
中編|型の技術から生まれる瀬戸焼
後編|伝統を体感するおすすめスポット5選

text: Kaori Nagano(Arika Inc.) photo: Takashi Gomi
2026年4月号「地域の“旬”感へ」

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