沖縄の〈しまくとぅば〉を知る
|沖縄の伝統文化 入門
首里城を中心に、約450年続いた琉球王国。琉球王国、日本、アメリカ、再び日本と、世が変わる中で伝え継がれてきた、多種多様な文化に触れてみたい。今回はしまくとぅばについて、しまくとぅば普及センター長 琉球大学 名誉教授 狩俣繁久さんにお話をうかがった。
しまくとぅば普及センター長
琉球大学 名誉教授
狩俣繁久(かりまた しげひさ)
琉球大学島嶼地域科学研究所産学官連携研究員。琉球列島全域で方言の聞き取り調査や音声データ収集を行い、保存継承の研究に取り組む。2024年、ウェブサイトに「大琉球語辞典」を公開。
line
5つの地域の
個性豊かなしまくとぅば

しまくとぅば(島言葉)の「しま」は、「島」ではなく、もっと小さな集落、生まれ故郷を指す。上に挙げた大きな5つの地域の中には、それぞれたくさんの個性豊かなしまくとぅばが存在している。
「たとえば、恩納村のとある集落では『くーん』は“来る”の意味だけれど、その隣の集落では“来ない”を意味します。隣接した集落の言葉でも意味が正反対になるほど多様性に富んでいます」としまくとぅば普及センター長の狩俣繁久さん。

明治維新後、人々が自由に往来できるようになったとき、このしまくとぅばの多様性がコミュニケーションのネックになった。共通の言葉が必要となり、日本の標準語がその役を担った。学校教育のはじまり、そして戦後の本土復帰という歴史の流れで、しまくとぅばは衰退の道をたどっていくことになる。
「沖縄の教師は、子どもたちが本土で活躍できるよう一生懸命だった。だから一概に標準語励行政策が悪とも言えないのです」

沖縄を訪れたときに触れる機会の多い単語を、大きく分けて5つの地域の方言で表した。言葉の差異に着目して各地を旅するのもいい。「うちなーぐち」は、沖縄県全体の方言と思われがちだが、本島中南部で話される方言である。すべてユネスコの消滅危機言語に認定されている
沖縄のことわざに「生まれしまの言葉を忘れたら、国をも忘れてしまうことになる」という言葉がある。狩俣さんによれば、どれほどのものがすでになくなってしまったか、把握するのも難しい状況だそう。
沖縄県ではいま、しまくとぅばの普及継承のために講師養成講座なども開いている。
「それだけでなく、どんな祭りがなんのために行われていたかなど地域の『無形文化財レッドリスト』をつくるのが理想です。故郷を知って誇りをもち、しまの人が元気になる。それが、しまくとぅばという沖縄の文化を支える土台、本質を守っていくことになると思います」
一緒に覚えたいしまくとぅば
〈共通語:いただきます〉
北部 くわっき さーやー
中南部 くわっちー さびら
宮古 ふぁっとー
八重山 とーらるなーらー(とーらりーるんゆー)
与那国 たばらりるー
〈共通語:ありがとうございました〉
北部 にふぇーいぇーたん
中南部 にふぇーれーびるさい
宮古 たんでぃがーたんでぃ
八重山 にふぁいゆー
与那国 あらーぐ ふがらっさー
line
text: Ayako Arasaki photo: Yukiko Shiraki
2026年3月号「訪ねる建築 暮らす建築」





























