陶芸家・阿部春弥さんのうつわ①
夫婦二人三脚で高め合う作品
|日々の食卓に馴染む懐の深さが魅力
長野県上田市で作陶を行う陶芸家の阿部春弥さん。妻のみかさん、二人の子どもと囲む食卓の風景を訪ねた。夫婦二人三脚で高め合うお互いの作品づくりにかける思いとは?
阿部春弥さん
1982年、長野県真田町(現上田市)生まれ。陶芸家の父をもち、愛知県立窯業高等技術専門校を修了後、陶芸家・山本出さんに師事。2004年から上田市で築窯、独立。2007年に三窯を設立する
阿部みかさん
1978年、愛知県生まれ。愛知県立窯業高等技術専門校修了後、Fitz&Floyd社にて原型師として勤務。2007年、阿部春弥さんとともに三窯設立
夫婦二人三脚で
お互いの作品を高め合っていく
緑あふれる森林と清らかな川に恵まれた長野県上田市。陶芸家・阿部春弥さんは自身の郷里であるこの土地に「三窯」を構え、妻のみかさんとともに作陶を行っている。うつわは阿部さんが、動物の箸置きはみかさんが手掛け、製作するものが異なるからこそ、それぞれの作品に対し意見を述べ合うこともしばしば。試作段階から食卓に並べ、使い勝手を確認しているという。
「かわいいけど、少し箸が置きにくいかな」と阿部さんがアドバイスすると、みかさんは動物のポーズを変えるなどして箸置きを改良。逆にみかさんの「筒型のシンプルなうつわがあるとうれしい」というリクエストによって新たな作品がつくられる、といった具合だ。
二人が出会ったのは陶芸を学べる愛知県立窯業高等技術専門校。阿部さんは陶芸家の父をもつものの、「陶芸は兄が継ぐ仕事」という認識であったため、もともとは料理人を志していた。「しかし僕が高校生の頃、陶芸の修業をしていた兄が別の道へ進むこととなって。それならば自分が焼物をやる選択肢もあるなと考えたんです」と、当時を振り返る。学校修了後、阿部さんは備前焼陶芸家の山本出さんに師事し、2004年、22歳のときに上田市に戻り、陶芸家として独立した。
阿部さんがつくるのは磁器のうつわである。高い強度と美しい焼き上がりが特徴の天草陶石を素材に、ろくろや文様を彫り込んだ型での成形、面取り、しのぎなどの技法を駆使し、丁寧に仕上げていく。「どれもお客さまにとっては『たったひとつのうつわ』。ですので一つひとつ、心を込めて制作しています」と話す阿部さんに、みかさんも共感の笑みを浮かべている。
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が使いやすい5つの理由とは?
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text: Nao Ohmori photo: Shimpei Fukazawa
Discover Japan 2023年12月号「うつわと料理」