TRADITION

2026年の干支「午年(うまどし)」
どんな年になる?馬が象徴する意味とは?

2025.11.17
2026年の干支「午年(うまどし)」<br><small>どんな年になる?馬が象徴する意味とは?</small>

2026年の干支は「丙午(ひのえうま)」。競走馬のように一気に駆け抜ける年になるのか、農耕馬のように力強く実りをはぐくむ年になるのか。古来より日本人と深い縁を持つ「馬」と干支の関係、そして来年の運勢や縁起をひも解く。

十二支とは「十干十二支」の略

毎年、当サイトで来年の干支について語る際に説明している内容だが、今年も軽くおさらいをしておこう。干支というのは、古代中国の暦法で順序や番号を表す十干と、季節の移ろいにしたがって植物が変化していく様子を表す十二支のこと。現代では順序や番号は1、2、3と算用数字を使うが、古くは甲、乙、丙、丁という十干を用いていた。

この十干十二支は、天体や年月日、時間の動きを表すものとして使われただけでなく、生まれた日時によってその人の運命をも決めると広く信じられてきた。十二支はもともと動物ではなく、「滋」「紐」「演」「茂」「伸」「巳」「仵」「味」「身」「老」「脱」「核」という、植物の変化の状態を表す字だった。時代が下る中で、これらの文字に音や韻が似ている動物に置き換わり、より親しまれるようになっていったのだ。

「跳ねる、駆ける、達成する」がキーワード

2026年の干支、馬に関する言葉は「勝ち馬に乗る」という言葉をはじめ、「馬車馬のように働く」など、一心にゴールを目指して進むさまをイメージしたものが多くある。ちなみに「負け馬」という言葉も現代では日常会話などで使われるが、こちらは「勝ち馬に乗る」の対義語として後発で生まれた造語。また「馬車馬のように」はもともと、長時間の無理な労働を表す言葉ではなく、寝食も忘れてことに打ち込む様子を表した言葉。時代の流れで言葉の意味は変わってくるが、本来の意味では、馬は走りぬく、力強い、勝利を目指すといった、よい意味でつかわれることが多い動物だ。

江戸時代には「左馬」といって、馬という字を左右逆に書く願掛けもあった。馬というのは勢いよく行ってしまうもの。これを逆に書くことで、家に帰ったお客がまたすぐに戻ってくるようにという、客を招くサインにもなっていた。これをうまくさげ(落ち)につかった落語に「返し馬(品川の豆、左馬など別題もあり)」という作品があるが、高座にかけるネタではなく、ごく内内のお座敷限定で演じるバレ噺なので、ここではあえて詳しく書かない(興味のある方はこっそりと調べてほしい)。ちなみに、正月にこうしたバレ噺や艶めいた冗談を言うことが、子孫繁栄を願う縁起の良いものと考えられていた時代もあったが、今は昔の話である。

2026年の丙午はどんな年に?

来る2026年の十干十二支は「丙午」。十干の丙は「木、火、土、金、水」という世界を構成する五要素・五行の「火」に属しており、太陽のような激しい熱を、十二支の午は元の植物の状態を表す字では「仵」であり、前の巳年(植物の状態を表す字も同じく「巳」)で成長した植物が、成長を止める時期を表している。この二つを掛け合わせて読めば、全力で最大限の成長を目指し、それを成し遂げる年という読むことができる。

前述のとおり、火のような強さで最大限の成長を実現する「丙午」は、一つ間違えばすべてを焼き尽くすほどの勢いを持っている。手綱を締めて、目標をしっかりと見定めて進んでいけば、次の大きな実りを得るために、勢いに乗ってラストスパートをかけていく、そんな2026年になるのではないだろうか。

なお、午年の守り本尊は、知恵の光で世界を照らす勢至菩薩。その光で人々を迷いから解き放つという。混沌の中から勢いよく抜け出す、迷いを捨てて夢に邁進する、そんな一年になりそうだ。

江戸時代の大人気娯楽作品に描かれる「丙午」

十干十二支は人の運命を決定づけると信じられてきたが、それとは別に「丙午生まれの女は気性が激しく、男を破滅させる」という迷信があった。その発生源は、実在の事件をもとに作られた、人形浄瑠璃や歌舞伎で大人気の演目「八百屋お七」。実在のお七の生年月日には諸説あるが、フィクションのお七が「丙午の生まれ」とされたことで、お七=丙午の女は破滅的というイメージが広まり、そのために迷惑をした女性も少なくなかった。

もちろんこれが何の科学的根拠もない、単なる迷信であることは言うまでもない。

農耕を助けてくれる動物として、
親しまれてきた馬

日本では、長い間庶民にとっての馬とは、乗り物としてよりも、荷物を運んだり、田畑を耕す助けをしたりする生き物として、親しまれてきた。

馬に関する俗信は吉凶両方あるが、例えば馬の夢に関するものでは、吉のほうは「豊作に恵まれる、ひいては財産家になる」といった言い伝えが多い。逆に凶のほうではそれを裏返すかのような「金がなくなる、家がもめる」といったものがあり、それを避けるには神仏に詣でればよいという言い伝えもある。神馬といえば白い馬だが、馬の色にかかわらず「馬が夢に出てきたら、信心が足りないことを戒める神仏からの警告」というような、馬は神の使いとするようなものもあるのが興味深い。また「馬がいななくと晴れる」「馬の耳が鳴ると雨が降る」「牡馬がたくさん生まれた年は日照りになる」といった、豊作不作に大きな影響を及ぼす天気に関連する俗信も全国的にみられ、馬と農耕の関係の深さを物語っている。

ハロウィンに似ていた初午の祭り

ちなみに稲作と結びつきの深い稲荷神社の祭礼である初午(二月最初の午の日)は、動物の馬と直接の関係はない祭り。その年の豊年満作を祈願する祭りで、昔、二月の最初の午の日に伊奈利山の三ケ峯に神が降臨したという伝説に基づいている。

江戸時代、農家ではこの日に近所のお稲荷さんに詣でて豊年満作を祈ったが、農家でない人々も商売繁盛を願ってお稲荷さんに詣でた。子どもたちはキツネやそれを象徴する絵が描かれた絵馬をもって商家をめぐり、店の前で「お稲荷さんの御勧化十二銅おあげ」と唱えると、店では小銭を子どもにあげるという、まるでハロウィンの「Trick or Treat」のような習わしがあったそうだ。

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ライタープロフィール
湊屋一子(みなとや いちこ)
大概カイケツ Bricoleur。あえて専門を持たず、ジャンルをまたいで仕事をする執筆者。趣味が高じた落語戯作者であり、江戸庶民文化には特に詳しい。「知らない」とめったに言わない、横町のご隠居的キャラクター。

参考文献=PHP研究所「面白くてためになる!日本のしきたり」/かんき出版「日本を楽しむ年中行事」/角川ソフィア文庫「日本俗信辞典 動物編」/講談社学術文庫「江戸語の辞典」/中公文庫「江戸商売図絵」

あらためて知りたい!干支の豆知識
01|寅年(とらどし)
02|卯年(うさぎどし)
03|辰年(たつどし)
04|巳年(みどし)
05|午年(うまどし)

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