「伝統工芸 青山スクエア」
暮らしを彩る伝統的工芸品を探して。
東京・赤坂で伝統工芸の旅に出る【前編】
全国の伝統的工芸品に出合えるギャラリー&ショップ「伝統工芸 青山スクエア」で、日々の暮らしに取り入れ、長くつき合いたい伝統的工芸品を探しつつ、産地をめぐる旅気分を味わおう。
見て、触れて、使ってこその伝統的工芸品
日常とは違う場所に足を運び、その土地の風物や文化を五感で味わうのは、旅ならではの醍醐味だが、コロナ禍のいまは自制が肝心。そんな中で、全国を旅するような気分を味わえるのが「伝統工芸 青山スクエア」だ。店内には陶磁器、漆器、織物、和紙、木工品、金工品など、全国の多様な伝統的工芸品が並ぶ。伝統的工芸品は、日本の風土が育み、日本人の暮らしに根ざしてきた工芸品の伝統を守り、後世に伝えるために制定された伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)にのっとって経済産業大臣が指定するもので、現在は236品目(2021年1月15日時点)が指定されている。
「どれも暮らしの中で受け継がれてきたもので、美術品のようにハードルの高いものではなく、日常生活の中で長く使えるものばかりです。ぜひご自身で見て、触れて、感じてください。そして実際に使っていただくことで、“用の美”を実感いただけることと思います」(店長・朝川和彦さん)
職人が生み出した品を手に取って、手仕事の温もりを味わうとともに、その品が生まれた土地へ想いを馳せ、旅気分を味わう。伝統的工芸品の制作工程を収録した映像チャンネル「手技TEWAZA」シリーズも合わせて視聴すれば、その景色はより鮮やかになる。
新年度がはじまる春は気持ちもあらたまる。暮らしを彩る伝統的工芸品を日常に取り入れ、気分も晴れやかに新しい一年を迎えよう。
旅のはじまりは、中部地方へ
金属加工業が盛んな新潟・燕三条地域。鎚起(ついき)銅器を生む燕の町では、職人が銅板を打つ鎚の音が工房から聞こえる。富山の高岡漆器は、色漆で立体感を出す彫刻塗、貝で絵を表す青貝塗など雅やか。旅気分を華やかに盛り上げてくれる。戦国時代以来の歴史をもつ山梨の甲州印伝。鹿の革に漆で模様を描いたもので、袋物などに用いられる。『東海道中膝栗毛』にも、旅のお供として登場する。
鎚で銅を打って生み出す
しっとりとした美しさ。
燕鎚起銅器(新潟県)
急須 洋梨形金色/島倉堂
江戸時代中期にはじまったとされる燕地方の銅器業。金鎚や鳥口(鉄の当金)などの道具で一枚の銅板を延ばしたり、ならしたりする打ち起こしの技でかたちをつくる。表面には、鎚で一回一回打った繊細な凹凸が浮かび上がる。
サイズ|W165×D105×H105㎜
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漆とガラスを融合した
螺鈿細工の酒器。
高岡漆器(富山県)
金杯(万華鏡)水玉(朱)/天野漆器
高岡漆器を特徴づける塗りのひとつである青貝塗(螺鈿)の技法を取り入れた、十二角の金付杯。底面に螺鈿細工が施してあり、中をのぞき込むと、その名の通り、万華鏡のような世界が広がる。色は朱と黒、模様はほかに桜、石垣などがある。
サイズ|φ60×H80㎜
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漆模様の鹿革は柔らかで
使うほどに手に馴染む。
甲州印伝(山梨県)
二つ折カードケース(右)、名刺入れ(左)/印伝の山本
袋物をはじめ、財布や印鑑ケースなどアイテムが豊富なことに加え、多彩な柄も甲州印伝の魅力。再生を象徴する鱗柄、子孫繁栄や商売繁盛を願う瓢箪柄、勝ち虫ともいわれ、武士に好まれたトンボ柄など、昔ながらの柄も多い。
サイズ|W105×D70㎜(右)、W118×D70×H15㎜(左)
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掲載商品の問合せはこちら
伝統工芸 青山スクエア
住所|東京都港区赤坂8-1-22
Tel|03-5785-1301
営業時間|11:00〜19:00(※緊急事態宣言中は〜18:00/特別展開始日及び最終日は開館時間を変更)
定休日|年末年始、臨時休業あり
https://kougeihin.jp
text: Miyu Narita photo: Kazumi Kiuchi illustlation: Masamitsu Saito
2021年4月号「テーマでめぐるニッポン」