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こけし愛が高じて宮城・蔵王町に移住!
宮城伝統こけし工人に
-小山芳美さん

2023.2.16 PR
こけし愛が高じて宮城・蔵王町に移住!<br>宮城伝統こけし工人に<br>-小山芳美さん

お土産屋さんで何げなく買った一本のこけしが、小山芳美さんの生き方を変えた。こけし工人を目指して、35歳で新潟から単身、宮城・蔵王町へ。いま、こけしに向き合う日々に夢中だという。

小山芳美(こやまよしみ)さん。ろくろに木材を固定し、使いやすい角度に自作した「うま」で手を固定しながらカンナで削っていく。カンナは常にそばの砥石で研ぎながら

蔵王町のこけし館は
こけし展示数世界一!

小山さんが手掛けた、愛らしい遠刈田系こけし。にっこりとした表情を描くのを心掛けているそう。「一番難しいのは目ですね」

「みやぎ蔵王こけし館」の駐車場脇にある小さな工房に、小山さんの姿があった。月に18日は同館の職員として働きながら、ここで遠刈田こけし工人としてこけしの製作を行っている。こけし工人とは伝統こけしを製作する職人のこと。ちなみに創作こけしの職人は作家と称することが多いそうだ。

小山さんがこけしと出合ったのは15年ほど前。なんとなく手にしたこけしに惹かれ、こけしの本でいろいろな系統があることを知る。やがてこけしの産地を訪ね歩くようになり、知れば知るほど奥深い世界にはまり、こけし愛がどんどん深まっていった。
「産地によって、その姿も表情もずいぶん違うんです。ここ遠刈田の伝統こけしは、おそらくかたちは一番シンプル。それでいて表情がとても豊か。まぶたの上下を描くため、表情がつけやすいのだと思います」と小山さん。

こけしの発祥については諸説あるが、東北の温泉地でお椀やお盆などをつくっていた木地師が、仕事の合間に子どものための木地玩具(男の子にこま、女の子にこけし)をつくったのがはじまりとされる。こけしのかたちが完成されたのは、江戸時代、8代将軍徳川吉宗の享保年間といわれる。現在、東北6県で12系統の伝統こけしが伝わっており、宮城の遠刈田は、鳴子、土湯とともに伝統こけし三大発祥の地とされる。直胴で、差し込み式の頭が大きく、手絡と呼ばれる赤い髪飾りが付いているのが特徴だ。胴には重ね菊や木目模様が多い。

「こけしが好きでここに来た私を、蔵王町の皆さんが支えてくれました」

墨と、主に赤、緑の植物染料を用い、イタチの毛筆で彩色していく。量産が基本の遠刈田では、いかにきれいに速く描くかが大事。顔は気持ちが安定しているときに描くそう。同じ作業でも表情は微妙に異なる

数あるこけし産地の中で、小山さんが宮城の遠刈田系を受け継いだのは、蔵王町が行う伝統こけしの後継者育成事業があったため。「実は昔、こけし工人に弟子入りしたいと両親に相談したら、生活が安定しないからと反対されたのです。やりたい道に進めずに悶々としていたところ、Twitterで遠刈田系こけし工人見習いの募集を見つけ、すぐに応募しました。すると書類審査が通ったので面接があり、その1カ月後には蔵王町に住む場所を決めて引っ越していました。今度は両親も背中を押してくれましたが、こけし製作の経験はゼロ。あのときは必死で、ほとんど勢いでしたね」。

研修の1年目は、木を削るカンナを自分でつくることからはじまった。鋼の棒を昔ながらのふいごで熱し、鎚で打ってかたちづくり、焼き入れする。鍛冶屋での手順そのものだ。自分に合うカンナがつくれるようになったら、木材をろくろに設置し、さまざまな削り方やかたちを覚える。こけしの描彩を学ぶのは2年目に入ってから。同期の二人とともに3年弱の研修を終え、2019年の4月にこけし工人としてデビュー。若手の女性工人として期待を寄せられている。

こけし館での仕事を終えてから、あるいは休みの日は終日、一人工房でこけし製作に没頭する小山さん。「私はまだまだ。何度つくっても満足いく仕上がりとはいきません」と目を細める。そんな彼女を、師匠や町の人たちが温かく見守っている。時に師匠の奥さまが、「夕飯に食べて」と煮物を差し入れてくれたりするそうだ。

「ただただ、こけしが好きで、ここに来た私を、蔵王町の皆さんが支えてくれました。今度は私が恩返しをする番。遠刈田の伝統こけしの魅力を、若い人たちに伝えていきたいです」

「みやぎ蔵王こけし館」では宮城の遠刈田系をはじめ、東北のこけしと木地玩具5500本を系統ごとに展示。その数、世界一
籠の中の赤ん坊の姿が愛らしい「えじこ」のコレクション。中がくり抜かれ、頭部がつまみの蓋が付き、小物入れとして使われていた
こけし館の前に巨大こけし! 同館では東北の伝統こけしを見比べることができるほか、こけし絵付け体験でオリジナルをつくれる
雄大な蔵王連峰のふもと、松川に架かる遠刈田大橋。橋の両サイドに遠刈田系の巨大こけしが置かれ、「こけし橋」と親しまれている

みやぎ蔵王こけし館
住所|宮城県刈田郡蔵王町新地西裏山36-135
Tel|0224-34-2385
開館時間|9:00〜17:00(最終入館16:30)
休館日|なし 料金|350円

こけしができるまで

①こけしによく使われるのは、白く緻密な木肌がきれいなミズキ。丸太の皮を剥ぎ、よく乾燥させてから使う
②頭部と胴を八角形に木取りし、円筒形に粗削りする。遠刈田系は頭部が大きく、胴はストンとした寸胴形
③ろくろの軸に木材を取り付け、回転させながらカンナで削っていく。仕上げは紙やすりで磨きをかける
墨と、赤や緑の植物染料を用いて絵付けする。木地に顔が描かれると、こけしに命が吹き込まれたよう
頭部と胴それぞれに穴を開けて棒を差し込み、木槌でたたいて固定する「さし込み」で両者をつなげる(実際は絵付け後の頭部と胴をつなげる)
光沢を出し染料が褪せるのを防ぐための工程。ろくろを利用し、温めたロウを全体に溶かし付け、布で磨く

読了ライン

小山芳美さんのこけし
「伝統工芸 青山スクエア」で買えます!

全国の伝統的工芸品を見て、触って、購入もできるギャラリー&ショップ。2023年3月3日〜16日には「宮城県の伝統工芸品展」が開催される。「宮城伝統こけし」からは鳴子と弥治郎を中心にラインアップ予定。

 

≫公式サイトはこちら

 

伝統工芸 青山スクエア
住所|東京都港区赤坂8-1-22 1F
Tel|03ー5785ー1301
営業時間|11:00〜19:00
定休日|なし
アクセス|東京メトロ青山一丁目駅4番北出口から徒歩3分

全国伝統的工芸品祭「銀座名匠市」が
2月下旬に「松屋銀座」で初開催!

全国、約100産地の伝統的工芸品が東京で一堂に会するビッグイベント。宮城伝統こけしにも出会える。今年は初の開催となる松屋銀座で、日本の手仕事の美に触れることができる。職人による実演やワークショップ、トークイベントなども見逃せない。

 

≫公式サイトはこちら

 

全国伝統的工芸品祭「銀座名匠市」
会期|2023年2月23日〜28日
会場|松屋銀座 8Fイベントスクエア
住所|東京都中央区銀座3-6-1
Tel|03-3567-1211
営業時間|10:00〜20:00(26日は〜19:30、最終日〜17:00)
料金|入場無料
主催|伝統的工芸品産業振興協会
※営業時間変更の可能性あり。詳しくは銀座松屋HP参照

text: Yukie Masumoto photo: Maiko Fukui
2023年3月号「移住のチカラ!」

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