市制20周年を迎えた
淡路市の「まちづくりと観光」
歴史と文化を未来へつなぐ【前編】
関西圏から抜群のアクセスを誇る瀬戸内のリゾートアイランド、淡路島。その玄関都市であり、美しい自然と歴史に彩られた淡路市で市政発足時から進化を止めないまちづくりに迫った。
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震災を乗り越え、未来へ歴史・文化を築く。
兵庫県最南端に位置し、瀬戸内海に浮かぶ島々の中でも最大の面積を誇る淡路島。神戸から明石海峡大橋を渡った先、島の玄関口にあたるのが淡路市だ。
1995年、島を震源とする阪神・淡路大震災が発生。甚大な被害に遭いながらも、着々と復興への道を切り拓いてきた。震災から10年を経た2005年、平成の大合併によって5町が合併し、淡路市が誕生。新たな歴史を刻みはじめた。

温暖な気候と良質の漁場に恵まれた食の宝庫で、かつては皇室・朝廷に食材を献上し「御食国」と称された淡路島。淡路市も水産業や農業といった一次産業が盛ん。加えて近年は、観光業も主な産業として発展を続けている。
その理由は自然豊かな環境のみならず、アクセスの良好さにも。1998年に開通した明石海峡大橋を越えればもうそこは淡路市。大阪から車で約1時間、神戸からは約30分圏内。「島でありながら“離島”ではない」といわれる淡路島の中でも、淡路市はとりわけ身近なリゾートなのだ。コロナ禍以降に浸透したマイクロツーリズムやワーケーションという新たなスタイルも後押しとなり、この地を目指す観光客は、関西圏を中心に右肩上がりに増加してきた。
市の発足以来、まちづくりの施策の柱のひとつとして進められてきたのが、企業誘致。企業立地に対する補助金を設けるといった独自の支援制度が奏功し、大企業の本社一部移転も実現。税収面などで目覚ましい成果を上げている。

その取り組みは、島に大きな変化をもたらした。特にダイナミックに変貌を遂げたのが西海岸。かつて静かな農漁村だったエリアを外食産業の大手が開発。スタイリッシュな飲食店や宿泊施設が建ち並ぶリゾート地へと生まれ変わった。瀬戸内海を一望しながら多彩なグルメを楽しみ、美しいサンセットを堪能する。そんな休日を求め、島外から足を伸ばすゲストが絶えない。そして、ふるさとに誕生した新名所を歓迎する島内のファンをも着実につかんでいる。
明石海峡大橋塔頂体験ブリッジワールド
住所|兵庫県神戸市垂水区東舞子町4-114(橋の科学館)
開催時間|2025年4月〜11月、2026年3月のうち明石海峡大橋塔頂体験ブリッジワールド事務局が指定する日。午前の部/集合・受付9:00、ツアー実施9:10〜11:50、午後の部/集合・受付13:15、ツアー実施13:25〜16:05
料金|大人5000円、中学生2500円(土・日曜、祝日は大人6000円、中学生3000円)
定員|48名(最少催行人員|12名)
www.jb-honshi.co.jp/bridgeworld
※事前予約制
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島の歴史や文化を継承した
新たな観光拠点とは?

開発のみならず、島の歴史や文化の継承にも力を注ぐ。代表的な事例が廃校の活用だ。少子化や市発足時の合併による統廃合で、小学校が相次いで閉校。長きにわたって地域の子どもたちを育んできた場所を保存し、次の世代につないでいくために、事業者に譲渡し校舎をリノベーション。レストランやショップ、宿泊施設などの機能を備えた観光拠点として再生させている。

学び舎の懐かしい佇まいをしっかりと残しつつ、地場産業の魅力を伝える試みも。たとえば「ei-to」のある江井地区は、線香の工場が軒を連ねるエリア。実は淡路島は日本におけるお香発祥の地として『日本書紀』にも記され、現在も国産線香の製造数は日本一を誇る。モダンな商品の販売や資料の展示を通して、お香の文化を発信。温故知新の施設の数々は雇用を創出するだけでなく、市全体の活性化にもつながっている。
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〈淡路市の文化を守る廃校活用のかたち〉
線香の町で考えるファッションの未来
「ei-to」
旧江井小学校をコンバージョンしたアパレルのギャラリー&ショップ。持続可能なファッションとともに、地場産業である線香の文化を発信。昭和30年代の江井地区を精巧に再現したジオラマを展示する「江井博物館」も必見だ。

住所|兵庫県淡路市江井2622-3
Tel|0799-70-9129
営業時間|カフェ8:00~18:00(L.O.17:30)、そのほか10:00~17:00
定休日|不定休
https://awajishima-eito.com
学び舎で自由なワーケーションを
「SAKIA」

西海岸に位置する旧尾崎小学校を活用したコミュニティ施設。レストラン&ショップのほか、コワーキングスペース「サトヤマデスク」や宿泊施設「SAKIA STAY」を備え、多様な過ごし方をかなえる。
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住所|兵庫県淡路市尾崎1798-3
Tel|0799-70-9077
営業時間|オサキ食堂カフェテラス/7:00~16:00(モーニング7:00~11:00、ランチ11:00~15:30L.O.)、こども図書館/9:00~18:00、サトヤマデスク/9:00~20:00
客室数|14室
IN|15:00 OUT|10:00
https://sakia.jp
震災の歴史を残し未来へ紡ぐ
淡路市のこれからに迫る!
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text: Aya Honjo photo: Kousaku kitajima
2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」


































