輪島塗に新風を吹き込む塗師たち
未来へつなぐ一歩
日本有数の漆器の産地として名高い石川・輪島。2024年元日の大地震により甚大な被害を受ける中、輪島塗再建に向けて新たな一歩を踏み出した人々がいる。
絶望から希望へ。未来を見据える塗師たちの思いに迫る。
日本有数の漆器の産地として名高い石川・輪島。日本海沿岸の湿潤な気候、材料となる木々が群生するなど環境に恵まれ、古くから漆器がつくられてきた。
輪島塗の特徴は、地の粉と呼ばれる珪藻土を下地の漆に混ぜたり、木地の弱い部分を布で補強する布着せをしたりすることで、堅牢さを得たこと。丈夫な輪島塗は日本各地で評価され、生産量を増やしていく。
やがて企画、木地づくり、塗り、加飾にわたる124もの製造工程を、高い技術をもつ専門の職人たちが行う分業制が取られるように。職人の技が結集する作品はおのずと品質が上がり、漆器生産高日本一を誇るまでに成長を遂げた。
2024年元日、能登半島を最大震度7の大地震が襲った。輪島の多くの工房や職人の自宅が倒壊。朝市通り近くに集中していた工房は焼けてしまった。誰もが絶望する中、未来へつなぐ一歩を踏み出したのは、輪島塗に新風を吹き込んできた塗師たちだ。
彼らの元を訪ね、輪島塗再建に向かう姿を追った。
輪島の木地師の技を次世代へ
《赤木明登うるし工房》
この土地で受け継がれてきた大切なものを失うわけにはいかないと一念発起し、元日の大地震でつぶれてしまった椀木地師・池下満雄さんの工房をいち早く再建した赤木明登さん。
輪島塗の先にある可能性を求めて
《輪島キリモト》桐本泰一
被災をきっかけに発見された木地を生かす「蘇生する漆の器」づくりに取り組む桐本泰一さん。お蔵入りしていたつくりかけのうつわが、桐本さんと工房の職人の手でモダンに生まれ変わる。
入門編から伝統的な輪島塗まで
《田谷漆器店》田谷昂大
料理ベラなど入門編のアイテムを展開することで若い人に向けて輪島塗の魅力を伝えている田谷昂大さん。輪島塗で食事ができる飲食店も手掛け、輪島塗との接点を広げている。
輪島の御膳を次世代へ
食や伝統を未来へつなぐプロジェクト
能登イタリアンと発酵食の宿「ふらっと」を営むベンジャミン・フラットさん、船下智香子さん夫妻は、蔵が倒壊して行き場を失った輪島塗の御膳を救出するプロジェクトを立ち上げた。
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脈々と受け継がれてきた伝統や文化を守り、新たな命を吹き込む人たちの思いに触れてほしい。
赤木明登
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1|未来へつなぐ一歩
2|《赤木明登うるし工房》赤木明登
3|《輪島キリモト》桐本泰一
4|《田谷漆器店》田谷昂大
5|輪島の御膳を次世代へ。食や伝統を未来へつなぐプロジェクト
text: Yukie Masumoto photo: Maiko Fukui
Discover Japan 2024年9月号「木と暮らす」