FOOD

「九平次」の挑戦
目指すのは日本酒×ワイン異文化ミックス。

2019.8.6
「九平次」の挑戦<br>目指すのは日本酒×ワイン異文化ミックス。
この圃場、フランスです

《日本酒界の開拓者「九平次」の挑戦》第3回は、最高の日本酒をつくるために行なっている、フランスでの米とワインづくりの物語。飽くなき探究心と革新力に駆り立てられて生み出された、新しい日本酒とは。その最前線で活躍する九平次の歩みを追った。

≪前の記事を読む

久野九平治/くの・くへいじ
「醸し人九平次」のブランドで革新的な日本酒を生み出している萬乗醸造の15代目。近年、日本だけでなく、海外での活動も展開。フランスでワイン醸造や米を育て、国境を超えた日本酒のあり方を探求し続けている。

「進化を加速させるもの、それは異文化のミックスです」

日本で先駆的な挑戦を続ける「九平次」だが、酒造りの本質を見つめるために、フランスを舞台とした取り組みも進めている。

そのひとつが、世界的なワインの銘醸地ブルゴーニュ地方で、ブドウ栽培からワイン造りを行うことだ。「2013年9月、スタッフの一人をフランス・ブルゴーニュへの長期研修に行かせました。その延長には実はワインを造ろう! と考えていたのです。日本酒の造り手である男がフランスワインに溶けこむことで、日本人の感覚がミックスされます。その新たな感覚で日本酒を造れば、必ず日本酒にも化学変化が起こるはずです」と、久野さんはねらいを語る。

醸造所もつくりました。

そして’15年に、ブルゴーニュのモレ・サン・ドニ村に醸造所を取得。ネゴシアン(農家から原料ブドウやワインを買い、自社で熟成・瓶詰をする生産者)として、’16年にワインのテスト醸造をスタートした。さらに、’17年7月には、モレ・サン・ドニ村周辺に2・5haの畑を取得し、自社ブドウの収穫、醸造にも着手。

久野さんは「初ビンテージを造るところまで辿り着き、感慨深いものがあります。私自身が『醸し人九平次』を造るときに、ワインからさまざまなインスピレーションを受けました。ブルゴーニュでのワイン醸造という取り組みの先に、日本酒、ワイン双方の新しい未来が待っていると信じています。ワインも日本酒も同じ醸造酒ですから」と期待を込める。

日本での米づくりと同じく、フランスでのワイン造りも「土着」を目指し、自社畑での栽培、自社ワイナリーでの醸造、瓶詰と「ドメーヌ」方式を貫いている

そして、フランスを舞台としたもう一つの取り組みが、フランスでの米づくり。さらに、この仏産の米を使った日本酒造りだ。

フランスで最大の米作地帯、南仏プロヴァンス地方のカマルグで、2014年から地元の米農家や農業試験所と協力して、米の栽培に取り組んでいる。品種はフランス固有品種の「Manobi(マノビ)」。

「カマルグでは、これまで主にリゾットとなる米づくりをしていたのですが、日本の酒米にもっとも近い米、マノビを育てることにしました」と久野さん。

カマルグで収穫したマノビは、日本に運ばれ、日本酒「醸し人九平次 CAMARGUEに生まれて、」としてリリースされている。

フランスでブドウづくりからワイン醸造に取り組む、フランスで米づくりをし、日本酒を造る――。どちらも、21世紀以降の時代を見据えて、日本酒の新しい価値を創造するための九平次の挑戦なのだ。

 

日本酒離れの打破に向けて。

≫続きを読む

 
 

文=本間朋子 写真=内藤貞保
2018年1月号 特集「ニッポンの酒 最前線!

萬乗醸造
住所:愛知県名古屋市緑区大高町西門田41
Tel:052-621-2185(月〜金曜9:00〜17:00)
創業年:1647年
年間生産量:非公開
www.kuheiji.co.jp
《日本酒界の開拓者「九平次」の挑戦》
1|フランスで閃いた日本酒を進化させるヒント
2|米から育てる酒造り
3|目指すのは日本酒×ワイン異文化ミックス
4|日本酒離れの打破に向けて。

愛知のオススメ記事

関連するテーマの人気記事