「鎌倉殿の13人」の三谷幸喜が歌舞伎に挑戦！予測不能のロードムービー
シネマ歌舞伎『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』

歌舞伎の舞台を映画館で楽しめる「シネマ歌舞伎」。2022年8月の上映作品は『三谷かぶき 月光露針路日本（つきあかりめざすふるさと） 風雲児たち』。映画、演劇、テレビドラマなど様々なジャンルで活躍し、今年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の脚本もつとめる三谷幸喜が、愛読書である歴史ギャグ漫画「風雲児たち」を原作に歌舞伎化した舞台。予測不能の三谷ワールドを、歌舞伎でも楽しもう。

本作は全国の映画館にて、2022年8月12日(金)から18日(木)まで上映予定。観に行く前に、あらすじや作品背景を予習しておこう。

鎖国真っ只中の江戸時代
流れ流され、なんと異国に⁈

鎖国によって外国との交流が厳しく制限される江戸時代後期。大黒屋の息子光太夫は、商船神昌丸の船頭（ふながしら）として伊勢を出帆。しかし江戸に向かう途中で激しい嵐に見舞われて帆は折れ、大海原を漂流することに。船頭の光太夫は、くじけそうになる乗組員を必死で奮い立たせ、再び故郷の伊勢へ戻るため方角もわからない海の上で陸地を探し求める。

漂流を始めて8カ月。神昌丸はようやく発見した陸地に上陸。ところがそこは日本ではなく、なんと見知らぬ異国の地！　はじめての言葉と文化に戸惑いながらも、生活をはじめる光太夫たち。厳しい暮らしの中で次々と仲間を失うが、光太夫らは力を合わせ、日本への帰国を目指し旅に出る。行く先々でさまざまな人の助けを得て、ようやく光太夫は帰国の糸口を見つけ…。

鎖国時代の日本人が異国の地で初めて出会う文化への戸惑いや、個性豊かな登場人物をコミカルに描いていて想像力が掻き立てられる。さらに、漂流する前は一商人に過ぎなかった松本幸四郎演じる大黒屋光太夫が、遠い祖国への帰還を目指しリーダーシップを発揮する姿が印象的。成長していく光太夫の姿や、強い望郷の思いと行動力に胸を打たれる新作歌舞伎だ。

歌舞伎でも三谷幸喜ワールド炸裂！

脚本・演出を担当したのは、今年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも話題を呼んでいる三谷幸喜。歌舞伎の演出は二度目で、自身の歌舞伎作品が歌舞伎座で上演されたのは本作が初めて。シネマ歌舞伎の編集にも携わった。
本作の個性豊かな登場人物を演じる俳優の中には「鎌倉殿の13人」に出演中の俳優も多く、大河ドラマへの出演のきっかけとなったと語る人物も多い。主人公の北条時宗の父・北条時政を演じる坂東彌十郎や、鮮烈な印象を残し義高ロスを巻き起こした市川染五郎をはじめ、市川猿之助、片岡愛之助、八嶋智人は、この「三谷かぶき」に出演。また、語りとして尾上松也も出演している。

喜劇の名手である三谷幸喜らしく、笑いどころは満載。出演する歌舞伎俳優たちも、古典の演目を演じるときとは一味違う一面を存分に発揮している。しかし物語で描かれるのは、鎖国中の日本から言葉も通じない場所に漂流するという想像を絶する試練。絶望の渕に立たされながら、「絶対に日本に帰る」という目標のもと団結する男たちの人間ドラマは見ごたえ抜群だ。登場人物ひとりひとりに個性があり、全員に肩入れしてしまうのも、三谷作品らしさのひとつだろう。

故・みなもと太郎著 歴史漫画「風雲児たち」

本作の原作となったのは、昨年惜しまれつつ逝去した漫画家みなもと太郎が、40年以上にわたり描き続けた歴史ギャグ漫画「風雲児たち」。関ヶ原の戦いから江戸幕府の建立、江戸時代と、それぞれの時代を生き抜いた実在の人々を、作者ならではの視点で描いた。
三谷幸喜はもともとこの漫画の愛読者で、2018年にNHKで「風雲児たち〜蘭学革命（れぼりゅうし）篇〜」と題しドラマ化。主演は歌舞伎俳優の片岡愛之助がつとめた。
翌年2019年に歌舞伎座にて「三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち」を上演。さらに2020年にはシネマ歌舞伎が公開。そして今年2022年、全国の映画館で再上映が決定した。

ギャグあり、ドラマあり、息をつく暇もない展開も魅力の本作。現代語なので歌舞伎初心者でも分かりやすい。今をときめく歌舞伎俳優たちの競演を、大スクリーンで楽しもう。

月イチ歌舞伎 2022
『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』
公開日｜8月12日（金）～18日（木）※東劇のみ9月1日（木）まで上映
上映館｜東劇ほか全国の映画館にて（詳しくはこちら）
料金｜一般2200円、学生・小人1500円
出演｜松本 幸四郎、市川 猿之助、片岡 愛之助、八嶋 智人、坂東 新悟、大谷 廣太郎、中村 種之助、市川 染五郎、市川 弘太郎（現・市川青虎）、中村 鶴松、片岡 松之助、市川 寿猿、澤村 宗之助、松本 錦吾、市川 男女蔵、市川 高麗蔵、坂東 竹三郎、坂東 彌十郎、松本 白鸚