TRADITION

坂東玉三郎と4人の花形俳優が舞う!
女方舞踊の大曲を、特別な演出で。
シネマ歌舞伎『京鹿子娘五人道成寺/二人椀久』

2022.1.1
坂東玉三郎と4人の花形俳優が舞う!<br>女方舞踊の大曲を、特別な演出で。<br> <small>シネマ歌舞伎『京鹿子娘五人道成寺/二人椀久』</small>
©岡本隆史

歌舞伎の舞台を映画館で楽しめる「シネマ歌舞伎」。その多彩な演目は、毎月1週間ずつ異なる作品を全国の映画館で上映する「月イチ歌舞伎」で楽しめる。

2022年1月の上映作品は、新年にぴったりの華やかな作品、『京鹿子娘五人道成寺(きょうかのこむすめごにんどうじょうじ)/二人椀久(ににんわんきゅう)』だ。
女方舞踊の大曲「京鹿子娘道成寺」を5人で舞う特別版『京鹿子娘五人道成寺』と、幻想的で情感豊かな舞踊劇『二人椀久』、2つの舞踊を二本立て。全国の映画館にて1月7日(金)から13日(木)まで上映される。観に行く前に、あらすじや作品背景を予習しておこう。

美しい女性の正体は…?!
スペクタクル舞踊「京鹿子娘道成寺」

©岡本隆史

舞台は桜の花が咲く紀州(和歌山県)の道成寺。所化(修行僧)たちは、鐘供養のために訪れた美しい白拍子(歌舞を生業とする遊女)の花子を、舞を舞うことを条件に女人禁制の寺に迎え入れる。恋する女心を多彩な舞いで表現し艶やかな踊りを披露する花子。しかしだんだんと形相が変わり、ついには蛇体となって真の姿を現す。実は、花子は叶わぬ恋の恨みから僧安珍を焼き殺した清姫の亡霊。かつて道成寺の鐘に隠れた安珍を鐘ごと焼き殺し、自らも命を落とした清姫は、恋の邪魔をした鐘を恨んで姿を現したのだった。

道成寺に伝わる「安珍清姫伝説」を題材とした舞踊は数多く、「京鹿子娘道成寺」も能の「道成寺」を歌舞伎に取り入れた「道成寺物」と呼ばれる作品群のひとつ。

見どころは、何といっても1回の公演でさまざまな舞踊を楽しめることだ。幕開けは、もとの能「道成寺」の影響を受け厳かな雰囲気。ところが軽やかな三味線の音と共に雰囲気が一変し、花子の雰囲気もミステリアスな白拍子から可愛らしい町娘へと変わる。さらに手ぬぐい、鞨鼓(かっこ/身体につける小さな太鼓のこと)、笠など、さまざまなアイテムを用いて華やかに舞う。

さらに注目したいのが衣裳だ。舞踊の種類が変わると、花子が身にまとう着物も違う色に次々と替わっていく。舞台上での早替えもあり、視覚的にも楽しい趣向だ。

花子が5人!華やかな特別演出

©岡本隆史

「京鹿子娘道成寺」は、女方の俳優にとっては登竜門。体力と技術の両方が必要な、まさに女方舞踊の大曲だ。『京鹿子娘五人道成寺』には5人の女方俳優が花子役で登場する。

ひとりは、言わずと知れた最高峰の女方・坂東玉三郎。若くして実力を認められ、歌舞伎に対する深い造詣で歌舞伎界を長くけん引している重要無形文化財保持者(人間国宝)だ。後進の育成にも力を入れている。2022年1月には大阪松竹座で『坂東玉三郎 初春特別舞踊公演』の出演も予定している。

共演は4人の花形俳優。1人目は中村勘九郎。十八代目中村勘三郎の長男で、2012年(平成24年)六代目中村勘九郎を襲名。歌舞伎公演のみならず、映画やテレビなど幅広い分野でも活躍。2021年12月に放送されたNHKドラマ『忠臣蔵狂詩曲no.5 中村仲蔵出世階段』に主演し、大きな話題となった。普段は立役(男役)での出演が多いが、本作では女方として出演している。

2人目は中村七之助。先述の中村勘九郎の弟で、古典歌舞伎のみならず新作への出演も多い。2019年に上演された新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」にはクシャナ役で出演。さらに2021年1月に放送されたNHKドラマ『ライジング若冲~天才かく覚醒せり~』に主演するなど、歌舞伎ファンのすそ野を広げている。

3人目は中村梅枝。5代目中村時蔵の長男で、1994年に初舞台。以来数多くの舞台に出演。艶やかな遊女から初々しい町娘、高貴な姫など、さまざまな女方の役どころを務める期待の女方俳優だ。

4人目は中村児太郎。9代目中村福助の長男で、2000年に初舞台。2022年1月には新作歌舞伎『プペル~天明の護美人間~』の出演を控えている。

©岡本隆史

舞台映像の合間には、舞台裏での拵えの様子や、それぞれの俳優がどのような思いで舞台に立っているのかを語るインタビュー映像が。特別な映像演出が入るのもシネマ歌舞伎ならではの楽しみだ。

5人の花子が舞う「京鹿子娘五人道成寺」の煌びやかさ、絢爛な舞台を大スクリーンで楽しもう。

恋人への思いが見せる幻!
美しく儚い舞踊「二人椀久」

©岡本隆史

同時上映されるのは、坂東玉三郎と中村勘九郎による情感豊かな舞踊劇。

傾城松山太夫への恋しさのあまり心を乱した椀屋久兵衛は、まどろむうちに恋焦がれていた松山に再会。二人は連れ舞をし、しばしの逢瀬を楽しんだのも束の間、松山が姿を消してしまう。久兵衛はすべて幻だったと気づき、その場に泣き伏すのだった……。

©岡本隆史

まったく異なる趣向のふたつの舞踊を同時に楽しめる、新春にぴったりの贅沢な機会。ぜひ映画館へ足を運んでみてはいかがだろうか。

月イチ歌舞伎2021
『京鹿子娘五人道成寺/二人椀久』

上映期間|2022年1月7日(金)~1月13日(木)
上映館|東劇ほか全国の映画館にて(詳細はこちら
料金|一般2200円、学生・小人1500円
上映時間|123分
出演|坂東玉三郎、中村勘九郎、中村七之助、中村梅枝、中村児太郎ほか

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