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ととのえ親方・松尾大さんに聞く
「サウナツーリズム」の魅力
|サウナを通して地域をまるごと味わう

2022.4.21
ととのえ親方・松尾大さんに聞く<br>「サウナツーリズム」の魅力<br><small>|サウナを通して地域をまるごと味わう</small>

第3次ブームといわれ、ポップカルチャーとして定着したサウナはいま、各地でかつてない多様化と進化を見せている。そこで、ムーブメントを牽引する「ととのえ親方」松尾大さんの監修で、サウナを通して地域をまるごと味わう〝サ旅〟の魅力から、わざわざでも訪れたい全国の外せないサウナ施設まで紹介!

ととのえ親方
松尾大さん

実業家兼プロサウナー。2017年にプロサウナー専用ブランド「TTNE PRO SAUNNER」を立ち上げ、’19年には友人の医師らと「日本サウナ学会」を設立。TVやラジオ、雑誌、書籍など多方面でサウナの魅力を発信中

地域の文化も楽しめる!?
サウナは旅の目的地になる!

かつて「おじさんの聖地」だったサウナが、新しいフェーズを迎えている。数年前から先鋭的なクリエイターがサウナの魅力を発信し「サウナー」や「ととのう」といったキーワードが注目され、サウナに足を運ぶ若者や女性も急増した。そのブームをポップカルチャーに昇華させた仕掛け人の一人が「ととのえ親方」こと松尾大さんだ。ととのえ親方は、サウナの新しい楽しみ方の発信やサウナ専門ブランド「TTNE PRO SAUNNER」でのアパレル展開など、サウナにクリエイティブを取り入れ、各地で斬新な施設をプロデュースしている。

「日本は、温泉などの温浴施設は進化していますが、サウナだけはユニットバスのようにガラパゴス化していて画一的でした。もちろんトラディショナルなサウナにも魅力はありますが、いまは自分たちの活動も含め、デザイン性を取り入れたり、個性豊かなサウナが全国に生まれています。そういったサウナを通して地域の魅力を体感する〝サ旅〟は、ととのいながら風土や文化を知れる最高の体験。出掛けるなら、まさにいまです!」

<ととのえ親方に聞く、サ旅の魅力>

「フィンランドではサウナ後の女性が一番きれいになるといわれているほど美容効果も高い。よいサウナ体験は“全身美顔器”です」

サウナは“競わない”
環境を楽しむべし

サウナの本場・フィンランドをはじめドイツやロシア、さらにアリゾナの奥地でサウナを経験し、国内外のサウナに精通しているととのえ親方に、日本ならではのサウナの個性を聞いた。

「まず銭湯文化が根づいているから公共のサウナ施設が世界に類を見ないほど多い。しかも温泉や大浴場だけではなく、エンタメを楽しめる休憩室や美味しい食事処も併設されていて、ゲストが豊かな時間を過ごせるホスピタリティも高い。海外に行けば行くほど日本のサウナのクオリティのすごさを痛感しますね」

その文化は進化を遂げ、各地にサウナビルダーやオーナーの個性が色濃く出た新しいサウナ施設が誕生している。日々、そういった新世代から王道まで幅広く全国のサウナをめぐるととのえ親方にとって〝サ旅〟の魅力とは。

「日本ならではの四季やその地域の郷土料理が楽しめるのはもちろん、何より〝競わない〟のがいい。ゴルフやウィンタースポーツのようにうまい下手がないし、サウナ室に長くいたほうが偉いとかもない。それに屋内施設だから、旅の目的としてどんな天候でも〝外さない〟。雲海が見られなかった、ダイビングでイルカに会えなかったとかでガッカリすることもない。サウナは、ただ〝外さないアイツ〟が待ってくれているから。大掛かりな道具も不要でリーズナブルに楽しめる。誰も置いていかない最高の旅なんです!」

郷に入っては郷に従え
ローカルのルール

目を輝かせてサ旅愛を語るととのえ親方によると、全国各地のサウナにはローカルルールがあり、はじめて訪れた際はそれらを守りながら味わうことで、よりサ旅は楽しくなるとか。

「たとえば北海道の『天然温泉あしべ屯田』は、タオル交換を知らせる音楽のイントロが鳴るやいなや、常連のおじいちゃんたちがバーッと立ってタオルをまとめたり(笑)、スナック感あふれる岐阜県の老舗『大垣サウナ』は夫婦で営んでいて、ママと常連が夜に麻雀をしていたり。それぞれの地サウナに根づいた文化も魅力のひとつ」

さらにローカルでは、その土地の資源を利用しながらサウナで街おこしをしているエリアも増えてきている。

「大分県で温泉のない豊後大野市は『サウナのまち』宣言をして、清流で楽しむ川サウナや鍾乳洞サウナ、小屋サウナなど地元の豊かな自然を生かしたアウトドアサウナを提案。また、サウナに最適な自然素材が豊富な北海道の十勝では『十勝サ国プロジェクト』を立ち上げて、15施設でロウリュが楽しめる日帰り入浴パスポートをつくっていたり、その地方にしかないサウナをホッピングするのも楽しいですよ。サウナを中心にローカルの文化や風土を深く体験するサウナツーリズムの時代は、確実にきています!」

<サ旅先で使いたいサウナー用語10選>

【下茹で&湯通し】
サウナ室に入る前に湯に浸かること。体感が温まっていれば発汗もスムーズになり、ととのいやすくなるという

【水通し】
サウナ前に水風呂から入ること。身体をしっかり冷やしてから入ることで、下茹でとは異なるサウナ効果が感じられる

【グルシン】
10℃未満の水風呂のこと。シングルとも呼ばれる。「低ければいいというわけではないですが、ひと桁の水風呂はレアです」

【ロウリュ】
熱したサウナストーンにアロマ水などをかけて水蒸気を発生させること。体感温度を上げて発汗作用を促進する効果がある

【ウォーリュ】
サウナ室の「壁=ウォール」にロウリュすること。北海道・十勝の一部施設で体験することができる。ととのえ親方が命名した

【アウフグース】
ロウリュで立ち上った蒸気をタオルであおぎ熱風を送ること。本場ドイツでは演舞のように行う。日本では「熱波」と呼ぶ施設もある

【羽衣】
サウナの後、水風呂に入った際に、肌につく水が温められて膜ができたように感じること。冷たさが中和され心地よい感覚へと誘う

【あまみ】
サウナ、水風呂の後、皮膚にできる赤い斑点。もともとは富山の方言で、医学的には動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう)の状態

【ととのう】
サウナ→水風呂→休憩のセットを繰り返すことで交感神経から副交感神経が優位になり、トランス状態に入ること

【サ飯】
サウナ後に食べる食事のこと。サウナ後は血流がよくなり、感覚が研ぎ澄まされているため普段より美味しく感じられるとか

 

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text: Ryosuke Fujitani photo: Akio Nakamura
Discover Japan 2022年4月号「身体と心をととのえる春旅へ。」

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