阿寒湖、四季折々の魅力。
大自然とともにアイヌ文化に触れる
四季の美をこれほどダイナミックに体感できる土地は、日本中を見渡してもそう多くはないだろう。
阿寒湖温泉は、東京からも意外と身近な旅先だ。羽田空港からたんちょう釧路空港へ飛び、約1時間バスに揺られれば、阿寒湖温泉にたどり着く。阿寒湖畔の大自然が間近というコンパクトな街には温泉宿が建ち並ぶ。そんな街のシンボルが、阿寒湖アイヌコタンだ。アイヌの人々が営むクラフトショップやシアターなどが軒を連ね、アイヌ文化を旅の中で身近に感じることができる。登山やカヌーなどアクティビティを楽しむ人、アクセスのよさから道東方面への旅の拠点とする人など、阿寒湖温泉は旅人の多様なニーズにも応えてくれる、懐の深い街だ。
そんな「アイヌ・カルチャー」をクリエイティブな二人が季節ごとに滞在し、旅の中の出合いや発見をウェブ記事で紹介しているので、滞在者の視点越しに阿寒湖温泉の魅力を見つめてほしい。
阿寒湖温泉を訪ねた二人
鈴木優香(すずき・ゆか)
東京藝術大学大学院修了後、商品デザイナーとしてアウトドアメーカーに勤務。2016年より、山で見た景色をハンカチに仕立ててゆくプロジェクト「MOUNTAIN COLLECTOR」をスタート。現在は山と旅をライフワークとしながら、写真・デザイン・執筆などを通して表現活動を続ける
大石始(おおいし・はじめ)
音楽や祭りなど各地の地域文化を追うライター。旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」主宰。主な著書に『盆踊りの戦後史』(筑摩書房)、『奥東京人に会いに行く』(晶文社)、『ニッポンのマツリズム』(アルテスパプリッシング)、『ニッポン大音頭時代』(河出書房新社)など。現在、屋久島古謡に関する著作を執筆中
〈第1回〉
大自然とアイヌ文化に出合う夏
国の特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」が生育する阿寒湖の夏は、7月から8月の1ヶ月間と非常に短い。その短い夏をいかに楽しむか、写真家の鈴木優香さん、ライターの大石始さんが阿寒湖温泉を訪れた。阿寒湖畔の自然、新たなアイヌ文化やアクティビティを通じて二人が発見した色とりどりな夏の阿寒湖温泉とは……?
〈第2回〉
秋は祭りや儀式で
阿寒湖をより深く体験
空と森の青さで染め上げられた夏の阿寒湖から、木々が黄色や赤色に色づくと阿寒湖アイヌコタンの秋の風物詩「まりも祭り」が始まる。1950年から続く祭りと伝統の儀式「カムイノミ」の背景やアイヌの精神、アイヌコタンにまつわるアイヌのものづくりや歌など、アイヌ文化をよりディープに紹介。
〈第3回〉
冬の阿寒湖でアイヌ文化と
豊かな風土にふれる
冬の北海道は一面雪景色が広がる。アイヌ文化の担い手たちと彼らに共鳴する和人アーティストたちがコラボレーションするウタサ祭りを軸に、氷上アクティビティや、北海道立北方民族博物館、流氷クルーズなど真冬の魅力を紹介。
ワーケーションにも最適!
今回の滞在企画を通して感じた
阿寒湖温泉の魅力
最後に、今回の滞在企画を通して感じたワーケーション先としての阿寒湖温泉の魅力を二人に語ってもらった。
写真家/鈴木優香
夏、秋、冬と3度の阿寒湖温泉旅でしたが、季節ごとにがらりと雰囲気が変わることに驚きました。やはり続けて訪問したからこそ、この場所の魅力を肌で感じることができたのだなと思います。
冬の滞在では、ワカサギ釣り、早朝の湖上散策、スキーなどのアクティビティを通して、特に雪の美しさに感動。雪の結晶が降り積もっていく様子は、ずっと見ていられるような美しさでした。また、冬は網走にも足を延ばしました。北方民族博物館でさまざまな民族の文化を学びながら、その中でのアイヌ文化の位置付けなど新たな発見がありました。はじめて見た流氷も、いまの時期にここでしか見られないという特別感があり、とても印象に残る旅になりました。ウタサ祭りの熱気も未だ冷めやらずです。
滞在中の私の投稿を見て、阿寒湖温泉へ旅行をしましたと報告してくれたフォロワーの方もいました。関東在住のため北海道は遠いイメージがありましたが、阿寒湖温泉は空港からのアクセスも良いことがわかったので、友人にも積極的におすすめしたいと思っています。個人的には、次回はアイスバブルが見られる時期に再訪したいです。
ライター/大石始
季節ごとのコントラストがとても鮮やかで、本当に美しい場所なんだと訪れるたびに感激していました。そして、そうした美しさを前田光子さん(秋の滞在記参照)や阿寒湖アイヌコタンの人々が大切に守ってきたことを知り、阿寒湖に対する愛情が深まりました。
冬の阿寒湖を訪れるのは2回目ですが、やはり特別な魅力のある季節だと感じました。早朝の湖畔ツアーもとても楽しかったです。夏場のカヌーでも感じましたが、東京からやって来ると自然体験ツアーは感動が大きく、強い印象が残っています。
個人的に寒い冬は集中力が高まることもあり、今回はワーケーションの時間を利用してだいぶ仕事を進めることができました。東京とは比べものにならないほど雑音が少なく、集中力が高まる阿寒湖畔の環境はやはりワーケーションに向いていると再認識しました。
また、網走まで足を伸ばすことができたのが自分としても大きかったです。北方民族博物館を訪れたことで、アイヌが北方に住むさまざまな民族と風習や信仰などを共有していることが理解できました。阿寒湖アイヌコタンのアイヌ文化を知る上でも貴重な体験になりました。