鮭とともにある歴史と食文化が残る
新潟・村上の鮭文化を訪ねて
【第三章】

新潟県村上市の城下町には、1000年続く鮭文化がいまも残されている。三面川の鮭漁と人工ふ化施設、戦後に廃れかけた鮭文化を守り継ぐ人たち、そして余すところなく美味しくいただく鮭料理。鮭のことを「イヨボヤ」と慕う村上では、鮭がいとおしく思えてきます。
全公開! 料亭 能登新の
鮭料理のフルコース
鮭を一尾まるごとさまざまに活用した料理を会席仕立てで。伝統と革新の味を楽しめ、日本酒が進むこと間違いなし。3万円(税別、10〜12月限定、要予約)

鮭の白子を加えてつくる豆腐にヒレ出汁のあんをかけユズ釜で。ヒレ出汁とは鮭のヒレを炙り、出汁に加えて香りと旨みを移したもの

鼻先の軟骨は氷のように透き通り、氷頭と呼ばれる。それを薄く切って甘酢で調味した大根おろしと和え、腹子を加えたもの

どんびことは鮭の心臓のこと。心臓がどんびこどんびこと打つことによる名前。三面川鮭産漁業協同組合の協力があってできる一品

オス鮭の血合いの塩辛。こちらは15年もので猛烈な旨みがある。血合いを塩蔵熟成させたもので、直前に塩抜きし、大根を添えて

氷頭を軟らかく煮ると、皮のところがすっぽんのエンペラに似ることからの名。酒、みりん、醤油、ショウガなどでトロトロに煮る

カゲとは鮭のエラのこと。丁寧に洗い、真っ白になるまで水にさらしてサクッと揚げたもの。身とも皮とも異なる食感を楽しめる

鮭の身をトンカチでたたいてペラペラに延ばし、片栗粉をまぶして揚げたもの。前菜の一品として、皮とエラのせんべいとともに

卵皮煮(こかわに)とは、鮭のすり身に腹子と刻んだ皮を加えたしんじょうをお吸いものに入れた伝統料理。半生の腹子の食感が絶妙

いったん凍らせた鮭の身を昆布で軽く締め、さっと湯引きした一品。ポン酢と紅葉おろしでいただく

前菜の一品。その日の朝に捕れた鮮度のいい鮭の白子をさっと湯引いて。ポン酢と紅葉おろしで、とろける白子をさっぱりと

お造りの後に出される蒸し物。山形との県境に位置する山間地の大毎(おおごと)で、焼畑農法でつくられる紅カブを用いている

氷頭(鼻先の軟骨)をやや厚めに切り、塩をして、片栗粉をまぶしてからりと二度揚げに。噛み締めると厚みのある食感がおもしろい

雅味煮(がじに)は村上の郷土料理。鮭の身を、この時期はキノコや大根、セリなどと煮て、湯がいた腹子を天盛りにして

村上を代表する鮭料理。塩を引いた鮭を寒風に当て、1週間から10日、軒先で干した鮭を焼いて。身が締まり、旨みが濃縮している

塩引き鮭の身、氷頭、腹子、ユズ、皮を酢洗いして酢飯と合わせ、笹で挟み、桶に何段も重ねて3週間ほど熟成させたもの

前菜の一品で、鮭の肝臓や腸を甘辛く煮付けたもの。なわたとは鮭の内臓のこと。村上では、辛煮や汁にして内臓も美味しく食べる

生鮭の身をサク取りし、昆布で巻き、味つけをして昆布が軟らかくなるまでコトコト煮たもの。正月料理の一品でもある

鮮度のよいオスの白子を使用。みりんや酒などで調味した出汁にショウガを利かせた煮汁で煮含める。日本酒が進む一品

塩を引いた鮭をまる1年軒先で干したもの。長熟による熟成香をまとう。身と皮それぞれを薄くスライスし、酒に浸して食べる

刺身などで引いた皮も無駄なく使う。塩をして揚げると皮がくるりと反る。バリッとした食感とにじみ出る旨みは鮭の皮ならでは

昆布締めにした鮭に、土佐酢のジュレをかけ、食用菊を散らしてユズの香りをつけたひと皿。鮭の刺身に昆布と出汁の旨みが加わる

凍らせた鮭の身を、半分凍った状態で皮目をこんがり炙ったもの。香ばしい皮と軟らかな身のコントラストがいい

お造りの一品として。凍らせた鮭の身をスライスし、半分凍った状態で、シャリシャリとした食感も楽しむ

鮭の皮目に油をかけながら焼き、旨みをつけていく松笠焼きの手法で。皮目はパリッ、身はふっくら。仕上げに杉の香りをつけている

焼物として、杉板焼きとの盛り合わせで出される。鮭のハラミを味噌漬けにしたもので、香り高い杉板焼きに対し、濃厚な味わい

鮭のしんじょうと地元の原木シイタケを二身揚げに。鮭のふわふわ食感とシイタケの旨みを同時に味わえる。松葉は茶蕎麦で表現

鮭のハラスを白焼きにし、熱いうちに特製の醤油だれに漬け込んだもの。江戸時代から保存食としてつくられてきた伝統料理のひとつ

鮭ほお肉を軟らかく煮、ユズ味噌で練り上げた田楽味噌を、この時期は出汁巻き玉子の白扇揚げにのせて。夏はナスと合わせることも

腹子の醤油漬けを土鍋で炊き上げたご飯とともに。お米は岩船産コシヒカリ。腹子は味噌漬けもあり、ねっとりして濃厚な味わい
text: Yukie Masumoto photo: Kenji Itano
Discover Japan 2022年2月号「美味しい魚の基本」