尾道「LOG」世界的建築集団スタジオ・ムンバイが手掛けた新空間~後編~
2018年12月、広島県は尾道にホテルやカフェギャラリーなどを有するひとつの複合施設がオープンしました。世界的に注目されるインドの建築集団「スタジオ・ムンバイ」が、昭和38年に建てられたアパートメントをどうよみがえらせるのか。「尾道の山の手にあかりを灯す」多目的空間の全貌を前後編記事にて一挙公開。
LOGから見えてくる
「場づくり」のヒント
そもそもLOGは、遊休不動産の利活用を目的に発足したプロジェクトだ。
LOGという人の交流する場をつくることによって施工上の雇用、運営上の雇用を生み出した。魅力的な施設の誕生は、観光客だけでなく、働き口を求めて都市部へ移った若手のUターンや、建築に興味をもつクリエイターのIターン促進にもつながるだろう。
LOGのプロジェクトには、熟練の職人たちとチームを組んで進行させる「スタジオ・ムンバイ」の方針に倣い、多くのクリエイターが参加。空間をつくる上で多様性を大事にし、コミュニケーションを重ねて変わっていくことを楽しむビジョイさんのスタイルは、国やバックグラウンドが異なっていても“尾道らしさ”をつくり上げることができるという成功例を示した。また、オリジナルで制作した家具やうつわを一般に販売することにより、国内外に新しい雇用を生み出す可能性も見出している。
宿泊施設ではなく、宿泊可能な多目的空間をつくるというコンセプトは、日本が抱える課題を解決する上で大きなヒントになるかもしれない。
LOGは人のつながりでできている
「スタジオ・ムンバイ」の描くLOGを具現化するため、多くの職人が集結。作家や料理家の面々を以下で紹介。
スタジオ・ムンバイ
代表 ビジョイ・ジェインさん
1965年、インド・ムンバイ生まれ。ワシントン大学で修士号取得。ロサンゼルスとロンドンで実務経験を積み、1995年「スタジオ・ムンバイ」を設立。小津映画『東京物語』が好きで、プロジェクト前から尾道を知る。鑑賞から13年後に尾道に足を運び、街は変わっても自然や文化が守られていることを実感。映画と実際の尾道がレイヤーで重なり、ダブルレンズで見ているような感覚に陥ったという。
コーチ・カズノリさん
岡山の家具木工作家。漆と弁柄で塗装した、カフェバーのハイチェアー・スツールを制作。
KITA WORKS
カフェバーのテーブル、ダイニングのチェスト、ショップの什器等を担当した岡山の家具作家。
京都 染司よしおか
染色家・吉岡幸雄さんによる草木や花などを使った植物染めの工房。クッションカバーなど。
インドの職人たち
椅子などさまざまな家具をオリジナルで制作。サンプルの制作・検証を繰り返し、製品化した。
ハタノワタルさん
和紙職人。手漉き和紙を使った客室の内装を担当。308号室はちぎり貼りで壁に表情を出した。
六車誠二建築設計事務所
若杉活用軸組工法に定評がある設計事務所。スタジオ・ムンバイの日本ブランチとして参画。
真木テキスタイルスタジオ
LOGのラグマットを制作。インドに構える工房はビジョイさんによる設計。
ムイネル・ケイト・ディニーン
ロンドンを拠点に活動するカラーアーティスト。壁色の検証を繰り返し114のレシピを作成。
細川亜衣さん 横山秀樹さん
料理監修は細川さん。ガラス作家の横山さんをはじめ、さまざまなうつわ作家が協力した。
地域ブランドの最先端・尾道のあゆみ
LOG以前から、魅力ある場づくりで全国的に注目される尾道。2014年に開業したONOMICHI U2は、瀬戸内しまなみ海道を利用するサイクリング客向けのホテルを擁する複合施設として誕生。現在では地元客の利用も増加。特に飲食店のランチ営業は地元客が占め、閑散としていた海側に新しい流れをつくった。場が雇用を増やし、満足度の高い体験の提供によって、さらなる人を呼ぶという好循環を持続させている。
読了ライン
LOG
住所|広島県尾道市東土堂町11-12
Tel|0848-24-6669
料金|1泊3万5000円〜(素泊まり、税別・サ込、客室料金。最大4名利用可)
カード|AMEX、DINERS、JCB、MASTER、VISAほか
チェックイン|15:00 チェックアウト|11:00
アクセス|車/山陽自動車道尾道IC福山西ICから15分
電車/JR尾道駅からタクシーで5分、またはJR新尾道駅からタクシーで15分
施設|ダイニング、プライベートダイニング、カフェ&バー、ショップ、ギャラリー、ライブラリー インターネット|Wi-Fi
https://l-og.jp
※ダイニングでの朝食・夕食は宿泊者限定
※営業時間は9:00〜23:00(施設によって異なる)
text : Akiko Yamamoto photo : Noriyuki Araki, Fuminari Yoshitsugu
Discover Japan 2019年3月号『暮しが仕事。仕事が暮し。』
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