ART

神勝寺『洸庭』
名和晃平│SANDWICHが挑む 禅と庭のミュージアム

2017.1.20

地域の禅寺として信仰を集める神勝寺が、「禅と庭のミュージアム」として2016年9月にリニューアルオープンしました。目玉は、アートパビリオン『洸庭』。中根史郎氏作庭の日本庭園に浮かんだこけら葺きの建築は、なめらかな曲線を描くそのフォルムが美しく、中に入ると名和晃平氏とヴィジュアルデザインスタジオ・WOWによるインスタレーションが展開されています。今回は、そのアートパビリオン『洸庭』の魅力に迫ります。

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Photo : Nobutada OMOTE | SANDWICH
名和晃平(なわ・こうへい)
1975年大阪府生まれ。彫刻家。京都造形芸術大学芸術大学院美術研究科教授。2009年、京都に創作のためのプラットフォーム「SANDWICH」を立ち上げる。2015年PACE LONDONで個展を開催。さまざまな素材とテクノロジーを駆使して、彫刻の新たな可能性を拡げている。

広島で体感する禅の宇宙

天心山神勝寺は、1965(昭和40)年、益州宗進禅師(臨済宗建仁寺派第7代管長)に深く帰依した開基・神原秀夫が禅師を開山に招請して建立された、臨済宗建仁寺派の特例地寺院です。近年、禅の世界観をより多くの人に知ってほしいと約5年の歳月をかけて大改修を進め、2016年9月11日に「神勝寺 禅と庭のミュージアム」としてオープンしました。ここでは、日本庭園や建築、美術、食とあらゆる禅の要素を作品として楽しむことができます。

荒波をしなやかに乗り越え 禅の心を運ぶ船

中でも最も注目を集めているのが、アートパビリオン『洸庭』です。ゴツゴツとした大きな石が敷き詰められた上には、鉄柱で支えられた、なだらかな曲面からなるこけら葺ぶきの巨大な建物が、浮遊しているかのように建っています。小さな扉から中に入ると、そこにはただただ暗闇が広がっており、感覚を研ぎ澄ませ、ようやく暗さに順応できた頃、目の前でかすかにゆらめく水面を感じることができます。

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photo:Shungo Takeda

このインスタレーションと建築の企画・設計を担当したのは、彫刻家の名和晃平さんが率いるクリエイティブ・プラットフォーム「SANDWICH」です。小学校のプールがまるごと入るほどの巨大な作品は、彼らにとってもはじめての経験だといいます。

「禅の精神を知ったとき、自分が創作に集中したり、造形をしているときの感覚とどこか似ているのかもしれないと感じました。暗闇を表現するため建物内部に自然光は一切入りません」と名和さん。

神勝寺が造船ゆかりの寺ということで舟を、建物の下に敷かれた石は海原を表現しています。浮遊しながら進む舟は、現代のあらゆる障害をしなやかに乗り越えることの大切さを表現しているかのようです。

洸庭から望む名園に禅の心を読む

大海の波をイメージさせる舟型の建物の下に敷かれた石。プラントハンター・西畠清順氏によるソテツワラビは、生き物にも見えて想像をかき立てます。

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作品の向こうには作庭家・中根史郎氏が手掛けた日本庭園が広がります。

暗闇の奥は、静かなる無の世界

小さな扉から吸い込まれるように中に入ると、暗闇が待っています。そこは、一度に16人までしか入れない贅沢な空間。周囲の存在を忘れて静かに作品の世界に浸ることができます。

 

今回ご紹介した『洸庭』をはじめ、アート、庭園、建築、食など、さまざまな視点から禅の世界を体感できる「神勝寺 禅と庭のミュージアム」。ぜひ足を運んでみては?

神勝寺 禅と庭のミュージアム
住所|広島県福山市沼隈町大字上山南91
拝観時間|9:00 ~ 17:00(最終受付16:30)
拝観料|一般1200円、高校生以上900円、中学生500円、小学生以下無料
Tel|084-988-1111(寺務所)
http://szmg.jp

text:Akiko Yamashita, photo:Masahide Nakamura


 

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