「ふふ 日光」東照宮の袂で、由緒正しき土地の気品をまとう湯へ。
「ふふ 日光」が佇む場所には、知れば自然に襟を正すような、奥深い文化や伝統を携える脈々と継がれる歴史物語が存在します。特別ないわれをあえて唱えずとも、空気感は確かにほかとは違っています。
モダンな優雅さを兼ね備えた、
格式ある空間
世界遺産の町・日光には「日光東照宮」が鎮座している。秋が速足で深まりゆく10月後半、街から中禅寺湖までのつづら折りの道“いろは坂”は、日本有数の絶景を魅せる紅葉のために、狂喜乱舞する観光客の車で埋め尽くされるのだ。そして、かつて多くの宰相や武士、天皇がこの地に惹かれ足跡を残した由緒ある土地でもある。いまなお自然豊かな環境は清爽な空気に包まれ、まばゆい姿に修復された日光東照宮とともに確実にオーラを発し続けている。
私たちが訪れた初秋は、まだ紅葉のはじまりの頃だった。東照宮にも近く、かつて大正天皇の夏の御用邸だった敷地に隣接した地を訪れた。ここには日光田母沢御用邸記念公園も整備され、まさにその公園に寄り添うように、2020年10月2日、「ふふ 日光」が開業した。
田母沢は東照宮にも近く、前述のように、紅葉の美しさで名高い“いろは坂”を上る少し手前の一角に広がるエリアである。「ふふ 日光」が建つこの地は、由緒ある土地柄として知られ、澄んだ水をたたえる清流があり、東照宮とともに神聖な空気に包まれている。100年の歴史から大正期の姿によみがえった田母沢御用邸や記念公園周辺は、まるでそれらを守るかのように、見事な日光杉が天空に向かってまっすぐに伸びる森に包まれている。海抜634m、東照宮と同じ海抜という田母沢にも、土地が醸すDignity(尊厳)が感じられる。この環境に静かに佇む「ふふ 日光」の姿は、豪奢な邸宅のように見える。ロビーには心鎮まるクラシック音楽が流れ、“温泉宿”というにはあまりにモダンなリゾートである。
すべての部屋に自家源泉から温泉が引かれ、贅沢な湯船にゆったりと浸かり、温泉ざんまいも、しばし非日常の癒しの時も好きなだけ……。客室は全24室、すべてが異なる意匠のスイートルームである。日本家屋の建築美を残し、同時に、近代化へと移る明治・大正期、先人たちが西洋から学んだ快適さや贅沢な調度品もアンティークとしてしつらえ、また、地元産の大谷石や杉材、日光松などが巧みに使われている。まさに「East meets West」の融合美が「ふふ 日光」の魅力なのだ。
和と洋を融合させた、
優雅な晩餐
すべての「ふふ」を訪れてみると、どこも食に対して並々ならぬ力を注いでいるのがわかってくる。もともと飲食にはじまる運営会社であることへの誇りと自信は、「一つとして同じものはない」と言い切るラグジュアリーホテルのコンセプトにも現れている。それぞれの土地に纏わる伝統や食文化を学び、「ふふ」としてつくられる斬新な料理が、毎回、私たちを大いに驚かせ歓ばせてくれるのだ。
オリジナリティに富んだ食事は、「ふふ 日光」のレストランでも同様だ。ここでは、日本料理と鉄板焼きでゲストをもてなしている。こだわりは「二十四節気」と「七十二侯」という日本古来の旧暦で季節をとらえ、豊かな季節感を繊細に料理に表していることだ。そこには、人々の日常生活の多幸を祈念する気持ちを食に表現し“徳を積む”基本がある。
日本料理「節中」では、数々の雅な世界観を表現するうつわを用いて、周辺の田母沢や東照宮など日光を感じて欲しいと、「ふふ 日光」独自の懐石料理が提供される。ここでまず驚かされたのは、数々の華麗な“うつわ”の選び方である。思わず私たちが声を上げた絢爛なうつわは、料理を引き立て、また確かに料理もうつわを見事に引き立てていた。
うつわと料理のからみ合いは、日光東照宮の黄金に輝く建物を想わせ、日光の歴史物語に誘われるようであった。食材も全国から厳選される四季折々の旬や、栃木の名産品、さらに徳川家に献上されていたという雲丹、唐墨、海鼠腸という「日本三大珍味」も登場。それらが「世界三大珍味」のキャビア、フォアグラ、トリュフと饗宴する贅沢な料理が供される。
朝食にも栃木に所縁のある食材が登場する。湯葉、納豆、もろみ、漬物、焼き魚、たっぷり具が入った味噌鍋など、栃木メイドの名産品がずらり。肩の力を抜いていただく和朝食が元気な一日のはじまりとなる。
厳しい冬を迎える土地柄、ラウンジには暖炉が点され、温もりが心地いい。手摘みのオリジナル・ブレンドティーやハーブティーのほか、清楚なアフタヌーンティーが楽しめる。まさにリゾートとして貴重な“静”の喜びに包まれるひとときだ。
ふふ 日光
住所|栃木県日光市本町1573-8
Tel|0288-25-5122
客室数|24室
料金|1泊2食付3万8650円〜(税・サ・入湯税込)
カード|AMEX、Diners、DC、JCB、UC、VISAなど
IN|15:00 OUT|11:00
夕食|日本料理または鉄板焼き(レストラン)
朝食|和食(レストラン)
アクセス|車/東北自動車道宇都宮ICから約30分 電車/東武日光駅またはJR日光駅からタクシーで約10分
施設|レストラン、ラウンジ、大浴場、ショップ
text: Kyoko Sekine photo: Atsushi Yamahira
2021年2月号「最先端のホテルへ」