美しい所作 – 姿勢
あらゆる動作の基本となるのが正しい姿勢。それが身についていないと、無駄のない美しい動作はできません。鎌倉、室町幕府の礎をつくった礼法である小笠原流礼法では正しい姿勢を「胴づくり」と呼びます。姿勢を正すというと背筋を伸ばそうとしてしまいがちですが、ポイントは腰。胴づくりの起源は弓馬の姿勢のため、弓を引く上体を支える腰をいかに安定させるかが重要なのです。さらに「立つ」、「正座」、「椅子に座る」の項目で、正しい姿勢のポイントを見ていきましょう。
教えてくれた人
小笠原 敬承斎(おがさわら・けいしょうさい)
東京都生まれ。小笠原忠統前宗家(小笠原惣領家32世)の実姉・小笠原日映門跡の真孫。聖心女子専門学校卒業。英国留学の後、副宗家を経て、平成8年に小笠原流礼法宗家に就任。礼法の普及のため、各地で指導・講演、執筆活動を行っている
https://www.ogasawararyu-reihou.com
「胴はただ常に立ちたる姿にてかず掛からず反らずまず」
=正しい姿勢とは、身体が前後左右に傾かず、無理のない自然な状態である。
立つ
自然でさりげない立ち姿は、言葉を発しなくても、相手に対する思いを体現できる。ポイントは背筋を伸ばそうと胸を張らず、背骨を腰にさすようなイメージで腰を据えること。そうすれば肩や首に余計な力が入らず、堅苦しい印象にならない。
姿勢づくりのポイント
・ 髪の毛を上から引っ張られているようなイメージで、
・ 下腹部に力を入れ、背骨を腰に突きさす感じで背筋を伸ばす
・ 重心は頭の重さが土踏まずに落ちるようなイメージで
・ 手は膨らみをもたせて指を揃え、腿にハの字に置く
・ 男性はつま先を少し開き、女性は合わせる
座る ~正座~
すぐ立ち上がれる片膝を立てた姿勢とは違い、相手に敵意がないことを示していたのが正座。後ろにもたれると美しくなく、足もしびれるので、前方に体重が乗るのがベスト。
正座のポイント
・ 立った姿勢と同じように、腰から上をまっすぐに伸ばす
・ かかとに全体重が乗らないようにする
・ 膝元は、男性は握りこぶしひとつ分開け、女性は合わせる
・ 上体が前方に傾かないように腰を沈める
座布団への座り方
座布団は、お客に心地よく過ごしていただきたいという、心遣いから出すもの。足で踏みつけたり、勝手に位置を変えて移動させたりすると、その気持ちを無にしてしまう。座るまでも流れるような美しさを心がけたい。
横から入る場合
後ろから入る場合
座る ~跪座~
文字通りひざまずいて座ること。座る、立つの動作の間には必ずこのかたちが入る。正座で足がしびれたときもいったん跪座になり、しびれがおさまるのを待つのもよい。
方向転換
座布団への出入り、あるいは座布団の中心からずれてしまったときのために、方向転換をマスターしよう。比較的簡単な両手を横について行う回り方を紹介。
座る ~椅子に座る~
椅子に座った姿勢も押さえるべきポイントは正座と同じ。また、主賓や目上の人が腰かけてから座る、訪問先の勧めがあってから座るといった基本的な配慮も気をつけたい。
椅子に座る際のポイント
・ 椅子に座るときも、立つときも、下座方向から行うのが
・ 基本。同席者がいれば、相手から遠い側から行う
・ 1、2、3のリズムで、自然な流れを心がける
・ 背もたれにもたれかからず、浅めに腰かける
椅子に座るまで
美しい所作
所作の基本3種 1/6公開予定
姿勢
礼 1/4公開予定
食事 1/5公開予定
text:Ayano Nomizu photo:Akito Ochiai
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