旅館のマナーを知っておこう!
滞在時に知っておくと便利な基礎知識
日本旅館に泊まり慣れていないと、どう振る舞ったらいいかわからず、緊張してしまうことも。せっかくの滞在なのだから、落ち着いて楽しみたいもの。無意識にやってしまう実は美しくない所作や、会席料理コースの基本的な流れ、食事の所作、旅館の建築やしつらいの名称について、ちょっと知っておくだけでためになる基本知識を伝授します。
ついついやっていませんか?宿でのマナーNG集
【玄関】
靴を後ろ向きに脱ぐ
靴を後ろ向きに脱ぐと、迎えてくれた相手に尻を見せてしまうため品がない。この場合、正面を向いたまま静かに靴を脱ぎ、玄関に上がってから自分で靴を反対側に向けるのが正しい。
【和室】
敷居や畳の縁を踏む
敷居は家の象徴。畳の縁は家の格式を表している。それを踏むことは失礼な行為にあたる。旅館に限らず、和室での基本的な振る舞いのマナーとして知っておきたい
【廊下】
共有スペースを浴衣で歩く
浴衣のみで部屋の外を歩くのはだらしなく見えてしまう。部屋を出る際は備え付けの半纏を着用すること。リラックスしつつも、きちんとした身なりを心掛けたい。
知っておきたい献立の流れの基本
意外と知らない、基本的な会席料理の流れを押さえておこう。
【先付】
まず最初に出されるひと品。季節を感じさせてくれる軽い酒肴で、のちに続く料理への期待を高めてくれる。
【向付】
一般的には、魚介類をもちいる。お造りにしたり、なますや昆布締めにするなどして、ひと手間加えた品が盛られる。
【椀盛】
汁もの。献立の中でもひときわ季節感を演出するひと品。出汁の取り方や椀種の選択など、料理人のセンスが問われる料理とされる。
【八寸】
もともと八寸角の杉の盆に盛り付けられることから名づけられた。少しずつ山海の珍味が、美しく盛り合わされる。
【焚合】
それぞれ別々に煮付けた季節の食材を、盛り合わせたひと品。季節ごとの食材の出合いを愉しみたい。この組み合わせ方にも力量が出る。
【焼物】
海や川の魚を塩焼きや幽庵焼きなどにしたもの。魚だけではなくタケノコやナスなどの野菜や肉が用いられることも。
【蒸物】
茶碗蒸しや蕪蒸し、薯蕷(じょううよ)蒸し、マツタケの土瓶蒸しなど、蒸すことで、素材のうまみを閉じ込めた温かい料理。
【酢物】
魚介類や野菜、乾物を三杯酢などを使って和えたもの。献立の最後のほうに供され、箸休め、口を清める意味合いもある。
【留椀・御飯・香物】
酒と料理をひととおり楽しんだ後に供される味噌汁、ご飯、香の物。留椀(止め椀)の名のとおり、料理が終わったことを示す。
【果物】
料理のうつわがすべて下げられたあとに出てくるいわばデザート。季節の果物だけでなく、アイスなどと盛り合わせて供される。
ついついやりがち!実は恥ずかしい食事の所作
【箸の巻紙をちぎる】
絶対にダメというわけではないが、あまり美しくない。箸の片方をスライドさせて留め紙をゆるめれば、きれいに外せる
【うつわを引きずる】
折敷の表面は漆塗り等が施されており、傷つきやすい。陶器や磁器の裏側はザラザラになっているため、引きずると折敷に傷が入ってしまう
【手盆で食べる】
汁や醤油がこぼれそうなとき、つい手を添えてしまいがちだが、これはやってはいけない作法の代表例。うつわを持つのが正しい
【魚をひっくり返して食べる】
魚をひっくり返すのはNG。上身を食べた後、頭を左手で押さえ中骨と下身の間に箸を入れて骨を外す。骨を皿の向こう側に置き下身を食べる
【おしぼりでテーブルを拭く】
おしぼりは手を拭くためのもの。テーブルにこぼしたときは、台ふきをもらうか係りの人にふいてもらう
建築としつらえの用語集
日本旅館に泊まるときに、知っておくとより楽しめるのが建築やしつらいのこと。そこで、旅館の愉しみ方がグレードアップする、それぞれの呼び名や役割をご紹介!
【縁側】
日本建築特有の、建物の中と外をつなぐ中間的な板敷状のスペース。幅の広い縁側のことは広縁と呼ぶ。縁側の幅が約3尺なのに対し、広縁は4尺以上の幅のものをいう。
【沓脱石】
玄関や縁側などの上がり口に、履き物を脱ぐために設置した平らな石。室内から庭への出入りをしやすくする。空間に奥行きを与え、軒内を美しく見せる役割ももつ。
【衝立】
部屋を仕切ったり、目隠しとして使う調度品。実用的な目的はもちろん、装飾のために置かれることも。絵画が描かれるほか、彫刻が施される場合も。
旅館でのNGマナーや食事の所作、日本旅館の建築やしつらいなどは、ちょっと知っておくだけで、宿では緊張せずに堂々と振る舞うことができるだろう。旅慣れ感を出して、癒しの宿での滞在を無理なく愉しもう。
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