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大和の伝統野菜は未来をつくる地域資源

2018.11.10
<b>大和の伝統野菜は未来をつくる地域資源</b>
大和丸なすや、小しょうがなど、大和の伝統野菜に認定されているもののほか、縞ウリや数種の豆など、認定されていないものも多い

初代神武天皇が宮を造られ、日本建国の地とされている奈良県。連載《はじまりの奈良》では、日本のはじまりとも言える奈良にゆかりのものや日本文化について、その専門家に話を聞く。今回は奈良県の伝統野菜である「大和野菜」。長年大和野菜の研究を行い、地域資源としての活用を目指してきた三浦雅之さんに話を伺った。

奈良に伝わる伝統野菜を知ってもらおうとつくられたカルタ。「八条水菜」や「今市カブ」など、44種類の個性的な野菜が、みずみずしく描かれている。榎森彰子作「大和野菜のいろはカルタ」は、見ているだけでも楽しい

この「はじまりの奈良フォーラム」の主催者であり、「プロジェクト粟」の代表を務める三浦雅之さんは、23年前から、奈良における在来品種の調査・研究を行ってきた。その結果、現在では、「大和の伝統野菜」として、20品目の野菜が認定を受けている。

奈良では、1989年から伝統野菜の選定がはじめられ、2005年に最初の認定が行われた。当初は、伝統野菜として10品目、大和のこだわり野菜として5品目だけを認定。これらを総称して「大和野菜」と呼ばれるようになった。現在では、数度の追加認証を経て、伝統野菜は20品目を数える。

たとえば、全国に多数存在するアブラナ科の原種ともいえる「大和まな」。苦みが強く生食には向かないが、奈良漬けの材料としてつくられ続けている「大和三尺きゅうり」。もはや、生産者がたった一人になってしまった「軟白ずいき」などなど。

このような伝統野菜は、奈良だけでなく、京野菜や加賀野菜、江戸野菜など各地に存在する。しかも、その定義はそれぞれに異なっている。

奈良県における伝統野菜とは、県内で戦前から栽培され、地域の歴史・文化を受け継いだ独自の栽培方法で生産されており、味・香り・形態・来歴に特徴をもっていることと規定されている。しかし、実際には県内には、認定されていなくとも上記の特徴に合致する野菜はたくさん存在している。

扁平なかたちの実に、葉もつやつやで美味しい「今市かぶ」や、野迫川村でつくられてきた「野川きゅうり」、十津川村のめはり寿司をつくるために欠かせない「高菜」などなど。

「こうした在来作物を生産している方に、『なぜつくっているのか?』という質問をすると、必ずと言っていいほど『つくりやすいから』、あるいは『美味しいから』や『家族の誰かが好きだから』と答えます」と三浦さん。

これは、ひとつは各野菜の個性が土地の特徴に合致しているということ、そして、換金性よりも、嗜好性を重視した生産が行われてきたという証しである。

ちなみに、「はじまり」にはふたつの意味がある。ひとつは、まさにこの地で誕生したという意味の「発祥」、そして、はじめて伝わったという意味の「伝来」がある。そういう意味では、日本発祥の野菜というのは、ミツバ、ワサビ、ウド、セリ、フキ、アシタバの6種類だけといわれている。それ以外の野菜は、大陸から伝来し、それぞれの土地に合わせて進化、あるいは品種改良されることで、発祥した野菜といえる。

以前に、本連載でご紹介した奈良発祥の大和スイカを例にすると、スイカは、原産地であるアフリカから中国を経て、1640年頃に日本へ伝来したと考えられている。その後、奈良で栽培が続けられる中で、大和スイカが育種された。つまり、スイカの原産地はアフリカであり、大和スイカの発祥は奈良ということになる。

「先人が育み継承してきた品種は地域資源であり、また、その土地固有の食文化や栽培方法が詰まっているかけがいのない文化遺産でもあります。地域創生において、大きなカギとなるのが、地域資源の有効活用です。その中で、伝統野菜は欠かせない存在になることでしょう。その活用方法となる次のステップを、このフォーラムを通じて、多くの皆さんと考えていきたい」と三浦さんは言う。

企画協力=三浦雅之 文=大掛達也 写真=原田教正

2018年11月号 特集「ミュージアムに行こう!」

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