福井県鯖江の眼鏡が世界から選ばれるワケ
機能性を追求した眼鏡からファッショナブルな一本まで、国産眼鏡のほとんどが福井県福井・鯖江地域から生まれています。なぜここは、ニッポンイチの眼鏡産地なのか? その理由に迫ります。
眼鏡フレームのシェアは90%以上!
福井県の日本製眼鏡フレームのシェアは90%以上。その中心を担う福井市・鯖江市は、日本では右に出るものがない眼鏡の名産地です。
寒冷地であるこのあたりは、冬になると雪に閉ざされてしまいます。「厳しい農村の生活をよくしたい」と考えた増永五左衛門(ござえもん)が、農閑期の副業として眼鏡づくりに目をつけ、大阪から職人を招き、地域に広めたことから、眼鏡づくりの歴史ははじまります。帳場とよばれる職人グループ同士が競う中で技術が磨かれ、次第に工程ごとに専門の工場や職人が分業する一大産地が形成されていきました。
欧米諸国が眼鏡づくりをリードする中、産地では技術開発が熱心に続けられました。日本人の骨格を考えたノーズパッドや、さびに強い合金めっきが生まれ、1981年には軽量で金属アレルギーが起きにくい、チタン製眼鏡の開発に世界ではじめて成功。非常に難しいとされたチタンの加工を成し遂げた福井・鯖江は、世界的な眼鏡産地となっていくのです。
細やかで勤勉な県民性が技術を生んだ!
福井県眼鏡協会の会長・竹内良造さんは語ります。
「とにかく研究熱心で改善改良でほかを超えるものをつくっていく。それが日本のものづくりのすごさ。厳しい自然環境の中で農業をしてきたまじめで忍耐強い県民性は、緻密さが求められる眼鏡づくりに合っていたのだと思います」
産地の力を合わせ、新たな挑戦を
2003年には高品質な福井産であることを示す産地統一ブランド「THE291」が誕生。2000年頃からは若手ブランドも台頭し、眼鏡界のアカデミー賞といわれるシルモドールを獲るものも出てきました。そんな革新的なデザインを実現するのは、世界最高峰と評される福井の加工技術。“産地の力”を集結させ、眼鏡の新たな時代が創られようとしています。
(text: Natsuko Kato photo:Yuichi Noguchi)