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「村のホテル 住吉屋」野沢温泉の熱めの湯に浸かり、信州の郷土料理を愉しむ温泉宿

2019.10.24
「村のホテル 住吉屋」野沢温泉の熱めの湯に浸かり、信州の郷土料理を愉しむ温泉宿
美しく光が差し込む大浴場はふたつ。男女入れ替え制で、ひとつには露天も。45℃と熱い湯のため、湯かき棒を用意

人々の暮らしに温泉が寄り添う野沢温泉。村の中心にある「麻釜」の横にあり、明治2年に創業したのが「村のホテル 住吉屋」だ。優しく凛としたこの宿で、郷土料理を味わい、掛け流しの湯に浸かれば、心身ともにリフレッシュできる。

明治・大正のレトロな風情を残す宿。周囲も古きよき日本の温泉街の風情が残る

一風変わった宿の名である。「村」と「ホテル」がミスマッチのようであり、しかし存外合っているような気もする。そんなきっかけから「村のホテル 住吉屋」をはじめて訪ねてから、はて何年経つだろうか。

先々代、先代と代替わりを重ねても、そのスタイルを崩すことなく、素朴な中にも洗練のしつらえを加味し、何より居心地のよさを持ち味としてきた接客の見事さは揺らぐことがない。

広さも趣もそれぞれ異なる客室は14室。麻釜が見える方向に窓がある「湯の香」

村のホテル 住吉屋は野沢温泉にあって、天然記念物に指定されている「麻釜」の真ん前に建っている。野沢温泉といって真っ先に思い浮かぶのは「永楽屋」という宿で、とうにその姿を消したが、伝説ともなった幻の宿。村のホテル 住吉屋はその縁戚にあたると聞いて、なるほどと納得した。空気がよく似ているのだ。

いまでこそコンシェルジュという言葉は一般的だが、20年以上も前にそれを実践していたのが永楽屋であり、村のホテル 住吉屋にも同じ心意気が見てとれる。言葉にするなら“顧客第一”となるのだろうか。客のリクエストに最大限こたえる。しかしながら“媚”は一切感じられず、凛とした姿勢はすがすがしくも、心に染み入るものだ。

館に新しく出来た「白露」。ベッド派におすすめ

さて、この宿。創業は明治2年というから、立派な老舗だ。明治、大正、昭和、そして平成と、客の求めに応じて、きめ細かなもてなしを続けてきた。

野沢温泉で愉しむべき第一は、湯である。“麻釜熱湯噴湯”が象徴するように、とにかく、滔々と湧き出る湯を身にまとうことが、最大の魅力であり、湯なくして野沢温泉は愉しめないのである。そしてそれは、宿の内湯だけでなく、外湯めぐりも加えてのことと心得たい。本来、温泉宿に泊まるということは、その地の外湯と宿の内湯の両方を併せ愉しむことを本意としている。

湯に加えて、この宿で愉しむべきもの、ふたつ目は食である。地産地消、土地に根づいた料理を、といいながら、京風懐石もどきが全盛の旅館料理にあって、野沢温泉に、古くから伝わる郷土料理を昔ながらのスタイルで供するのも、村のホテル 住吉屋の魅力である。

名物「取り回し鉢」。大鉢に盛られた料理を各自で取り分ける祝膳料理

とりわけ愉しいのが“取り回し鉢”。この地に伝わる郷土料理を、大鉢に盛り、それを取り回して味わう。まさに“村”の習わし。いまどきの高級旅館では決して味わえない趣向である。

宿は一代にしてならず。代々の当主が心を砕き、工夫を凝らしてきた結果が、いまに実を結びつつある。この宿はあれこれ語るより、泊まってみれば一目瞭然。真のもてなしは言葉ではない。

村のホテル 住吉屋
住所:長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8713
Tel:0269-85-2005
Fax:0269-85-2501
E-mail:inquiry@sumiyosiya.co.jp
客室数:14室
料金:1泊2食付1万6500円〜(税・サ別)
カード:DC、MASTER、VISA
IN:12:00 OUT:11:00
夕食:会席料理と郷土料理(食事処) 朝食:和食(食事処)
温泉:野沢温泉 釜辺の湯(ナトリウム-カルシウム硫酸塩泉/源泉掛け流し/加温なし/加水なし/糖尿病、アトピーなど)
風呂:大浴場男女別各1(14:00〜翌10:00)、露天風呂、部屋風呂2※すべて温泉
アクセス:車/上信越自動車道豊田飯山ICから約25分 電車/JR飯山駅からバスで約25分、野沢温泉バス停下車、徒歩5分
館内施設:ラウンジ、ライブラリー、食事処
Wi-Fi:あり

文=柏井 壽 写真=山平敦史
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