福岡・柳川市《柳川藩主立花邸 御花》
400年の歴史・文化を紡ぐ、料亭旅館の挑戦
|九州観光まちづくりAWARD2025 金賞 宿(おもてなし)部門
今年で4回目の開催となった、JR九州が手掛ける「九州観光まちづくりAWARD」が2025年も始動。宿・食・ものづくり・にぎわいづくりなど、旅心をくすぐる、魅力的な取り組みとの出会い。今回、九州観光まちづくりAWARD2025 金賞 宿(おもてなし)部門を受賞したのは、福岡・柳川市にある料亭旅館「柳川藩主立花邸 御花」。藩主の末裔がいまもなお営む「御花」が、次の100年に向けて大きくかじを切った。歴史を守りながら、御花の真価を掘り起こし、リニューアルした客室では、文化財に泊まるという体験も。
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次の100年に受け継ぎたい
唯一無二の文化財に泊まる

福岡の水郷・柳川。水路を舟が行き交うこの地で、江戸時代に柳川藩主・立花家の邸宅としてはじまり、現在はその末裔が料亭旅館として守り続ける「御花」がある。7000坪の全敷地が国の名勝という、唯一無二の文化財だ。
そんな歴史ある御花が、2025年1月、築40年の宿泊棟やロビーを全面リニューアル。指揮を執るのは、18代の立花千月香さん。父から代を継いで10年、三姉妹の次女だ。

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日帰り観光地から、
文化に触れる旅の目的地へ

かつての御花は、川下りを体験したり、鰻のせいろ蒸しを食べに行ったりする場所という日帰り利用が中心だった。「御花の文化財としての本質的な価値が伝わらず危機感がありました」と立花さん。来訪者の減少などを機に、御花は「文化観光」へかじを切る。
改革のきっかけはスタッフ発案の「お舟で朝食プラン」。SNSで広がり、宿泊客が増加。そして、滞在時間の長い宿泊こそ御花の真の魅力を伝える要だと、リニューアルに踏み切った。

「客室からどう文化財を楽しんでいただくかを考えました」と立花さん。贅沢な文化財ビューを楽しめる「特別室 黒松」などの客室も新設。さらにスタッフ全員で研修を重ねて、一人ひとりが御花の語り手に成長。100年先の未来に、この文化財を「永遠のこころのよりどころ」としてつないでいきたいと思いをひとつにする。
ホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんは、「御花は、九州の宝。空間づくりが素晴らしい。クラシックな和風建築の中に、あんなにモダンなロビーがあるなんて! さらに国内外から注目される宿になるはずです」とたたえた。
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文化財を生かした
観光コンテンツの唯一性

西洋館、御居間などの建築物も文化財に指定されている。ビジターも見学可能だ。また、大広間での能舞台も復活。屋敷内の能舞台のため、お客との距離が近く、すぐそばで舞を見ることができる。

水郷・柳川の
自然資本を愉しむ

「お舟で朝食プラン」では、朝の清らかな雰囲気でお殿さま気分を楽しめる。夏は花火、秋は月見、冬は団子などのプランを企画。時間や季節を変えることで、年に3度4度と乗船する人も増えた。
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神谷禎恵
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柳川藩主立花邸 御花
住所|福岡県柳川市新外町1
Tel|0120-336-092
料金|1泊2食付3万9500円~(税・サ込)
客室数|20室
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、VISAほか
IN|15:00
OUT|11:00
施設|日本庭園、立花家史料館、食事処、ショップなど
https://ohana.co.jp
1|JR九州による「九州観光まちづくりAWARD2025」、結果発表!
2|福岡・糸島市「前田和子・大串幸男(白糸の森)」
3|福岡・柳川市「柳川藩主立花邸 御花」
4|大分・宇佐市「神谷禎恵」
5|熊本・南関町「ヤマチク」
6|長崎・諫早市「陣野真理」
7|特別賞–NEXT CREATE–を受賞した皆さま①
8|特別賞–NEXT CREATE–を受賞した皆さま②
9|「九州観光まちづくりAWARD2025」を振り返ろう
text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Otsuka
2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」



































