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九州観光まちづくりAWARD2025 特別賞–NEXT CREATE–を受賞した皆さま①

2025.9.30
九州観光まちづくりAWARD2025 特別賞–NEXT CREATE–を受賞した皆さま①

今年で4回目の開催となった、JR九州が手掛ける「九州観光まちづくりAWARD」が2025年も始動。宿・食・ものづくり・にぎわいづくりなど、旅心をくすぐる、魅力的な取り組みとの出会い。今回は、九州観光まちづくりAWARD2025 特別賞–NEXT CREATE–を受賞した5組をご紹介!

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熊本・人吉球磨《球磨焼酎蔵 ツーリズム協議会》
文化復興を超え、 進化を続ける焼酎蔵の結束

球磨焼酎蔵ツーリズム協議会の皆さん。「繊月酒造」の堤純子さん(左)、大和一酒造元の下田文仁さん(中央)、「鳥越商店」の鳥越英夫さん(右)

熊本県の南部にある人吉球磨エリア。県内有数の米処で造る極上の米焼酎「球磨焼酎」は、500年の歴史をもつ名産品だ。2020年3月、蔵元・酒販店・宿・鉄道会社が、焼酎を軸に地域の活性化を目指し「球磨焼酎蔵ツーリズム協議会」を発足。しかし、同年7月に球磨川の氾濫を伴う記録的な豪雨で、地域は甚大な被害に遭う。それでも協議会は、各蔵元の個性と防災を学ぶ有料体験プランの開発、被災蔵応援「Reborn」ラベル焼酎の販売や寄付、人吉駅のホームで球磨焼酎を楽しむ“ホームパーティ”の開催など精力的に活動。

大和一酒造元のガイドツアーでは、浸水しても浮くように新たな工夫が施された貯蔵甕の見学ができる

そして蔵元も焼酎造りで地域を盛り上げる。今回のプレゼンテーションの場でもあった「大和一酒造元」は、球磨川の氾濫で新たに蔵に運ばれてきた酵母があるのではと考え、2022年に新作米焼酎「球磨川」を完成させ、海外からの注目を集める。歩みを続ける人吉球磨の姿に審査員一同、心からの敬意と拍手を送った。

ガイドツアーで焼酎を混ぜる体験も

球磨焼酎蔵ツーリズム協議会
住所|熊本県人吉市新町15 合資会社鳥越商店一期屋内
Tel|0966-22-2374
蔵見学|要事前問い合わせ
https://kumashouchu-tourism.com

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佐賀・佐賀市《名尾手すき和紙》
循環から生まれる、 伝統工芸の可能性

工房に併設された直営店、KAGOYA。100種類以上の和紙や実験的につくったプロダクトを展示販売する。工房は予約不要で見学可能、要予約の紙すき体験もある

佐賀県佐賀市の田園風景が広がる名尾地区で、330年続く伝統工芸の名尾和紙。昭和初期は100軒あった工房も、いまは「名尾手すき和紙」の一軒のみ。名尾の和紙は、よく使われるコウゾではなく、昔から自生していた「梶」を使用し、光を通すほど薄くて丈夫なのが特徴だ。また木の栽培、紙すき、販売まで一貫して自社で手掛けるのが強み。さらに紙すきの道具をつくる職人の育成まで行うなど、伝統を未来につなぐ取り組みにも挑戦する。つくられた和紙は、文化財の修復、神具、インテリアなど多方面で活用される。

大釜で煮た原料を地下水と天日に晒す様子

7代目の谷口弦さんは職人であり作家。伝統を守りつつ自由な発想で作品を生み出し、気鋭のアーティストやハイブランドとのコラボにも注目が集まる。2021年に豪雨で被災したが、2024年に新ショップ「KAGOYA」が誕生。梶の葉茶を提供したり、紙をすく音を収音した音楽作品が流れるなど、五感で和紙を感じられる場所として、和紙の新たな可能性を発信する。「和紙は扇子にも障子にもかたちを変える無形の工芸品。自分たちもそうありたいですね」と谷口さん。自然と人とが共生する、豊かな循環がここにある。

箱に入ってみよう、という構想でつくられた静謐な雰囲気の瞑想室

名尾手すき和紙
住所|佐賀県佐賀市大和町大字名尾4674-1
Tel|0952-63-0334
営業時間|9:00〜17:00(工房見学も可)
定休日|土・日曜、祝日(直営店KAGOYAは定休日なし。ただし正月、盆期間は除く)
https://naowashi.com

大分・別府市《冨士屋ホテル(一也百 Hall&Gallery)》
鉄輪の湯治文化を伝える 宿のリ・スタート

屋根瓦や庭園を見渡すアルチザンスイート。別府湾ビューを楽しめる客室も

湯治文化が残る大分県別府市の鉄輪。曽祖父が明治期に建てた「旧冨士屋旅館」を活用し、「一也百 Hall&Gallery」を運営してきた安波治子さんは、蒸気の力でジャムや味噌を開発するなど、温泉と食の新たな関係を発信してきた。2018年からは、“地獄(温泉)の恵みをシェアしよう”と温泉・食・文化を楽しむ「かんなわ蒸し通(つう)りずむ」を毎年6月に開催。閑散期に人を呼び込み、地域の連携を深め、新しい挑戦を後押しするなど、鉄輪を盛り上げるプラットフォームづくりに力を注いできた。

温泉の蒸気で食材を蒸す地獄蒸しを自分でつくれる

その中で、湯治文化こそ鉄輪の原点であると宿の再開を決意。2025年7月、「冨士屋ホテル」が開業した。1899(明治32)年築の登録文化財を、さらに100年残せるようにと再生工事を施し、隣接する宿泊棟は、国産の間伐材を使うCLT工法で新築した。新たな湯治文化を伝える、趣のあるモダンな宿の誕生に大きな期待が寄せられる。

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ルーフトップ「ふじや THE ROOF」からの眺望は見事。湯けむり、別府湾、高崎山などを見渡せる。温浴効果のある芝生に寝転んで、酒をいただくと天国気分!

冨士屋ホテル(一也百 Hall&Gallery)
住所|大分県別府市鉄輪上1組
Tel|0977-66-3251
料金|1泊朝食付2万6100円~(税・サ込)
客室数|17室
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、VISAほか
IN|15:00
OUT|11:00
施設|ギャラリー・ホール、セレクトショップ、カフェなど
https://kannawa-fujiya.com

 

特別賞–NEXT CREATE–を
受賞した皆さま②

 
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text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Otsuka
2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」

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