九州観光まちづくりAWARD2025 特別賞–NEXT CREATE–を受賞した皆さま①
今年で4回目の開催となった、JR九州が手掛ける「九州観光まちづくりAWARD」が2025年も始動。宿・食・ものづくり・にぎわいづくりなど、旅心をくすぐる、魅力的な取り組みとの出会い。今回は、九州観光まちづくりAWARD2025 特別賞–NEXT CREATE–を受賞した5組をご紹介!
line
熊本・人吉球磨《球磨焼酎蔵 ツーリズム協議会》
文化復興を超え、 進化を続ける焼酎蔵の結束

熊本県の南部にある人吉球磨エリア。県内有数の米処で造る極上の米焼酎「球磨焼酎」は、500年の歴史をもつ名産品だ。2020年3月、蔵元・酒販店・宿・鉄道会社が、焼酎を軸に地域の活性化を目指し「球磨焼酎蔵ツーリズム協議会」を発足。しかし、同年7月に球磨川の氾濫を伴う記録的な豪雨で、地域は甚大な被害に遭う。それでも協議会は、各蔵元の個性と防災を学ぶ有料体験プランの開発、被災蔵応援「Reborn」ラベル焼酎の販売や寄付、人吉駅のホームで球磨焼酎を楽しむ“ホームパーティ”の開催など精力的に活動。

そして蔵元も焼酎造りで地域を盛り上げる。今回のプレゼンテーションの場でもあった「大和一酒造元」は、球磨川の氾濫で新たに蔵に運ばれてきた酵母があるのではと考え、2022年に新作米焼酎「球磨川」を完成させ、海外からの注目を集める。歩みを続ける人吉球磨の姿に審査員一同、心からの敬意と拍手を送った。

球磨焼酎蔵ツーリズム協議会
住所|熊本県人吉市新町15 合資会社鳥越商店一期屋内
Tel|0966-22-2374
蔵見学|要事前問い合わせ
https://kumashouchu-tourism.com
line
佐賀・佐賀市《名尾手すき和紙》
循環から生まれる、 伝統工芸の可能性

佐賀県佐賀市の田園風景が広がる名尾地区で、330年続く伝統工芸の名尾和紙。昭和初期は100軒あった工房も、いまは「名尾手すき和紙」の一軒のみ。名尾の和紙は、よく使われるコウゾではなく、昔から自生していた「梶」を使用し、光を通すほど薄くて丈夫なのが特徴だ。また木の栽培、紙すき、販売まで一貫して自社で手掛けるのが強み。さらに紙すきの道具をつくる職人の育成まで行うなど、伝統を未来につなぐ取り組みにも挑戦する。つくられた和紙は、文化財の修復、神具、インテリアなど多方面で活用される。

7代目の谷口弦さんは職人であり作家。伝統を守りつつ自由な発想で作品を生み出し、気鋭のアーティストやハイブランドとのコラボにも注目が集まる。2021年に豪雨で被災したが、2024年に新ショップ「KAGOYA」が誕生。梶の葉茶を提供したり、紙をすく音を収音した音楽作品が流れるなど、五感で和紙を感じられる場所として、和紙の新たな可能性を発信する。「和紙は扇子にも障子にもかたちを変える無形の工芸品。自分たちもそうありたいですね」と谷口さん。自然と人とが共生する、豊かな循環がここにある。

名尾手すき和紙
住所|佐賀県佐賀市大和町大字名尾4674-1
Tel|0952-63-0334
営業時間|9:00〜17:00(工房見学も可)
定休日|土・日曜、祝日(直営店KAGOYAは定休日なし。ただし正月、盆期間は除く)
https://naowashi.com
大分・別府市《冨士屋ホテル(一也百 Hall&Gallery)》
鉄輪の湯治文化を伝える 宿のリ・スタート

湯治文化が残る大分県別府市の鉄輪。曽祖父が明治期に建てた「旧冨士屋旅館」を活用し、「一也百 Hall&Gallery」を運営してきた安波治子さんは、蒸気の力でジャムや味噌を開発するなど、温泉と食の新たな関係を発信してきた。2018年からは、“地獄(温泉)の恵みをシェアしよう”と温泉・食・文化を楽しむ「かんなわ蒸し通(つう)りずむ」を毎年6月に開催。閑散期に人を呼び込み、地域の連携を深め、新しい挑戦を後押しするなど、鉄輪を盛り上げるプラットフォームづくりに力を注いできた。

その中で、湯治文化こそ鉄輪の原点であると宿の再開を決意。2025年7月、「冨士屋ホテル」が開業した。1899(明治32)年築の登録文化財を、さらに100年残せるようにと再生工事を施し、隣接する宿泊棟は、国産の間伐材を使うCLT工法で新築した。新たな湯治文化を伝える、趣のあるモダンな宿の誕生に大きな期待が寄せられる。
line

冨士屋ホテル(一也百 Hall&Gallery)
住所|大分県別府市鉄輪上1組
Tel|0977-66-3251
料金|1泊朝食付2万6100円~(税・サ込)
客室数|17室
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、VISAほか
IN|15:00
OUT|11:00
施設|ギャラリー・ホール、セレクトショップ、カフェなど
https://kannawa-fujiya.com
受賞した皆さま②
≫次の記事を読む
1|JR九州による「九州観光まちづくりAWARD2025」、結果発表!
2|福岡・糸島市「前田和子・大串幸男(白糸の森)」
3|福岡・柳川市「柳川藩主立花邸 御花」
4|大分・宇佐市「神谷禎恵」
5|熊本・南関町「ヤマチク」
6|長崎・諫早市「陣野真理」
7|特別賞–NEXT CREATE–を受賞した皆さま①
8|特別賞–NEXT CREATE–を受賞した皆さま②
9|「九州観光まちづくりAWARD2025」を振り返ろう
text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Otsuka
2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」































