《連載第4回》「SIIDA®」×日本の出汁文化
出汁とうつわの美味しい関係
鰹節の燻し分けにより、異なる3種類の出汁パックをセットにした「SIIDA®」(シーダ)。そのSIIDA®の出汁を愉しむためのうつわを陶芸家・アセビマコトさんがつくるというプロジェクトが進行中だ。出汁が3種類あるので、丼、お猪口それぞれ3つのフォルムで、各4色展開。いままさにオリジナルのうつわが完成を迎えようとしているアセビさんの工房を訪ねた。

アセビマコト
1964年、北海道生まれ。多摩美術大学を卒業後、1994年にうつわの制作を開始。1997年、横浜市に築窯。2001年より鎌倉で、妻のキクタヒロコさんと制作を続ける。白マット、草色、サビ黒など料理が映える色使いも魅力。
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神奈川・鎌倉の工房を訪ねて
鎌倉の由緒ある土地に、いかにも猫が好みそうな細い路地がある。アセビさんの工房は、その路地の奥。築70年ほどの一軒家は昭和の面影を残し、玄関先にはアセビの木が植えられている。庭に面した部屋の一角がろくろ場で、同じく陶芸家の妻・キクタヒロコさんと制作をともにする。窯は庭の倉庫を改装したスペースに置かれている。暮らしのすぐ隣に仕事場があるといった印象だ。

「気を抜くと、つい癖でうつわが薄くなってしまうので、ろくろ作業は思い通りのかたちになるよう、かなり集中しています」。
アセビさんのうつわは、日常使いにちょうどいい厚みがあり、おおらかで安心感がありながら、どこかモダンな線を感じる。それは、日本の伝統的なうつわやオランダ・デルフトの庶民の皿など、古くからある造形にアセビさんが新たな解釈を加え、現代に合うかたちを追求しているからだろうか。
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出汁の美味しさを引き立てる、
うつわの秘密

SIIDA®とのうつわは、ろくろを挽いて成形し、素焼きし、釉薬をかけて本焼きするという手作業で生まれるもの。だから一つひとつに表情がある。

3タイプの丼のうち最初につくったのは、ふっくらと丸みのある閉じたフォルム。アセビさんが家で実際に使っている丼をひと周り大きくしたもので、ベースのかたちは僧侶が托鉢で使う鉢だそう。両手で包むとなんとも収まりがいい。

SIIDA®の出汁パックが3種類あることから、うつわも3タイプつくってはどうか、と提案したのはアセビさんだ。
「丼らしくないものがあってもおもしろいかなと思って。食卓に置いたときに、料理を見せられる感じの丼をつくってみたかったんです」
口を直線的に広げたシャープな印象の丼、側面の丸みを持たせつつ縁を開いたものなどが生まれた。

それらがどんなかたちだと出汁の料理を盛りやすいのか、美味しく食べられるのかをプロの料理人に聞いてみようと、アセビさんとSIIDA®開発チームの村瀬健哉さんが、試作品を東京・学芸大学の料理店に持ち込んだことがある。そこで麺を入れたり煮物を盛ったり、お猪口に日本酒を注いだりして感触を確かめ、細かな調整をして3タイプのうつわが完成した。



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SIIDA®を愉しむうつわ、
まもなくお披露目です!

SIIDA®とアセビマコトさんのコラボレーションによる「出汁を愉しむうつわ」は、丼とお猪口がそれぞれ3タイプ、各4色ずつで展開することになった。
同じかたちの丼でも、色が違うと印象がだいぶ変わる。
「白は、出汁がすごくきれいに見えて、一方、黒はうどんの白が映えます。草色や黄瀬戸に盛ると温かみが増して、これもいいなぁと」と村瀬さん。

お猪口は酒を愉しむのはもちろん、日本酒と出汁を2対1の割合で合わせた「出汁割り酒」もおすすめ。スモーキーな薫香の「燻(KUN)」、焚き火のように力強い風味の「焚(HUN)」が合う。
これらは2025年11月1日〜7日の日程で開催される渋谷PARCO Discover Japan Lab.にて一般販売されるので、お楽しみに。
次回はついにSIIDA®×アセビマコトさんの作品をお披露目。コラボレーションが実現したいきさつや、両者によってかなう出汁の新体験についてお届けします。
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01|第1回 鰹出汁の美味しさの秘密
02|第2回 荒節をつくる職人の技【前編】
03|第2回 荒節をつくる職人の技【後編】
04|第3回 3種の出汁の味わい方(レシピ)
05|第4回 出汁とうつわの美味しい関係
06|第5回 アセビマコトのうつわがかなえる“出汁の新体験”
text: Yukie Masumoto



































